Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

デフレ再び

 世界の株価は、特にアメリカを中心に新型コロナウイルスの脅威をそれほどではないと見込んだためか、全く何もなかった様に上昇を続けている。だが、私はその考えは甘いと思う。コロナウイルスの最大の問題は致死率の高さではなく、感染率の高さ(「新型コロナの感染力はSARSよりも強い」米CDC)にこそあるのだから。それ故に端から見ると、この株価の状況はマネーゲームの最終段階の様な姿に映る。終焉を楽しむバブル(「新たなバブル相場」が始まったかもしれない | 市場観測 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準)と言って良いかもしれない。

 さて、日本も悠長なことは言っていられない。馬鹿げた時期に行った消費増税のためなのか、GDP増加率に大きな赤信号が点灯した(GDP 大幅マイナス予測 消費税率引き上げで 民間調査会社 | NHKニュース)(2/17追記:GDP10-12月期 年率-6.3% 5期ぶりのマイナス | NHKニュース)。さらに、コロナウイルス問題が追い打ちをかける(1~3月期GDP、新型肺炎で0.46ポイント下振れ予測 日経センター調査 :日本経済新聞)。財務省国益を無視しても、財政均衡化を目指しているのはよく知られていると思うが、その圧力は相当に強く、多くの政治家達やメディアもその声に追随するケースが後を絶たない。結果、金融政策や財政出動により景気の下支えを行おうと考える政府(官邸)も、声の大きさと多さに押されて抗しきれなくなっていくと見ている。

 その結果が、決して良くない時期の消費増税へとつながった。最も気にしているのはコロナウイルスが世界に広がることで生じるであろう、世界的な景気減速への対応が想定されているのかどうか。以前にも何度か書いてきたが、世界的な貿易や国内のサービス業に大きなダメージを与えるのは間違いない(中国人旅行者に人気のタイとフィリピンが金利引下げ、世界に広がる新型ウイルスによる観光産業への影響 | トラベルボイス)。現時点で狂った様に上げている株価は、売り方が買い戻しを迫られているのかも知れないが、状況はあたかもあだ花の様にすら見える。家に籠もることで、ネット産業は多少隆盛するかも知れないが、トータルの経済活動は間違いなく縮小する。特に観光業にはかなりのダメージがある(新型肺炎、観光業界にダメージ…希望退職、雇用に北風=韓国(WoW!Korea) - Yahoo!ニュース)だろう。これは株価上昇を主導しているアメリカですら逃げられない。

 

 日本においては、その先にデフレの深刻化が控えている。既に、高級品の売り上げが目に見えて減っているという前兆が既に現れている(高級品市場、19年は不調 金融市場と裏腹 - WSJ)。日本は長期にわたるデフレから、結局のところ抜け出すことが出来ないままに再度沈み込む危険性がかなり高まっていると見ている。残念ながら、中国初の新型コロナウイルスがその引導を渡そうとしている形である。

 日本の場合は、東南アジアの国々と違いこれ以上政策金利を引き下げられる余地はほとんどない(マイナス金利の深掘りのみ)。そして、永らくマイナス金利を続けても大きな景気浮揚効果がなかったのは誰もが知っている。金融政策の限界がそこに存在し、財政政策かあるいは減税という方法論が残される。いずれも、財務省が毛嫌いする施策である。

 

 コロナウイルス禍がどの程度で納まるかは、私には予測出来ない。少なくとも、中国政府の公式発表に依れば6万人近くの感染者がおり、8000人以上の重症者と1300人以上の死亡者がいることだけがわかっている。FOXテレビはその数が過小評価であると報道した(中国、新型コロナウイルス感染を少なくとも10万人過少報告 FOX - ニュース・コラム - Y!ファイナンス)。だが、既に日本には隠れて広がっていることは以前予想したとおりだし、あまり考えたくはないが医療崩壊を起こさない範囲で付き合う方法を考えなければならないと今でも考えている。少なくとも医療崩壊を起こさなければ、日本の公衆衛生状況は世界有数であり、日本での広がりは他国と比べると相当に低くできるのだから。

 ただ、現在の中国(特に湖北省)のような状態がアジアのいくつかの国に現れる様なことが有れば、世界的な貿易網が寸断されてしまうことは容易に予測出来よう。で、今は感染者数を少なく見積もる(あるいは掲出出来ない)ことが、中国のみならず世界的なトレンドであると見てるが、日本がクルーズ船のこともあり数を大きくしたことで、その縛りも徐々に解けてきそうな感じがしている(米医療専門家「数週間のうちに米国で感染者急増の恐れ」 早期対策促す)。そろそろ、日本よりも衛生状況が悪い地域での感染の広がりが見られ初めてもおかしくはない。

 

 日本での、感染源不明者が数名出たことがメディアでは大々的に報じられ(「見えない感染、国内でも」 和歌山の医師、ルート不明(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース)ネットでも愉快犯の悲観論が溢れているが、これは今月初めには容易に想定出来た内容であり騒ぐに値しない。政府の対応(特に厚生労働省厚生労働大臣)には不満と頼りなさを感じる面は確かにあるが、水際で完全に防ぎきることは当初よりそもそも不可能だったのである。時間稼ぎに失敗したが、むしろ行うべきは今後想定される感染者の受け入れ態勢確立である。まだ、クルーズ船や武鑑からの帰国者以外の感染者は、数えるほどしかいないのだから(UPDATE 1-日本国内で流行しているわけでない=クルーズ船の新型肺炎拡大で官房長官 - ロイター)。

 そして、同等以上に重要なのは景気の腰折れに対する対策である。一時的なショックはやむを得ないが、それをどの程度軽微に抑えることが出来るのか。そのために何をすべきなのか。私は世界的な蔓延を予測しており、それによる貿易の停滞を最も懸念している。というのも、日本はエネルギー資源を初め多くの素材を輸入に依存しているのだから、それを守のは何より重要である。そのキモは治療方法の早期発見であるが、同時に見つかるまでの問題抑制策が求められる。如何に傷を小さくするか。

 クルーズ船の対応が一部では非難されている様(“クルーズ船から直ちに下船を” イスラエルが日本側に要請 | NHKニュースクルーズ船の日本政府対応、米メディアが批判)だが、大臣の頼りない答弁や発言以外には、必ずしもあれ以上の方法が取り得たとは思わない。国内の受け入れ場所準備等を行うためにも数日は必要だし、密室空間における感染速度は想像は出来るものの未体験のことであった。逆に、その怖さは十分に見せつけられたと考えた方がよい(新型肺炎174人の集団感染「クルーズ船3700人隔離は正しかったのか」――医師の見解は? | 文春オンライン)。重症になった方々は大変お気の毒だし、厚生労働省の初動の鈍さ(検査試薬等の海外からの輸入を進めていない点も含め)は追求されるべきだと思うが、感染拡大期には過去の問題以上に今後のことにフォーカスすべきである。

 

 日本は、再びのデフレ深刻化を防ぐための対応を真剣に考えなければならない。