Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

内需と外需

私は基本的にTPPについては懐疑的なスタンスを有している。
もっと言えば、グローバル化しなければならないという脅迫観念的な主張に対して疑念を抱いているのだ。
グローバル化が日本国民を幸せにしない可能性については以前に触れた。
http://d.hatena.ne.jp/job_joy/20110907/1315333756

企業が多国籍化を進展させた場合、自国民の利益と日本発の多国籍企業の利益は一致しない。
だから、グローバル化が進展すること自体を全て否定するつもりはないものの、グローバル化が不可避の事実であるという認識には同意しない。
ところが、多くの場合日本はグローバル化しなければ生き残れないとか、グローバル化は避けられない趨勢であると言った、グローバル化を前提条件にした議論がTPP推進派の常套句である。

バブル崩壊後の日本は確かに一時的に外需に活路を見いだそうとした。
実際、世界的なバブルを背景に2003〜2007年は「実感無き景気回復」と呼ばれる経済成長を成し遂げていた。
これが外需による成長である。「実感無き」という言葉が明確に示しているように、企業収益は上昇しても国民生活は向上しない。それについても、前述のエントリにおいて生活保護世帯の上昇がバブル崩壊後ずっと上昇し続けていることをもって示した。

かつての時代、日本が内需よりも輸出により大きく発展した時代がある。それは行動経済成長時代と呼ばれ、輸出による利益が内需を大きく刺激したのだ。その事実は確かにあろうが、今は同じことが言えるとは限らない。
日銀がよく持ち出す「ダム論」、、企業が大きく収益を上げればそれがダムから広がるように内需を刺激するか?
その影響はゼロとは言わないものの、範囲が非常に限られ国民広くまで波及しない。
要するに、金融商品が買われる、不動産投資が増える。しかし、国民の給与には波及しない。

もちろん、もっとその状況が続けば国民の給与にまでそれは広がったであろう。
しかし、欧州経済危機がいつ爆発するのかと囁かれ、新興国の経済にも限りが見えてきている現状において、日本が目を向けるべきのは内需なのか外需なのか??
私は、内需であるべきだと思う。
この20年で世界のほぼ全ての国はGDPを倍以上に上昇させた。単純にGDPが増えたから良いと言うつもりはないが、少なくとも日本は増えていない。それはなぜか?内需が全く活性化していないからである。
不動産バブルがあってGDPが増加したという部分もあるため、世界のそれがそのまま良かったとは言い切れないのは繰り返し触れておきたいが、20年間毎年2%の増加でも約1.5倍にはなっている勘定なのだ。基本的に2%成長というのが現状維持の基本的なレベルである。
だとすれば、日本はその2%すれ維持できていなかった。すなわち、この20年間平均で2%ずつ縮小していたと考えても大きな誤りではないと考える。それは表面的には見えないものの、日本のインフラ全体を蝕みつつある。

日本が内需に向かわない一番の理由は、バブル崩壊後その原因の一部としてやり玉に挙げられた「公共事業悪玉論」があるだろう。もちろん、無駄や一部業者が不当利益を積み重ねてきたのは事実だと思う。しかし、そのペナルティを続けた結果日本の内需は疲弊が進んだ。
TPP推進派の急先鋒は経団連であるが、彼らがTPPを推進する一番の理由は自らの利益を得るためである。要するに経団連は現状輸出企業の意見が主体となる団体なのだ。内需を擁護する団体はこの20年間で大きく力を失ったのだと感じている。下手に突出すればマスコミに叩かれるというのもあるだろう。

アメリカが輸出倍増計画を推し進めている。
欧州は大きな金融危機に面している。
中国もインフレの恐れから、大胆な金融緩和は難しい。
このような世界の状況を見たときに、日本は必死になって世界のシェアを再度奪い返す争いをするよりも内需を振興する動きを本格化するべきではないのだろうか?

ちなみに、未だに納得いかない点が一つある。
経団連経産省がTPPを推進しようとするのはある意味理解できる。彼らにとって意味があることなのだから。
しかし、日本のマスコミがこぞってTPP賛成なのが私には理解できない。
マスコミは、日本の生き残りが本当に現時点での外需振興政策で叶うと思っているのだろうか?
TPPは双方向であるが故、日本が外需を得るのと同じレベルで日本の内需が外国に奪われる。
それはさらなる失業者の増加にもつながりかねないと思うのだが、その点には触れられない。
もちろんその対象にマスコミ関係者が入らないという保証はどこにもない。

TPPは貿易の自由化を推進する。
貿易は、為替による影響を大きく受ける。
平等な状態での貿易自由化は、妥当な為替レベルが継続することにより成立する。
実を言えば、TPPは為替を安くした国が儲かるシステムなのだ。
輸出は増加し、輸入は難しくなるため海外企業の国内参入は控えられる。すなわち内需は奪われにくい。
だとすれば逆の状態にある国は儲からない。
さて、現状で円高に苦しむ日本がTPPにおいて勝ち残れるのか?
私にはそうとは思えない。

日本は外需に頼るよりは内需にもっと目を向けるべきであろう。

「日本は内需振興に何度もチャレンジして失敗した。それは一部に補助金を与えるといったスタンスだったからである。内需振興は、持たざる者にお金を持たせればよい。それも相当思い切った金額で。」