Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

国家の主は誰なのか

TPPの話は今回はなるべく横に置いておこう。
その上で、今の日本を見ていて気になることがある。
学校の授業では、国民主権と習ってきた。
国家は国民がいてこその存在であって、だからこそ国家は国民を守る。
私個人としては、人の命が地球よりも重いとは思わないが、だからといってそれが命を尊重しないと言うつもりもない。
私達国民は幸せになる権利がある。
国家はそのための巨大な装置なのだ。

すなわち、企業も自治体も国家も、そこに属する人を幸せにするために存在する。
もちろん、その団体が大きくなればなるほどより多くの人を幸せにしなければならなくなり、結果的に思い切ったことは難しくなると言う現実があることは、ある意味当然だ。
自分こそが幸せになりたい所属員が綱引きをすることもあるだろうし、適切な幸せ分配バランスを判断できないから結果的に放置されると言うこともあるだろう。
企業や自治体、あるいは国家となると、エゴむき出しで所属員の幸せのためのみに邁進するわけにも行かない。
外国や、他の自治体や、社会にも配慮が必要である。

しかし、それでも言えることがある。
国家の目的は、その国家に所属する国民の最大幸福を将来にわたって獲得することである。
短期的なそれであってはならないし、一部の特権階級がそれを独占してもならない。
日本という国は、少なくとも専制君主独裁国家ではなく民主国家なのだから。

だから、国家が最も配慮するのは総体としての国民に対してである。

さて、前総理大臣は「最小不幸社会」を提唱した。
上述の話からすれば、国家が幸福を国民に与えるということを行わないという宣言でもある。
「酷くはならないように努力だけするね」という国家を運営する側からすれば都合の良い社会である。
それが総理の目指す社会として打ち上げられるのだから、いろいろな観点もあるものだと感じたものだ。

さて、企業も法律上の人として法人という人格を与えられている。
そういう意味で言えば国民の一人でもある。
問題は、大きな企業になれば大きな影響力を国に対して発揮できる擬似的な国民でもある。
ただ、企業がなぜ法律的に「法人」という資格を与えられているのかについてはちょっと考えてみなくてはならない。
自然人である人間は生まれながらに人権を有している(と解される)。
一方で、企業などは人が作ったものなので何もなければ保護されることはない。
当然、保護されなければ社会活動において大きな不利益を受けることになり、結果的に所属する人間の権利すらも損なうことも考えられるので、その権利を守るために「法人」という人格を法的に認めているのだと思う。

逆に言えば、法人はそこに所属する人の幸福を獲得するための活動をする上で、法律により保護を受けていると言っても良いと思う。だから、法人が少なくとも所属する人間の幸福を得るために寄与しないのであれば、法律上の保護を与える必然性はない。

それでも、経団連という法人の団体は政治やメディアに大きな影響を与えている。今回もTPP推進の中心的役割を果たしている。各企業のトップが皆TPP推進しなければ日本が終わりだとまで言っている。しかし、それを言うのは輸出を行っている企業ばかりである。
要するに自分たちにとってはメリットがありますよと言うことを、言っているに過ぎない。
それは強い反対論を打ち出している農業団体と方向こそ異なるが同じこと。
自分たちの身内は守るが、それ以外は知らないという利己的な動きである。

もちろん、組織としてのそれは当然組織やそこに所属する人たちを守る動きをする。
だから、組織としては当然の行動でもある。
しかし、多国籍になりつつあるグローバル企業に所属する人とは、もはや日本人とイコールではない。要するに、日本人以外も守ろうとしているのである。
実際、ユニクロ楽天などの輸出よりは輸入中心の内需的な企業であっても、企業拡大の活路を海外に求めるようになってからは、職員も海外に広く求めるようになりつつある。
日本語ではなく英語なんて話しもでているくらいだ。

もちろん、一企業としてのそれは理解できる。
そのことを否定するつもりなどない。
ただ、そうなれば国家が目指す目的とは当然異なったものとなる。
日本という国家は、原則として日本国民の最大幸福を目指す存在である。
企業が、同じ方向を向いているときにはそうした法人の目的と同じであろう。
すなわちそこに齟齬はない。
しかし、企業が別の何かを目指すようになれば、日本という国家とは別の道を歩むはずである。
ところが、そうした企業群は日本政府に自らと同じ方向を向けと圧力をかけている。

さて、日本という国家は誰のために働くべきなのか?

「グローバル企業の利益と、国民の利益は、もはや同じ方向を向いていない。」