Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

低迷か混乱か

世界的な不景気は、中国にもその影響が及んでいる。中国共産党政府は、来年の成長目標に引き下げを行った。これまでは社会の安定のためには最低8%の成長が必要と言われてきたが、目標値が7%となっている。これは、社会安定すら確保できないという可能性さら示している。
13億(あるいはそれ以上)と言われる中国は、人口ボーナスによって生き延びるという意見も少なくないが、私は仮に中華人民共和国が存続するとしても、それ相応の代償を支払うことになるだろうと予想している。

まず、中国の政府債務は日本やアメリカとは比較にならないくらいに低い。それをもって、日本や欧米よりも中国の方がマシだという議論をたまに見かけるが、これは変な話だと思う。確かに、政府債務は表向き少ないのだが、その分数多くの紙幣を刷っている。中国の将来の成長を見越して、多くの紙幣を刷ったにも関わらずドルに対して元は下がらなかった。そして、中国は刷った元をドルと交換することで世界最大の外貨を保有する国になっている。
本来ならば多くのお金を刷れば元の価値が下がるはずではあるが、中国の輸出攻勢を抑えたいアメリカは元が安すぎると注文を繰り返し、将来的な中国の消費を期待したい金融プレイヤー達は元の価値を下げなかった。

もっとも、中央政府はそうであるものの地方政府は信じられないような借金を積み重ねている。地方発展が進む上での必要な触媒ではあるが、地方の高級役人が地方政府の借金を運用することで多くの蓄財を行っているのはよく知られている。それに関する反感は数多くの暴動を引き起こしているが、無責任に積み重ねられた地方政府の借金は現状自転車操業で回されているに過ぎない。そして、その費用の大部分は不動産への投資に費やされている。

先日、中国の全ての都市において不動産価格がマイナスに転じ始めた。さて、今後の不動産価格の下落の中で、この投じられた借金はどうなるのか。巨大な不良債権となることは間違いない。自由経済ではない中国では統制経済を行うことで不動産価格の下落を抑えることは形の上では可能かもしれないが、おそらくそこまで行えば中国の推進力たる社会のダイナミズムは失われてしまう。
すなわち、成長は止まり続ける。

考えてみれば、中国は50年分以上の成長を10年で先食いしてしまった社会である。その成長のめざましさは素晴らしくその動きに目を奪われてしまうが、あまりに急な成長が何の歪みも発生せずに成立することなどあり得ない。基本的に一気の成長は将来の分の先食いなのだ。すなわち、その先にあるのは長期間の低迷かあるいは混乱である。
例えば、誰も入居していない巨大なマンション群などもいくつかのメディアなどは報道している。中国の人口を考えれば埋まらない数でないのは確かであるが、そこに投じられたお金が回収できるわけではない。すなわち、巨額の不良債権が生み出されている。少なくともバブル崩壊を経験してきた日本と比較しても、その数倍では納まらないレベルの不良債権だろう。
これをソフトランディングさせることができるのかと問われれば、難しいというかほぼ不可能ではないかと思えるのだ。

日本はバブル崩壊後の長い低迷に耐えることができる国であった。それは、国際的に富める国になっていたことが大きな理由であろう。しかし、欧米でさえもそれに耐えられるとは言えそうにない。ましてや中国が長期の低迷など受け入れられるものではないだろう。
だとすれば、その代わりに訪れるのは混乱である。
内部的な混乱を是としなければ、引き起こされるのは外部的な混乱である。中国は外向的に先鋭化を続けるだろう。現状における島嶼関係の周辺諸国との軋轢は、そのシミュレーションと言えなくはない。

「中国はその背伸びによって自壊の危険性をはらんでいる。内部が混乱すれば必ず外部に打って出る。それを決して忘れてはいけない。」