Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

言質は詰め将棋

言質とは、相手がそう言わざるを得ない状態に追い込むことであり、同時にその放った言葉を守らざるを得ない状況に至らしめることである。場合によっては、相手にその事実を言わせなくてすら言質らしきものを取ることも出来る。それは、周囲がそう言いかねないと認識したときであって、多くのマスコミの誤報などはこうした構図の上に乗っかっている。
元々口の軽い相手に対して、言葉尻を捉えたとしてもそれは軽く無視されて終わることもある。それ故に相手から意義のある言質を取りたければ、その言葉を無視することが相手にとって不利益にならなければならない。あるいは不利益であることを気づかせなければならない。

これは一種の駆け引きで、ゲームでもある。もちろん仕掛けられる側からすればたまったものではないのだが、割り切って考えれば情報戦なのだ。ちなみに言えば、各国首脳会談なども同じ舞台で行われているのだが、数多くの頭脳が集まった上で分析対応されるが故に、片側が大きな仕掛けをしない限りそれほど極端な結果が得られることはない。もちろん、会談する当人がそのことを自覚しているという前提の上のことであるが。
さて、現実にはそううまくいかないものであるが、言質を取るのは単純にその場の機微で行うものではない。むしろ、事前の十分な情報収集と分析が欠かせない。相手がどう出るかを予想して、言わせたい言葉を如何に吐き出させるかの勝負である。もちろん、自らは相手側が欲する言葉を出さないままに円満さを演出する。すなわち一定の大きなシナリオが存在する。
例えば、自民党の谷垣総裁が民主党野田総理から解散という言質を取れないでいるのは、円満さを演出しながらも相手を乗せるテクニックに欠けていたか、若しくは戦略が不十分なまま協議に入っていたというものであろう。もちろん、相手が野田総理ではなく鳩山元総理などであればもっと早く言質も取れたかも知れない。誰が解散へのシナリオを書いているのかはわからないが、それが不十分なものであるためにいつまでもぐだぐだしていると考えられる。

言質について考えてみれば以下のようなことがわかる。
・言質の効果:相手の信用度に応じて効果が高まる
・言質をかわす:それ故に政治家の言葉はわかりにくい
・言質を与えて良い相手と与えるべきではない相手:基本は信用なのだから信用できない相手には与えられないし、そもそも最初から警戒される
・言質の利用:それは友好関係・信用関係の利用でもあって、何度も使えるものではない
・言質の重み:自らの言葉が軽いものはそれに囚われない

要するに、言質とは信義を如何に大切にしているかが最も大きなウエイトを占める。信義を守るが故に言質は言質たり得るし、信義を利用するが故にその行為は何度も使えない。
逆に言えば、利用できるほどの様々な情報を持ちながらもそれを利用しないことが信頼関係を構築することにもなる。外交でも内政でも、裏切りを続けていれば信頼できるものが誰もいないと言うことになろう。だからこそ、言質を取ってそれを利用するには十分な知性と相手をうならせるほどの戦略が必要なのではないだろうか。