Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

逆転したモグラ叩き

 朝日新聞特定秘密保護法案へのバッシングが、いつにも増してすごい(http://www.asahi.com/topics/word/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E7%A7%98%E5%AF%86%E6%B3%95.html)。まあ言論の自由が保証されている日本であって、中国などとは異なりどんな記事を書くのも自由ではあるが、問題はその批判のレベルがあまりに低いのでそれに同意する国民を増やすどころか、かえって朝日新聞の反対なら正しいのではないかという意見が増加することになろうとしている。
 まあ、私が朝日新聞の心配をする仁義も義理も存在などしないのだが、一連の様子があたかも笑えない喜劇のように見えて暗澹たる気持ちになる。以前にも触れているが、私は大前提として秘密保護法案は必要だと考えている。もちろんその運用や仕組みについてはできる限り詰めなければならず、現時点で拙速さを感じる点はあるが日本版NSC(国家安全保障会議)がパッケージになっている都合上の拙速感が否めなくはない。

 しかし、それはこの特定秘密保護法案を廃案にするという問題ではなく、中身を如何に充実させる(恣意的な適用の排除も含めて)かということが重要ではないか。ところが、朝日新聞を始めとする左翼系(今回はリベラルとは呼ばないことになる)の新聞(毎日新聞北海道新聞信濃毎日新聞他)は全面廃案のみの主張であり、その方針は見事に民主党と一致している。
 その上で紙面を飾る、文化人と呼称される人たちの法案の中身も読まずに印象論だけだ語る見当違いの意見を数多く掲載し、印象論で国民を反対に煽ろうとしている。そもそも、文化人とは言っても彼らは安全保障の専門家でもなければ情報の専門家でもない。すなわち、文化に対しては造詣は深いが単なる素人の意見を鬼の首を取ったかのごとく掲載する。
 法案のどの部位が具体的にどの程度問題となり、想定される具体的ケースというものは私が見る限り掲示されていない。おそらくではあるが、そんなものを具体的にあげれば現状の法律でも問題となるようなものであったり、あるいはまったくの骨董無形な内容であったりするのであろう。

 もちろん、国家による言論統制が高まるという懸念が皆無という訳ではないが、結局のところ権力にある者が本当に力を使うつもりになれば様々なことができるのは今でも変わらない。朝日新聞などは隠したいかもしれないが、民主党政権の時の情報隠ぺいの程度は今と比べてどうだったのか、法案審議の適当さはどうだったのか。当時のニュースを調べればすぐわかることだし、今でも記憶している人は少なくない。
 同時に民主党政権時に後ずさりばかりしていた、対中、対韓関係も最後の野田総理の時にわずかばかりの抵抗がなされたに過ぎない。その状況に戻るのが真に日本の為になると考えているのであろうか。私も理想を語ることは嫌いではないが、実現性の低い理想は虚言と大して変わらない。政治は理想を実現していくための手段であるが、それは現実を踏まえた形で遂行されなければならない。
 だからこそ、政府内(官僚や政治家)の秘密漏えいをきちんと処罰しようという大きな流れ自体には間違いがない。問題はそれを行う時期とやり方であるが、時期は既に遅きを失した感じすらする。そして、問題をきちんと考えて議論を深めていくことこそが何より重要であるべきだ。

 朝日新聞やその同調者たちからすれば、もたげてくるモグラの首を叩き続けてきたが一向に活動が沈静化しない気分なのかもしれないが、自分達こそが今叩かれるモグラになっているのではないかと考えるべきではないだろうか。