Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

現在を批判できないので過去を批判する

朝日新聞が社説にて沖縄戦の被害について書いている(朝日新聞http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2)。私は戦争の悲惨さを否定するつもりはないし、そのような方向に世界が動いて欲しくないと強く願う。ただ、悲惨さのみを糾弾して過去に拘泥し続ける態度は是としない。それは歴史の教訓として生かされるべきであって、事実日本国民の大部分は自らが参加するような戦争など望んではいない。
ただ戦争抑止にはいくつかの考え方があり、武力保持はその有力な手段の一つでもある。実際に、武力を放棄することが平和維持において何の役にも立たないことはチベット問題を見ていれば明白ではないか。基本的に武力放棄による平和とは、相手の良心に訴えかけるものであってそれに依存すると言うことでもある。自己の平和を結果的とは言え相手の考え依存すると言うことは、おかしな話である。
そもそも戦争とは世の中が豊かで平和であればそうそう発生するものではない。むしろ貧困や格差、そして不満の集積がそれを引き起こすのだ。だとすれば、日本が目指すのは世界経済の安定した成長であって、北朝鮮のような瀬戸際外交あるいは中国のような極端な成長頼みのバブル依存国家はそれを制止しなければならないはずである。ところが実際には内政に干渉できないというのが国際的なルールである。それ無しには、本来チベットのような虐殺や暴力が許されて良いはずもない。

さて、現実に行われている大きな問題を朝日新聞は報道しているのだろうか。中国政府の無法を糾弾しているのか。もちろんそれは日本国内のことではないが、平和を希求して非暴力によりそれを実現させようと考えるのであれば、日本以外の強権的な国にもそれを広げなければならない。
ところが、現実には中国の人権問題を強く批判した記事など見たこともない。現在進行形のそれを批判せずに、もう60年以上昔の問題を未だにほじくり返す。もちろん過去を知ることは私達にとって重要ではあるが、それは現在に対処するために過去の歴史を知るわけであって、過去を弄ぶためのものでは無い。
さて、沖縄においては確かに戦時中の問題は現在にも続いているかも知れない。その気持ちを無視しろと言うつもりはないが、それこそ現在おいて過去を修正することはできないのであるから、未来を良くするために現在を変えていくことに最も努力を尽くさなければならない。

過去の日本の過ちを知ることは必要だが、それは下手なイデオロギーに毒されない歴史的な事実を積み重ねることにより成し遂げられるべきであり、新聞報道で部分を切り取って感情を煽るべき問題ではないと思うのだ。今回の社説は、歴史的事実を積み上げるような書き方をしているだろうか。私には、感情論を煽って問題提起したいという意図が見えて仕方がないのである。
それは、現在の民主党のていらくも相まみえて朝日新聞が応援してきた勢力のだらしなさが引き起こした現在の問題を強く追及できないからこそ、殊更過去を持ちだして火を焚きつけているのではないかとの疑念を持たせる。先ほども書いたが、中国の現在の蛮行を放置しておいて日本の過去のみを追求する姿勢そのものがそもそもバランスを欠いているではないか。

結局、容易に批判できそうなものを選んで批判している。それは文句を言われない相手を選んでいる。例えば政府であるとか、過去の日本であるとか。
考えれば考えるほどに、このような批判の価値のなんと低いことよ。逆に言えば、正当に考えなければならない沖縄の歴史ですら利用されて色眼鏡で見られるようになるとすれば、それこそ平和運動の足を引っ張っていることにすらなってしまう。
まあ、もっとも私はもはや朝日新聞に何の期待もしていないので、それを取り上げて改善してもらいたいとも思いはしないが、ただ日本の足を引っ張らないようにと願うばかりである。

「権力面での弱者ではなく、批判を受けにくい弱者を選んで攻め立てるその姿におそらく正義はない。」

(参考)朝日新聞の用語集
・「しかし、だからといって」
 ここから先が本音であるという意味
・「議論が尽くされていない」
 自分たち好みの結論が出ていないという意味
・「国民の合意が得られていない」
 自分たちの意見が採用されていないという意味
・「異論が噴出している」
 自分たちが反対しているという意味
・「政府は何もやっていない」
 自分たち好みの行動を取っていないという意味
・「内外に様々な波紋を呼んでいる」
 自分たちとその仲間が騒いでいるという意味
・「心無い中傷」
 自分たちが反論できない批判という意味
・「皆さんにはもっと真剣に考えてほしい」
 アンケートで自分達に不利な結果が出てしまいましたという意味
・「アジア諸国
 中国、韓国および北朝鮮の事、それ以外の多くのアジアの国は含まれない
・「説明責任を果たしていない」
 反対する言い訳がすべて論破され、反対理由は「説明責任」のみになってしまったという意味  
・「本当の解決策を求める」
 何も具体策はないがとにかく政府等のやり方はダメだという意味
・「冷静になる、落ち着く」
 自分たちが今は劣勢なので、今は世論と勝負したくないという意味
・「ただ、気になることがある」
 論理薄弱のため心配事の表現形式で、自社主張の「なんくせに誘導しますよ」という意味