Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

中国の苦境

 ブルームバーグにこの様な記事が出てきた(中国の住宅の5軒に1軒は空き家、全体で5000万戸余り:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-09/PHWXGI6TTDSF01)。以前より「鬼城(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AC%BC%E5%9F%8E_(%E5%9C%B0%E7%90%86%E5%AD%A6))」と呼ばれる人の住まない集合団地や都市の話は話題に上ってきたが、中国政府の力技による延命策は不動産バブル崩壊を食い止めてきた。だが、こうした延命策は日本のバブル崩壊時でもあったように、多くの場合において傷口を拡大させていく。昨年にその限界が来た(中国の不動産バブル崩壊)のではないかと感じここでも触れたことがあったが、正直私の見込み違いでその時点ではまだ崩壊には至っていなかった。今後も中国政府のなりふり構わない方策により延命する可能性が無い訳ではないが、そろそろ限界が近づいているのではないかと思う。
 日本の空き家率も既に15%を超えており平成33年ごろには30%を超えるという推計も出されているが、日本の場合には地方における人口減少の影響が大きい。また、都市部の空き家率は少なくとも現時点ではそこまで高くなく、多くの場合において空き家問題は地方における話題である。もちろんそれを看過できるものではないが、国家全体の問題とすれば深刻さの度合いは日本よりも中国の方がずっと大きい。中国も現時点では日本に10〜20年遅れているが、一人っ子政策のつけとしての少子化に伴う歪な人口構成が生み出す高齢化は今後急速に目に見えてくることになる。日本のバブル崩壊における失敗に学んだ中国であるが、高齢化社会に対する取り組みには日本の失敗と言うケーススタディが無かったが故に、おそらく大きな問題となって現れるだろう。

 更に、昨年度より対立が目に見えるようになってきたアメリカと中国との覇権をかけた状況は、一帯一路に対する世界的な反発も徐々に広がりつつあり中国にとっては必ずしも良い方向には動いていない。少なくとも、ドルの地位を脅かすレベルまで中国は元の価値を築き上げられていないので、経済戦争を行えば言うまでもなく中国の方が分が悪い。もちろん民主主義による様々な縛りを受けたアメリカと比較すれば、共産党一党独裁を資本主義の中に緻密に組み入れてきた中国の方がルールに縛られない分だけ有利な面もあろう。だが、ゲリラ的・局所的な経済戦争やプロパガンダでは中国が有利になる場面もあっても、トータルとしての戦いではアメリカの方が間違いなく強い。アメリカが気にするのは、中国の混乱が招くであろう世界経済の落ち込みがアメリカの景気に大きなダメージを与えないようなコントロールなのだから。
 もちろんアメリカも盤石ではない。現時点でアメリカの景気が良いのは言うまでもないが、それでも多くの国民の不満を解消できる状況になく、その結果が今回の中間選挙にも見事に表れている。グローバル化した経済では中国の没落を諸手を挙げて喜べるものではないのである。アメリカの狙いは市場としての中国を確保しながらも、世界的な中国の影響得力を如何に低下させるかが課題なのだ。

 どちらにしても、トランプ政権成立後に一気に進んだ世界的な株高はそろそろ方向が変わりそうである。その引き金を中国が引くことになるのか、あるいはリーマンショック前以上に積み上がったジャンク債市場の崩壊がきっかけとなるか、はたまた不安定になりつつある中東の状況が関係するのかはわからない。ただ、これまで全てが上手く回っていた世界経済ではあるが、櫛の歯が欠けるように徐々に不協和音が広がっていくような気がしてならないでいる。少なくとも、現状で中国が打てる手は大きく状況を覆せるものではないだろう。リーマンショック後の無理なパッチワークの代償を今後支払っていくことになるだろうが、それに今の共産党政権は耐えきれないように思う。だからこそ、今後目くらましに何をしてくるかを注目していく必要があると思う。