Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

シャープとサムソンとモノカルチャー

シャープの苦境が続いている。2000億円にも及ぶ赤字を出し、株価の大幅な下落を受けて支援の手をさしのべていた香港企業も支援内容の変更に言及し始めているようだ。
ほんの数年前までは、液晶と太陽光パネルの勝ち組としてむしろ優良企業側に立っていたのだから、この急転直下はインパクトが大きい。総じて日本の電機メーカーは円高に加えて韓国や中国に押されて大幅な赤字を計上しているが、ソニーパナソニックはリストラの効果などもあって辛うじて黒字を計上している。ただ、一足飛びにシャープが重大な危機に陥ったのは、特定分野に特化した方向性は勝った時には大きいが負け始めた時に修正が聞かないということである。

同じような話は、アメリカのイーストマンコダック社に見て取れる。かつての写真用フィルムの世界最大企業であった。ところがデジカメの普及に上手く立ち回れずじり貧を続けて、
同じような日本企業としては富士フイルムがあったが、こちらはいち早くデジカメや他分野への転身を図り見事に生き残っている。
業態を変えつつ常に生き残り続けている企業の典型といえば、アメリカのGE(ゼネラルエレクトリック:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BC%E3%83%8D%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF)社であろう。もともとは名前の通り電機メーカーであったが、今の日本企業と同じように他国(このときは日本)企業の攻勢を受け電機メーカーのみでは生き残れないと考えて、複合企業(コングロマリット)として常に企業業態を替えながらも利益を上げ続けている。もっとも気づけば金融会社としての側面が非常に強くなってしまったことがリーマンショック後の苦境を招いているというのも、業態変化の難しさを示しているかもしれない。

かつて、ブラジルなどの国家がコーヒーなど単一作物の輸出により外貨を得ていた状態をモノカルチャーhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%8E%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC)と呼んだが、それはむしろあまり望ましくない産業形態としての呼称であった。農業プランテーションの効率化を最大限図るということであるが、逆に変化に対応する能力は皆無に等しく柔軟性に乏しい=持続能力が低いと言えた。
シャープは完全なモノカルチャーではないものの、やはり強さは一瞬で弱さに変化しうるということを感じさせられるのだ。日立なども一時は経営危機を囁かれたこともあったが、裾野の広さがなんとかカバーしてきたのではないかと思う。
そして、シャープの危機は将来的なサムソンなどの危機とも結びついていると思う。今は日本企業を席巻しているサムソンではあるが、その主な戦略は集中投資に基づく物量作戦である。いろいろな分野に手は出しているものの、結局のところ電機におんぶにだっこであってその牙城が崩れた時にこれまでのメリットはデメリットに変わりかねない。
小さな企業なら一点投資という戦略は十分に考えられるが、企業規模が大きくなればなるほどにそれは魅力的ではあってもそれのみでは企業存続性を低下させると知るべきであろう。

実は、国家としての日本の強さは世界的な強みを持つ特定分野の企業や技術に依るのではなく、世界でも類を見ないような幅広い産業や技術文化などを受け入れ保有し続けている社会の土壌にあるのだと私は思う。経済的な苦境はまだ続くかも知れないが、下手な効率論に押し流されて最大のメリットを失うことがないように希望したい。