Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

コンビニグルメ

 弱肉強食が常の社会とは言え、現在の展開はこれまでとは状況を一変させた。コンビニから次々と繰り出される食べ物は全てではないものの、品質等からくる満足感において専門店のそれを凌駕し始めていると言っても間違いではないだろう。一部のスイーツや、おでん、フライドチキンなど、昔はコンビニのものは高かろう不味かろうと認識されていたものが、驚くほどにまでレベルが向上している。
 一部ではステマ疑惑も囁かれたりもするが、それでもスイーツなどは非常にレベルが上がっていると私自身感じている。特に大きいのが、コストパフォーマンスと言えるであろう。元々コンビニは便利さを売りにして、スーパーなどよりは高い単価での販売を実施してきた。値引き販売が常態化する中で、一部のプライベートブランドを除く商品は定価販売であった。しかし、おでんやスイーツの質を上げることでスーパーとの競争ではなく専門店との競争に持ち込んだのは大きな成功ではないかと思う。

 実際には、専門店の味に近づけることは容易な努力ではなかったと思うが、最初のきっかけは弁当の質の向上ではなかっただろうか。昔のコンビニ弁当は「高い」「不味い」「しょぼい」の三拍子が揃っていたように思うのだが、テレビでも良く特集されたように様々なチャレンジが繰り返されて味の良いものを安くと言う流れが作られた(ただし品質がよいとはまだ言えない)。もちろんそこにはデフレという外的要因が関係していたと思うが、ここでの成功がその他の分野への波及に大きく動意づけたのではないかと思う。
 コンビニでは同様にプライベートブランドによる低価格路線についてもチャレンジしており一応の普及は見たものの、各スーパーとの競合もあってか変化に乏しく特段の差別化には至っていない。だからこそ、スイーツをはじめとしたいくつかの食べ物(主食以外)での成功は他の業界への展開も考えられるかも知れない。
 各スーパーなどに見られるプライベートブランドは、単純な安値商法が前面に立ちすぎて安かろう不味かろうのスタイルからなかなか離れることができていない。イオンなどでもそうであるが、こうしたプライベートブランドは日本国内ではなく中国や韓国で生産している商品が多い。それ故に、日本人好みの微妙な味わいを出し切るのは難しい。
 コンビニでの成功は、多少の値段上昇を見てもよりよい物を作っていく方が好まれるのだという意味では、日本国内回帰の動きに繋がればいいなと思う。

 ただ、消費者側からすればありがたいコストパフォーマンスの向上も、場合によっては専門店減少への道のりが始まったと考えると少し悩ましい。かつては小売店舗(専門店と言うほどではないが)が市場を作り地域に広がっていたものが、いつしか総合スーパーが登場しそれにより問うたが始まった。
 コンビニで蓄えられたノウハウは、一定の時間はかかるだろうがより付加価値の高い食品関係に広がることになると予想する。コンビニが小さなグルメスポットとしての地位を固め始めたとすれば、コンビニが単なる便利さをセールスポイントにした時代からの脱皮を見事に果たしたことになるだろう。
 その結果として、専門店はより高付加価値なもの、あるいはオリジナリティが高いものにシフトしなければならなくなる。その結果がどういう顛末を迎えるかを予想するのは難しいが、少なくとも様々な専門店には厳しい時代が迫っているように感じている。