Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国と変わらない

尖閣諸島に視察に行った複数人の議員等が、船から泳いで尖閣に上陸したというニュースが流れていた(http://www.asahi.com/politics/update/0819/TKY201208190072.html)。聞いてまず思ったのは「バカなことをしている」だった。そこには韓国がやっているのと変わらない、つまらないパフォーマンスだという感情しか抱けない。
韓国が実効支配している竹島を紛れもない韓国の領土だとしながら、それでも世界中のあらゆる場所でアピールしているのはその主張を世界に広げることが目的ではなく、自国内に向かって自分が如何に愛国的であるかを表現するためのパフォーマンスに過ぎない。
竹島の場合には、国際法的にも日本の領土であるものを韓国が戦後のどさくさに紛れて強奪したものであるが、尖閣諸島の場合には領土紛争すらない紛れもない日本の法が及んでいる範囲である。もちろん、領土的野心によりちょっかいを出してくる中国や台湾の一部の勢力を撃退することは重要だが、それは粛々とそのための方策を採っていけば良いだけであり、現時点において日本側から一部の人間がパフォーマンスとして上陸する必要などほとんどない。

数年前までならば、当時日本国内で忘れ去られている領土問題を再度喚起させるという意味において一定の宣伝効果はあったかも知れないが、海上保安庁巡視船への体当たり事件以降日本でもそれを知らない人はかなり少ないであろう。だとすれば、国内向けのパフォーマンスを行う価値はほとんどない。要するに売名行為としての意味しか持てない行為だということだ。
中国の侵略的行為に対して、国内世論を沸騰させたいとでも思っているのかも知れないが、国内世論が下手に沸騰してもプラスよりはマイナスの効果が高まるだろう。こうしたやりとりは冷静さを欠いた方が負けるものである。
もちろんこれまでの領土領海の防御態勢が不十分であったことは事実であるが、現状の流れを理解しているならば日本人の意識の中にそれは既に刻み込まれた。あとは、粛々とそのための手段を講じればよいし、その中に少数の議員が上陸するなどと言う手段は含まれない。
尖閣防衛の仕組みが不足しているのであれば、国会や言論の場を通じて実効ある方法を主張するのが議員の果たすべき役割である。

尖閣に行くくらいなら、竹島北方領土に行くべきだという意見もあるようだが、それについても命を賭けているというパフォーマンス(プラスアルファ)程度の宣伝効果しか無く、あまり意味があるとは思えない。領土を守ることは確かに非常に重要ではあるが、現実的なステップを考えれば実効支配されている地域を取り戻すことが容易に成し遂げられるとはとても思わないし、おそらくは相手国(韓国やロシア)の政情不安や経済的困窮でもなければ平和的に取り戻すことは容易ではないと思う。
加えて、日本が経済的あるいは資源的にそれらの領土を取り戻さなければ立ち行かないという訳でもない(もちろん、過去にそこで漁を行ってきた方々に苦痛があるのは事実であるが)。だからこそ、政府も強引な態度を取ることなくこれまで現状維持に努めてきたわけでもある。
ただ、相手方からその状況を動かそうと仕掛けてきた場合には当然相応の対処は必要だし、相手方が譲歩するようなケースでは機を逃してはなるまい。だからこそ自国の領土であるという主張は続けなければならないし、相応の交渉は続けなければならない。
だが、それは紛争を拡大してまで為すべきものなのかについては冷静に考えるべきだと思う。

今回、韓国は度を過ぎた行為に出たからそれに対する相応の措置を講じればよい。中国の野心的動きも激しくなっているので適切な防御を行えばよい。ただ、意味のほとんど無い売名的行為を賞賛するようでは、当人や一部の人の感情をくすぐるかも知れないが日本トータルとしては大きなメリットはない。国として大してメリット無い(あるいは却って状況を悪化させる)行為を国を挙げて賞賛するとは、、、、まるで韓国と変わらないではないか。
できれば、冷静に判断して貰いたいものだ。