Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

韓国は失われた20年では終われない

朴政権の迷走で高まる韓国版「失われた20年」への不安 サムスン株再び急落…(http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130930/frn1309301810009-n1.htm

 韓国経済の雲行きが怪しくなっているが、別にこれはおかしなことでもなんでもない。韓国は日本のように長期的に失敗しない経済運営ではなく、短期的に大きな果実を得られるそれを目指してきた。円高と欧米の金融緩和の風を受けた時にはそれが見事にはまって一時的な成功をおさめることができた。その状況を一部のメディアや識者は称賛したが、今考えれば馬鹿げたことだと思う人が大部分であろう。
 確かに日本は失われた20年という苦しい時期を過ごし、その間には悲惨な状況も数知れず発生したもののそれでも今まで社会が破たんせずに乗り切れたのは、大きな基礎体力があったからでもある。「さて、韓国にその基礎体力はあるのか」、などと問うのは失礼にあたるのだろうか。

 しかしながら、この失われた20年という響きも正直言えば日本の場合とはかなり異なる。日本の場合にはこの停滞期は企業が世界での売り上げを大いに落とし、それと比較すれば(あくまで比較論である)国民は給与が多少下がったが企業の苦境ほどの上下動はなかったという感じがしている。すなわち、どちらかといえば国民の生活を守りじっと耐えてきたというのが正しいのではなだろうか。もっとも、国民と大企業の狭間に位置する零細企業がその両者の苦しみを集約していたとも言えるので、だから日本経済が大丈夫であったと言えるわけではない。
 ところが、韓国の場合にはこの状況はおそらく大きく異なる。経済の発展は一部の財閥系大企業(特に輸出系企業)に集約され、経済発展を遂げてきた時期でも国民の生活はむしろ低下していたとも言える。ローンの拡充などにより見かけ上の国民生活は向上してきたが、今はそのツケが政府を苦境に追い込むことにさえなりつつある。一部徳政令がすでに施行されているが、だからと言って状況が劇的に改善されるわけでもない。
 ここに加えて輸出系の大企業がダメージを受けたならば、国家の基礎体力がないために日本のように我慢し続ければいつかは何とかなるという期待を抱くことすらままならない。

 反日によりこうした現実から多少は関心を逸らすこともできるだろうが、もちろんそれは魔法の杖ではない。国家の基礎体力を向上させるよりも甘い果実を早く掴むことに賭けてしまった結果であり、現状を打破するには日本以上の苦難の道を歩まなければならないのは当然ではあるが、それに耐えきれなくなって新たな賭に出る方が余計に長い低迷期を生み出すような気がしてる。
 もっとも、不思議なもので低迷期であっても大本営発表のように良いことばかり伝えていると、それなりに気分が良くなってしまうのだから不思議なものである。プラシーボ効果(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%BD%E8%96%AC)にも似た状況を生み出すアナウンスメントは病気の身体に心地よいかも知れないが、真の意味での健康体を取り戻すためには社会がより高いハードルを乗り越えられる力を地道に身につけなければならないのだろうし、そのための基礎トレーニングはおそらく辛くつまらないものであろう。

 韓国に最も必要なことは、おそらく地道な基礎体力向上ではないかと私は思う。それが為されることにより最短での復活が成し遂げられるのだろうが、このことに気づかず(あるいは無視して)倍々ゲームに勤しんだ場合には日本の援助無しには20年どころか1世紀でも低迷が続くことになるだろうと思う。