Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ネガポジ

青年の自殺が増加しているとメディアで良く報じられるようになった。あるいは、面接で落とされ続けることで自殺を考える人の話なども書かれている(sankeiWEB:http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/120610/wlf12061008010003-n1.htm)。
確かに就職状況が厳しいのは事実ではあるが、それでも過去最大の氷河期というわけではない(有効求人倍率の推移:http://nensyu-labo.com/koyo_yukokyujin.html)。ところが自殺者が増加しているとすれば、単純に相関関係があると結論づけるわけにもいかないように思う。

そもそも、就職先が見つからないから自殺するという短絡的な考えは論理的には理解できるが、体感的にはちょっと違うのではないかと感じる。一般に自殺の原因は様々であろうが、基本的に将来を悲観してのものが多いのだと推測する。もちろん将来には現在が含まれ、現在の状況が予測させる将来を意味している。では、就職について現在の状況が将来を予測させるにたり得るかと言えば、そうは思えないのだ。確かに若年層(18-25歳程度)の失業率は、全体の失業率と比べると世界的な傾向として約2倍の高さとなっている。日本の場合も、ご多分に漏れず同様の傾向にある。その理由は雇用法制が既就業者に有利な仕組みになっているからである。
加えて、昨今のグルーバル化による賃下げ圧力が正規雇用の削減に取り組ませ、結果的に新規採用を絞る方向へと舵を切っている。若年層の雇用状態が不安定なのはそのとおりで間違いがないだろう。
一部の意見では、通称ブラック企業と呼ばれるところへの就職や、不安定な中小企業を視野に入れれば雇用先などいくらでも存在するというものもある。確かにそれは事実であろうが、結果的に短気に辞めざるを得ない状況に追い込まれるとすれば、却って再就職が困難な若年層を増やしていると言えなくもない。確かに現状の社会システムは青年層に優しくない。

しかし、だからと言って全てを単純に就職難に理由づけると言うよりは、現実に青年の自殺率が増加しているとすればこうした未来へのポジティブな意識を持てない事が自殺率の増加につながっているのかもしれない。それは、現実そのものと言うよりは想像による状況の悪さや未来のなさがこうした行動を支配しているのだと考えることもできる。
私達は、どちらかと言えば現実の苦しさを耐えることはできても、想像上の苦しさを耐えることが苦手である。悲観するというのは、自分の思考の中で不遇なあるいは残酷な未来を想像しているということである。
逆に言えば、自殺などの行動を抑えるには現実的な対処には大きな効果は期待できず、雰囲気作りが何よりも大切だと言うことになるだろう。もちろん、多くの場面では青年の未来を高らかに謳っているだろうし、心理面のフォローを目指すカウンセリングの仕組みも徐々にではあるが充実しつつある。
しかし、社会全体(政治、経済、その他)が耐えようというメッセージを発しているとすれば、個々にポジティブな思考を広げるとしても、全体としてネガティブなそれが広がる方がずっと影響が大きい。

今政治に必要なのは、ネガティブなイメージではなくポジティブなイメージを演出することであり、私達もそれを受け入れるような生き方を目指すことが必要なのだと思う。社会を見ていると、マスコミも政治も皆物事を否定的にしか捉えていない。
少なくとも個人で上手く生きて行くには、強引でもポジティブな思考を作り上げる必要があるのだろうと感じる。