Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

対財務省解散

 今回の解散を見ると、野党が建前上の理由にされながら実質的には相手とされていない感じがするのが少々面白い。安倍首相は「アベノミクス解散」と銘打ったが、既に識者(http://diamond.jp/articles/-/62461http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41199)やマスコミ(http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20141117/plt1411171700002-n1.htm)が言及しているように私も消費増税を巡る「対財務省解散」と認識している。

 そもそも消費税増税が不可避であること(http://biz-journal.jp/2014/11/post_7453.html)をあらゆるマスコミは報道しているが、それ自体が本当なのだろうかと天邪鬼な私は最初に疑ってしまう。例えばこんな情報もある。図で読みとく!「消費増税」に関する大誤解(http://toyokeizai.net/articles/-/53770

近代経済学の父とも呼ばれているアメリカの経済学者ポール・サミュエルソンは、かつて次のように述べました。
国債は負担を将来に転化するというのは、1000回繰り返して言うが、間違いだ」

 記事の中で「子供たちの世代に借金を押し付けない」という一見正しそうなキャッチフレーズに疑問を呈しているが、私もどちらかと言えば財政健全化の主張を原理主義すぎると見ている。例えば、現在政府が発行している国債の総額(国債及び国庫短期証券)は1000兆円を超える巨額(https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf)であるが、同時に政府が保有する資産も600兆円(https://www.mof.go.jp/faq/seimu/03.htm)で、さらに日銀が保有する国債が200兆円を超えている。借金とは基本的に資産を差し引いて考えるものであり、対GDP比で考えると欧米と比べて突出して高いというほどではない(逆に健全過ぎる訳でもない)。
 確かに政府保有資産はすぐに売却できないが、そもそも国債もすぐに償還しなければならないものではない。借りるには担保が必要だが、その担保がすぐに換金できないからと言って担保価値がない訳でもなかろう。借金推奨と言うことではないが、資産を一切無視するというのもこれまた極端な話だということである。
 また日銀が国債を購入することの是非や債権者が国内か海外かといった問題もあろうが、ここではそれに言及するのが主旨ではない。

 財政が健全である方が良いのはそのとおりだが、一方で古来一切借金をしなかった政府もない。借金の絶対額に拘ること以上に、借金が経済規模と比べて大きくなり過ぎないことが何より重要である。だとすれば、借金(負債−資産)とGDPの比率が政府の健全性を推し量る上で最も重要な指標と言っても良い。日本の問題は、むしろ政府借金の増加にも関わらずGDPが増えなかったことにある。バブル崩壊の影響もあるが、日本のGDPは1990年ごろを境に横ばいを続けている(http://ecodb.net/country/JP/imf_gdp.html)。ドルベースでは円高の影響もあり基点が1995年ごろより微増で、円ベースでも下がらなかったのは見事ではあるが、再浮上のきっかけをつかめずにいるというのが現状でもある。
 一方、世界のGDP推移状況はこのサイトが比較的わかりやすいグラフを示している(http://www.garbagenews.net/archives/1335765.html)。もう一つGDPの成長率についても別のサイトを紹介しよう(http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20100418/1271591592)。上昇率に関しては基点をどこに置くかで評価が変わるが上記サイトでは1997年をスタートとしている。グラフからは日本の低迷が見て取れるが、バブル時の期待値以上の上昇分があるので多少は割り引いて考えた方が良いとも思う。

 GDPが増加するということは経済規模が拡大しているという事であり、善し悪しは別にして会社の規模が大きくなればそれだけ大きな借金に耐えられる。だとすれば、取るべき方向性としては借金の額を減らすか会社の規模を大きくするかの2つの選択肢があることが判る。現在の日本は少子化(人口減少)によりGDPの増加は難しいという意見もあるが、これまた本当なのかはきちんと見定めなければならない。
 1990年代から日本のGDPアメリカほどではなくとも1.5倍に増加していたならば、現在の政府借金を巡る議論はまた別のものになっていたであろう。少なくとも20年前より最近までは日本の人口が減少していたわけでは無いのだから。
 さて、一方でGDPの伸びを成し遂げたからと言ってラ色の社会が導かれる訳でもない。仮にそうであれば、今頃はアメリカやイギリスは素晴らしい経済状況になっていなければおかしい。逆に言えば、日本のようにGDPの増加はなかったとしてもそれなりに安定した社会状況を築けているのは、政府が借金により経済を維持したからに他ならない。

 私はいつも物事(今回の場合には政策実施)にはタイミングが最も重要だと書いてきた。増税についても、一番需要なのは何よりタイミングである。今回の解散は、そのタイミングを問うものである。2年後に妥当な時期を迎えているかどうかはわからない(個人的には2年後は世界的な問題でもっと厳しい状況ではないかと思う)が、今それをすべきかどうかは疑わしい。
 財務省的には政策により景気を良くする(あるいはGDPを恒常的に上昇させる)よりも、消費税により安定的な財源を確保する方が間違いなく自らの目的には合致する。ただ、過去にも書いたことだが本当に財務省に求められるのは日本経済をもっと活気づけることである。これを政治家や経済産業省に任せて我関せずでいるからこそ、増税必死の議論が出てくることになる(だからと言って財務省にその権限まで渡せと言うつもりはない)。
 誰かが言っていたが、財務省の人事評価を景気連動型にすれば話は大きく変わるであろう。

 さてすっかり影の薄くなった野党(特に民主党)であるが、自らの存在を誇示するが如く景気の良い話が飛び出している(http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK23H10_T21C14A1000000/)。しかし、2年前までの記憶がはっきりと国民に残っている中でどれほど支持を伸ばせるであろうか?(http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20141122/plt1411221000001-n1.htm)
 今回は前半に自民党有利の情報が出て(http://www.j-cast.com/2014/11/21221544.html)、後半には民主党善戦の情報が出るような気もしているのだが、このあたりの情報戦予想は当たるも八卦当たらぬも八卦