Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

絶滅危惧食材再生国家

 世界では乱獲のために絶滅の危機に瀕しているとされる生物が少なからず存在する。鯨の問題(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8D%95%E9%AF%A8)については感情論や哲学的な視点の違いが対立を引き起こしているようだが、マグロやウナギの場合には確かに必要以上の消費があるだろうし、世界的にもキャビア(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%93%E3%82%A2)のためのチョウザメの乱獲も問題となっている(http://www.47news.jp/CN/200510/CN2005100501000046.html)。あるいは、中国台湾あたりで中華料理におけるフカヒレの材料としてのサメの乱獲も問題となり、規制が導入されている(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1106C_S3A310C1CR0000/)。

 マグロについては、完全養殖に成功した近大マグロ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E5%A4%A7%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%AD)が銀座に出店して話題となった(http://www.yomiuri.co.jp/komachi/komachisan/cafe/20131204-OYT8T00632.htm)が、完全養殖の場合には飼料の管理も可能なため食物連鎖の上位にいるこうした大型魚の場合でも、水銀などの蓄積を最大限抑え安全な食を提供できるという大きなメリットがある。今では自然の魚よりも品質が向上しているという笑えない状況なのだ。
 マグロに限らず、大型魚の完全養殖は高級魚を中心に研究が進められている(クエの完全養殖:http://www.seisaku.nga.gr.jp/kohyo/kohyo_top.php?seq=1111&uri=%2Fsearch%2Fsearch.php%3Fbun%3D05)。ウナギについても、農林水産省系の独立法人水産総合研究センターが2010年に完全養殖に成功(http://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1007/mf_news_03.html)しており、現在は安定して成長させる方法などが続けて研究されている。
 また、チョウザメから採れるキャビアについても宮崎県が完全養殖に成功(http://sankei.jp.msn.com/region/news/131028/myz13102802190000-n1.htm)しており、こちらも品種改良などにより安定供給を目指して研究が進められている。

 仮に完全養殖が成功しても、コスト面で競争力がなければ事業としては成功しない。ただ、中国での豚肉の消費量が経済発展に伴い大きく向上した(http://www.es-inc.jp/library/mailnews/2013/libnews_id003534.html)ように、人口増が高級食材の消費に影響を与えるのではなく社会の経済発展がそれに寄与することになる。世界的には地域紛争は決してなくなりはしないだろうが、経済的な発展はよほどのことがない限り大きく後退することはない。要するに、より良い品質の食料品のニーズは今後もじわじわと高まり続ける。
 ただ、そこには必ず希少性のメリットがなければならない。その希少性は他者の追随を許さないだけの高品質性が重要となる。現状、日本で世界の農作物などもどんどんと高品質なものが作られている。現時点では世界にそれを売りまくるほどの力はないが、希少でかつおいしい食材を大量にかつ安全に提供できるとなれば、日本の農業生産も大きく変わるかもしれない。

 現状は、個別の挑戦に過ぎない完全養殖や多様な食材への取り組みではあるが、世界中の高級料理の食材を高品質なもので提供できるようになれば、日本は一大農業国として生まれ変われるかもしれない。もちろん、そんな上手くいくはずもないが、こうしたカテゴリについては新幹線の運行ダイヤなどと同じように、普段からのきめ細やかな取組姿勢が重要でありこれこそが日本が誇れる違いの部分でもある。
 和食の良さが認められる理由も、こうした姿勢が文化のレベルにまで高められている点が大きいだろうと思う。日本は、工業分野においても世界の先端企業に素材や部品あるいはマザーマシンを提供する素材提供国家になりつつある。もちろん、全ての生産をできる力を維持しつつ素材や部品も生み出せるというのが最大限の強みであるが、食の世界においても同じことができるのではないか。
 イタリアには、数多くの希少食材があると言われている(http://www.itrw.jp/cisono/2013093686.html)。日本は、世界中の食材を高品質に提供できる国家として強くアピールをしてはどうなのだろうか。そのためには、個別の取り組みを政府が応援するという姿勢ではなく、そのような姿に日本の未来を変えていくという明確なリーダーシップが重要となる。

 そして、日本の様々な技術がそこでは集積される。こうした技術を積み重ねていくことは、他分野への応用なども含めて技術の横断的な広がりに対しても貢献してくれるだろう。とりあえずは、日本が絶滅危惧食材再生国家として一つ取り組んでみてはどうだろうか。