Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

メディアミックスは底引き網か

メディアミックスとは一定の人気を得た作品を他のメディアでも複合的に売り出す手法を言う(wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9)。そのスタートが漫画であろうが、アニメであろうが、あるいは小説であろうが、ドラマであろうがオリジナルから得られる利得を全て活用しようと言うことで言えば合理的かつ効率的ではあるものの、旬の時期を逃さないように一気にたたみ掛けることで作品を急いで消費する動きでもある。もっとも複数展開したメディア全てが上手く行くことは非常に少なく、ほとんどはオリジナルの媒体の人気のみで終了しているのが実態だろう。一部、カプコンなどのようにメディアミックス戦略による成功を得たと言われる企業もあり、メディアミックスが役に立たないと言うつもりはない。

同じような構図は韓流やAKBであり、言葉上ではメディアミックスとは呼んでいないもののメディアが多方面のチャンネルを通じて売り出しているという意味においておそらく変わらない。それは要するにブームを作り出そうという仕掛けなのである。
問題は狙っているブームがどの程度のレベルかと言うことにより評価が異なることである。例えば、韓流推しにより視聴率が落ちていると言われるフジテレビではあるが、それでは韓流ドラマが全く視聴率を稼げないのかと問われればそれも違う。確実に一定層の支持は得ている。それが失敗だと言われるのは、コアなファン以外にブームを広げることに失敗したためであり、そしてそれは想定している成功が過大であるということでもあろう。
テレビ局が追い求めているのは、過去の栄光と同じようなブームを再び引き起こすことなのだろうが、今の時代にそれは本当に可能なのだろうかと疑問を感じずにはいられない。いや、おそらく不可能ではないかも知れないがそれは単発的にしかならないのだと思う。そう考える理由は、情報の多様性の広がりである。テレビの視聴率がかつてと比べて低迷したのは、テレビ以外の娯楽要素がどんどのと生まれ続けていることであり、同様に新聞の衰退もそれ以外の情報ツールの普及によるのは誰もが理解していることであろう。
エントロピーと同じように、一度分散してしまったものを再度集中するためには巨大なエネルギーが必要となる。すなわち、メディアミックスとはそのエネルギー投入であると考えるのが自然ではないかと感じている。そして、問題はその投入したエネルギーがブームというものに火を付けるかどうかである。

お祭り騒ぎを発生させたいのであれば、基本的に圏外の人を巻き込みより大きな動きに発展することが必須である。ただ、お祭り騒ぎは一時の熱気によるものであって長続きはしない。逆に、コアな人のみを集めてじりじりと続く流行は広がりこそ浅いが継続的である。
メディアミックスは、このお祭り騒ぎを強引に起こしてしまおうという行為である。だとすると、関係しそうな全てのツールを一気に投入して短気に投資を回収する。その分野が将来的に根付くかどうかは関係ない。まるで底引き網のような動きでもある。
韓流などの宣伝を見ていて思ったのは、継続させたいのか一気のブームを煽りたいのかがよくわからなかった点であった。一気のブームを煽るにはセンシティブな分野だと思うし、継続させるにしてはごり押しが過ぎる。おそらくはテレビ局の方もコストカットからのスタートであり、それをどういう風に育てるかまではは考えてなかったのであろうが、ちょっとお粗末かなと思う。

景気の悪化が長期的な種まきの投資(それはコンテンツであっても)を難しいものとしていることもあるだろうが、短期的に強引にブームを煽り投資を回収するというメディアミックス的な戦略は、コンテンツ分野をハリウッドに見られるような賭けの材料にしてしまっているようにも感じられる。果たしてテレビという娯楽にその投機性が必要かどうかについてはちょっと疑問に思うのだ。