Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

紛争頻発の序章

韓国との間の緊張関係がどんどんと高まりつつあるが、世界経済が縮小に向かおうとしている現在の環境は、日韓以外にもこうした紛争が頻発しても全く驚くことではない。日本人や日本のマスコミの目は日本を中心にしか見ていないが、世界を見渡してもこの種の対立はあらゆるところで発生しているし、今後もおそらく増加するであろう。特に、アメリカの穀物の大打撃を受けて来年の食糧事情は予断を許さない。量的には人類の需要を賄えてもコスト的に賄えない可能性が高いのだ。アラブの春の遠因としてロシアにおける小麦の不作が理由として挙げられるが、エネルギーと食糧、そして水は人々の生活に直接影響を与えるために、不満が高まりやすくそれを解消するための紛争が生じる。時によれば政権打倒に繋がり、また場合においては周辺国との紛争が激化する。

それらの状況ををわかりやすく示すような記事が出ている。日本は円高の恩恵を受けていてわかりにくいのだが、世界的に通貨安になっている国(意図的なものも含めて)は国民の生活が逼迫しつつある。
韓国大統領、穀物価格安定に向けG20加盟国に早急な対応呼び掛け(ロイター:http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE87M04V20120823
今回の日韓のいざこざは元を正せば大統領のレームダック化に対するパフォーマンスではあるが、その背景には韓国内の複雑な国内情勢があるのは間違いない。国民の失望だけでなく生活に対する不満が政権に集まるのを必至に日本へと転嫁しているのである。別に韓国政府の肩を持つつもりはないし、不満のはけ口に現状日本が選択されているなど全くもって迷惑きわまりないのだが、なぜそんな状況にあるのかは冷静に理解しておく必要があるだろう。この仕組みは基本的に中国も同じであって、反日には政府への不満を逸らす意味が込められている故にこうした行為は決して無くなる(むしろ無くされる)ことはない。

世界経済が成長過程にあった時には、WIN-WINなどと言う言葉がよく用いられていたように紛争というものは基本的に生じないし、仮にあっても単発的に終わる軽微なものであった。これは一般の社会生活であっても生じる程度の普通のことであり、会社が利益を上げている時には車内紛争は目立つことはないし、プロ野球チームでも成績がよい時にはチームがまとまるものである。
そう考えてみると、わざわざ紛争を仕掛けなければならない韓国は実態として国内にどれくらい不満が溜まっているのか推して然るべきであろう。要するに日本がこうした韓国からの難癖に巻き込まれない方法は、韓国が国家として一定以上の成長を続けることしかないのだ。
これまでの対韓政策が甘かったというのは確かに事実ではあるが、韓国経済が成長過程にある間は事を荒立てなくてもいざこざは小さなもので済んでいたというのがある。現在の情勢とは間違いなく異なるので、一概にその時に取っていた手法が間違いであったと言えるものでは無い。

もっとも、現状において日本から見れば反日に精を出しているように見える韓国ではあるが同時に根強い反米活動も続けており、結果的に中国の勢力に取り込まれているように日本からは感じられる。実際、経済的には韓国の最大の貿易先は中国(http://japanese.joins.com/upload/images/2012/08/20120823104751-1.jpg)でありその影響から逃れることはできない状況にあるのも確かに事実である。
こうした状況をもって一部マスコミなどは韓国と中国の親密度が高まっているとし、現状の日韓の意地の張り合い(主に韓国側の方が酷いが)を批判しているがこれも現状を的確に捉えているとは思えない。韓国が対日批判を強めているのは、単に日本向けが最も容易に行えて反撃を受けにくいからである。例えば日本がこれまでとは態度を変えて強硬論を採ることで膠着状態に陥ったとすれば、国内の不満は容易にアメリカにも中国にも向かいうると考えるべきであろう。

日韓の対立は、決して二国間の極端な特殊事情のみによるものでは無い。もちろん歴史的背景や国民感情がそこに含まれているのは事実ではあるが、それらは事態の悪化を促進はしても紛争そのものを生み出す土壌にはならない。日本政府や日本国民は、現状の日韓や日中における紛争が単発的な特殊事情によるものではなく、今後世界経済の低迷により引き起こされるであろう数多くの紛争の一つであると考えて対処が必要である。
そう考えるならば、良く言われる特殊事情に鑑みた寛大な対処を取ると言うのは上策とは言えないが、同時に世界経済を冷え込ませる方向に向かうような措置も同じように上策ではない。もっとも、韓国側の現状の対応こそが世界経済を冷え込ませかねない下策であるのは間違いない。
なお、テクニカルな話をするならば相手の譲歩を迫る場合(すなわち脅しをかける時)にはまず過剰な態度や言葉を発して、徐々に譲歩を見せる動きを行う。今回の韓国の行動がまさにそれに当たるし、同じような手法は橋下大阪市長も用いている。方法論としてはおかしくないが、今回の韓国のやり方は日本に甘えすぎで正直言って覚悟が足りないと思う。一方の日本側は、おそらく徐々に少しずつ対応策を採って行くであろうが、これは脅しではなく実質的な効果を狙ったものだ。要するに、自分の都合で脅しをかけた韓国に対して真面目に日本が対抗措置を採り始めたというのが実情であろう。ちなみに、現状の日本政府が対応に言明しているのはスワップ凍結と韓国国債購入の凍結であるが、これは実質的に韓国に対する優遇措置の停止に過ぎず経済制裁ではない。
概観すれば、脅し故にこれ以上問題を広げる意思は元々なかった韓国ではあるが、脅した手前後に引けなくなっているというのが現状だと思う。脅し故に強烈な手を先に打ったことで今後の手詰まり感がある韓国に対して、日本側はいくらでもカードを保有している。今後は、建て前は崩さない範囲でアメリカや中国を巻き込んで日本の譲歩を迫る対応をして来るであろう。日本側とすれば、韓国側の非常識を世界に宣伝すると共に、受けた屈辱に見合うペナルティを粛々と韓国に与えればよい。過剰に反応してもいけないが、下手な温情や融和策を与えるのはもっと悪い。