Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

お金はどこに消えたのか?

 日本政府が国債を発行しまくっても、金利は上昇しない。日銀が国債の半分近くを購入している(9月末の投資家別の国債保有額(久保田博幸) - 個人 - Yahoo!ニュース)ということは、その対価として資金(日銀券500兆円弱)が市場に流れているわけだが、インフレになるという話も一向に聞こえてこない。多くの財政破綻論者たちが20年以上も昔から叫び続けていた、国際暴落およびハイパーインフレとは全く異なる光景が見えている。理由として国家の信用があることが一面の真実だろうが、正直に言えばそれだけでは曖昧過ぎるように思う。それ以外にも様々な理由があるのではないだろうか。経済に関しては門外漢で素人ではあるが、自分なりにそれを少し考えてみたい。

 

 日本と同様のことは、アメリカ政府にも言える。ドルを再現悪発行し続けているのは良く知られている(米国債の発行計画、最高規模を維持-財政赤字1兆ドル超えへ - loomberg)。基軸通貨だから大丈夫だというのはその通りだが、それを許している具体的な存在は何なのだろうかと悩む。ドルの場合も、円の場合もハードカレンシー(国際通貨 - Wikipedia)として、種々の国際決済に用いられている。もちろん、日本が経常黒字国で世界最大の債権国という点もある。もちろん、アメリカは懸念であった中東への石油依存もなくなり、軍事的にも経済的にも少なくとも現在は覇権国家であることで、経常赤字があっても同様の地位を確保できている。

 

 こうした状況が続いたことも原因だろうが、MMT現代貨幣理論 - Wikipedia)なんて話も飛び出しているが、実質的にはこれらは日銀引き受け的なシニョリッジ政策(シニョリッジ - Wikipedia)と括ってもおかしくはないと思っている。要するに貨幣発行益を配分しようというもの。その政策には当然どこかに限界があり、あるいは適用できる国は一部の国家に限られる。経済的に弱い中小国家では遂行できないのだ。

 

 さて、一方で政府(あるいは中央銀行)がどんどんとお金を世間にばらまいても、市中流通する資金量がそれほど大きくならない。だからこそ、ハイパーインフレにならないのではあるが、逆に言えば期待するインフレ率にいつまでたっても到達しない状況と言うのは、想定通り資金が流通していないことの裏返しではないかと思う。現実のお金(主に紙幣)が減少することについては、電子マネー(あるいは電子取引)の発展により確実視されている。日銀が買った国債の対価もこの範疇に含まれる。だが、決済上の電子的なお金(データ)の総量が増加しても、国民が扱うお金の総量はさほど増加していない。

 私は、お金が死蔵されていることがあるのではないかと思う。それは国民の死蔵貯金もあるだろうが、それ以上に外国政府の外貨保有や、国内外企業の剰余金等により動かないお金が現在も増え続けていることにあるのではないかとみている、その吸収余力がある限りにおいて、インフレは発生しづらい。特に、日本国内以外の吸収余力はなかなかに想定しづらい。と言うのも、日本円を保有したいという認識は、日本円の信用力と深くかかわっている。すなわち、日本が危ないと本当に考えるのであれば、一気に吐き出され円が市中に溢れる可能性もある。

 

 だが、一方で現状の世界は一つにつながっている。それは世界経済が連動して動くことを示し、経済大国のそれが崩れるときは世界中を巻き込む。これは、国の信用が相対的な価値であることを示し、すなわち日本の信用度は日本発の経済危機でも引き起こさない限りにおいて、総体的に低下しないことを示す。むしろ日本円は有事においてより価値を増す。

 さて、有事に価値があると考えるお金とそうでないと考えるお金のどちらを保有したいか。世界経済は現在も成長し続けており、その成長に応じて何らかの資金を蓄えていく。そして、ハードカレンシーはその蓄えられる資金の中心を占める。私には、世界が蓄えられる資金の余裕がどれだけるかはわからない。ただ、リーマンショック後に世界中で金融緩和が行われ、発行されている資金の量は飛躍的に増えている。その資金がすべて流通しているならば、世界は大きなインフレになっていてもおかしくはない。それは財政破綻論者たちが言うとおりである。ただ、世界経済はゼロサムではないし、幸いにも成長を続けている。その成長は資金を欲し、使われない(あるいは動かない)お金がどんどんと増加している。

 

 これは、経済の専門家でもない私が勝手に考えた妄想である。だが、ほんの30年前から比べて新たに市中に流された資金量は、世界中で莫大な量に上る。そして、それを縮小することすらできないでいる。だが、これは逆に考えれば縮小できないのではなく、それだけの余力が世界経済にはあるということではないか。もちろん問題がないわけではない。この余力は成長力が高いほど大きくなる。それにブレーキがかかった時にどうなるかはわからない。突然、大きな反動として世界を混乱に招き入れる可能性も十分にあるだろう。

 

 余剰資金は様々な場所に投資される。株しかり貴金属や原油もあり、不動産もある。ただ、中国や韓国のそれが制御不能な地点に到達するのはそう遠くない(中国からの米商業不動産投資、急減-資本流出規制や地政学的緊張で - Bloomberg中国、賃貸住宅市場のリスク抑制に向け規制を強化 | ビジネス | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト韓国政府、不動産抑制策 住宅ローン規制など強化 - ロイター)と感じている。それに頼る政策の限界が近づいているのではないだろうか。

 とは言え、それがいつ来るかは誰にもわからない(ニトリ会長の経済予測、「大型投資は再来年以降」 TBS NEWS)。