Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

なぜ枕は必要なのか

私達は眠るときに枕を用いる。
おそらく世界的にも違いはないと思う。
枕の形などは、時代と共に変遷しているとはすれども必要性には変わりがない。
枕なしでも眠れないわけではないが、気づけば腕などを枕代わりにして用いて、結果的に腕の血行を害してしびれを感じたりする。

でも、考えてみれば不思議ではないだろうか。
人間という生物は、枕という補助具を用いなければ眠るという生命維持活動の最も重要な部分の一つをできないというのである。睡眠時に道具を用いる生物など人間以外には存在しない。

枕の必要性そのものについては合理的だと感じられる説明がなされている。
それは、直立歩行をする人間は背骨が重い頭部を支えるためにS字形状に曲がっている。
その状態を維持したまま眠るためには、枕が必要だというのだ。
だから、赤ちゃんは直立歩行しないため枕は必要ない。
ちなみに、枕を必要としない人たちも数は少ないが存在するらしい。

では、人間以外ではと考えると猿の仲間には比較的人間に近い歩行形式を取るものもいる。
ただ、猿は横になって寝ない。座った姿勢で眠るのだ。そのため、歩行時と睡眠時の姿勢の違いが存在しない。
そう考えると、動物で完全に横になって眠るものは野生動物ではほとんどいない。というか、そんな無防備な姿勢で眠るとは考えにくいのだろう。大部分は普段生活している姿勢で眠り、あっても足を折り曲げる程度である。

では、なぜ人間は横になって眠るのであろうかという疑問に行き着く。
それはおそらく直立歩行時の姿勢が幅に対して高すぎるのであろう。
血液の循環が、直立歩行時には必ずしも良くない。重力の影響を大きく受けるからである。
それを回復させるのが睡眠の一つの役割ではないかと思う。

しかし、こうしたことは人類発生時期よりおそらく変わらない。
では原始の時代の人類はどのようにして眠っていたのだろうか。
猿と同じように座った姿勢で眠っていたのか?それとも、現在と同じように横たわって眠っていたのか?
これは明確にはわからない。敵を想定すれば無防備に寝ていたとは思えないし、住居が定まってようやくそれが成し得たようには感じられる。では、初めて横たわって寝たときに枕は必要だったのだろうか?
残念ながら、私にはかつての人類がどうであったかを想像により解き明かすことはできないようだ。

話を元に戻すが、今の人類が枕を必要とするのには合理的な理由が存在するが、なぜそんな状況になってしまったのかについては明確にはわからない。
ただ、人間が鉛直歩行を獲得し手の自由を得たことで脳の飛躍的発達が成し得た。その代償として、横たわって睡眠するという不便さを甘受し、枕を利用しなければならないという拘束を受けたとのだとすれば、なんとなく理解できなくはない。私達が枕を必要とするのは、高度な脳を得た代償なのだ。

そして、生物の進化の過程においてすぐに逃げられるような一次的な安全ではなく、脳を駆使した住居の確保など二次的な安全確保を選択した結果でもある。これは考えてみれば凄いことである。その時の近視眼的なベストを取るのではなく、将来的なベストを目指した結果なのだ。
生物的には合理的ではないように見える発達も、大きな目で見れば人類という種には意味があったと考えたならば、枕を必要とすることにも面白い味わいがあるといえるだろう。

「硬い枕と柔らかい枕の好みは、どういう原理で決まるのであろうか?」