Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

新聞社の独善

大手新聞社はそろって消費税増税賛成派である。むしろ、それを反対する国会議員を糾弾さえし始めている(YOMIURI ONLINEhttp://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120621-OYT1T01521.htm)。私は以前より、消費増税は将来的には必要だと思うものの現時点での経済低迷時期においてその導入を経済状況の回復と関係無しに行うことには否定的であり、その旨を幾度か書いてきた。ところがマスコミの論調は大手新聞はほぼ例外無しに(産経新聞のみ両論を謳っている)増税を強く進めるように報道し続けている。ネットの発達で、増税の負の面などもいくらでも情報が入るようにはなっているが、それでも未だに新聞の影響力は小さくはない。
ところが、新聞社などは同時に新聞を含む書籍などには軽減税率を導入するように強く求めている(http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2012062100683)。何のことはない、文化を理由に自分たちは別だと言っているのだ。

見事なまでのダブルスタンダードではあるが、その必死さを見ると呆れかえって逆に可笑しさが込み上げてくるほどである。新聞社は、ネットなどと比べてのクオリティを常々謳うが、現状においてすでに情報の速度と練度はネットの有力サイトの方が新聞を超えている。もちろんネットは玉石混淆なのでレベルの低い情報も嘘や間違った情報も溢れている。
ただ、では新聞情報はそれだけクオリティが高く素晴らしいのかと言えば、こちらも嘘や誘導するような情報が山ほどあるではないか。民主党政権を作り上げたのは実質的にマスコミのキャンペーンだったし、韓国や中国の過度の日本内政干渉を招き入れたのも、一部マスコミの政府叩きが理由である。
ようやく、こうした捏造や間違いが一般に認識されるに至ったが、マスコミはそのことを謝罪したのであろうか。ネットでは、確かに怪しい情報も少なくないが、そう言うサイトは生き残りが容易ではない。また、選択権がネットを使用する側に大きく委ねられているため、嘘情報を信じるのも一種それを信じたいという国民の願望が反映されているわけでもあろう。

増税については、イタリアなどが欧州危機を受けて踏み切ったし、イギリスもその道を取ったがいずれも税収は大きく落ち込んだ。数年経てば元に戻るという意見もあるが、少なくとも現状のでの消費の落ち込みが欧州危機を深刻化させているのは間違いない。
それでも日本の財政危機脱出のために増税が必要だとするならば、本来は消費税を8%や10%程度に上げるだけでは全く不十分である。様々な説があるが、日本の現時点での財政均衡を図るためには現状の税収を考えると消費税を30%近くまで上げなければならないと言われるのだから、財政均衡を消費税増税によって成し遂げることは現実にはほぼ不可能であって、それ以外の方法でコントロールしなければならない。
最も良いのは、景気の回復である。景気が良くなれば経済が活性化して税収は増える。実感無き好景気と呼ばれた安倍内閣時代はプライマリーバランス(借金は別にしての財政収支の均衡)をあと少しで実現できるレベルまで来ていた。もちろん景気は変動するものではあるが、それでも好景気に向かわせることは消費税の10%分に近い効果となる。

だとすれば、なぜ新聞は景気回復をもっと主張しないのか。そもそも、政府支出の削減は基本的には景気の足を引っ張るだけである。
要するに、新聞各社は批判のための批判しか行ってこなかった。政府のミスを見付けるとそれを悪と断じて徹底的に否定する論調を取り続けてきた。だから、政府が支出を増やすことは景気動向に応じて否定されるべきものではないのだが、彼らはこれまでの言動が彼ら自身の思考を縛っている。
それはどういうことかと言えば、本来は前提条件などを廃してプレーンに考えて論調を展開すべき新聞が、まるで前例踏襲主義の官僚と同じように過去に囚われていると言うことなのだ。
そこに見えてくるのは自己批判を過度に恐れる姿である。官僚が前例踏襲主義にのめり込む一番の理由は批判を恐れるからである。ところが権力を批判する存在である新聞が同じように批判されることを恐れて過去の言動に縛られてしまっているとすれば笑い話にもならないと思う。
そして、それは記者個人個人がそうしているわけではなく、おそらくは社のトップの方針であるのだろう。だとすれば、新聞社はその経営陣の保身のためにミスリードを続けていると言われても仕方がない。
その姿は、保身を続けているといわれる官僚や東電の姿と何処が違うのであろうか。

「最も殻を破らなければならない存在はマスコミそのものである。」