Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

アルバイトと序列化と難民

 近年の社会問題に、正社員になれずに契約社員やアルバイトといった非正規雇用が増大していることがある。この両者の給与格差は非常に大きなものがあり、特に大企業の正規社員は30代でも700〜1,000万の年収を得ている人が少なくないが、中小企業では300〜400万、アルバイトでは100〜200万円などという格差が明らかに表れている。独立して成功する人もいないわけではないが、それが常態化しているわけではなく多くの場合にはごく一部の物語に過ぎない。
 こうした社会格差は、家庭の生活環境が最も大きく影響すると言われているが、特に親の年収が大きな因子とされている。年収が取り上げられるのは、東京大学に入学する学生の親の年収が非常に高いという調査があるためでもある。年収イコール社会的地位ではないものの、親の社会的地位を背景に安定した職業に就く場合もあるだろう。

 さて、最近ではツイッターフェイスブックへの問題投稿が大きく取り上げられることも多く、各企業がそれにより被るダメージが少なくないことから、アルバイトなどへの教育が話題となっている(http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/131016/wec13101607000000-n1.htm)。そもそもアルバイトという非正規雇用は、正社員よりも安い給与で働く代わりにそれに応じて自由や責任軽減が想定されるものではあるが、あくまできちんと働く(あるいは多少の問題はあっても企業に損害が及ばない)ことを想定したものであろう。どちらにしても様々な雇用制限を受けずに済むという意味で、企業は労働者を便利に使えるという利点がある。逆にアルバイター側からすれば、多少の労働力を提供することで高くはないが一定の対価をもらうという気楽さがそこにはある。もっとも正職員になれなくてやむを得ずアルバイトをする人と、当面の小遣い稼ぎでアルバイトを行う人の間にはかなりの意識差があるものと想像される。
 ここにきて(というかおそらく以前よりあったのだろう)ツイッターが「バカッター」などと呼ばれるように、社会的責任を一切考えない問題投稿の温床とされて脚光を浴び始めているが、企業とアルバイターの両者がともに抱く気軽さの代償として、こうしたことは当然起こり得ると考えるのが妥当であろう。

 さて、企業がアルバイトの教育に力を入れ始めるということは、アルバイトに求められる質がそれだけ向上するということになる。東京ディズニーランドなどではアルバイトの質が高いと評判であったりするが、これは正社員になりたい人と同じようにモチベーションが高いからこそ言えることである。しかし、世の中の大部分のアルバイトは高いモチベーションを持っているわけではない。
 また、元々企業側がコンビニエンスに人材を求めた結果がアルバイトという非正規雇用なのだから、そこに高い倫理観を常に期待できるかと問われれば大いに疑問が残るところである。逆に言えば、こうした倫理観は常識的なものではあるが個人的な資質による部分が大きく、教育により多少のフォローはできるかもしれないがそれに応じた報酬が支払わなければ長続きしがたい。先ほどのディズニーランドの場合のように報酬が自らも楽しむことにある場合(あるいは正社員になるというモチベーションがあるなど)には問題ないだろうが、それを全ての企業に望むのは難しいだろう。

 結果として何が生じるのか。一つには、アルバイト採用時点での面接等が非常に厳格になるという可能性が高い。こうした厳格化は比較的人気の高い企業において早期に導入されることとなる。序列化というほどではないかもしれないが、企業イメージがより良いアルバイトを集める上で役立つかもしれない。
 逆に採用時点で締め出されるような人たちは、容易に採用されるアルバイト先に集中することになる。現時点でも似た傾向はあるのかもしれないが、選択肢の減少は最終的に希望通りのアルバイト先すら見つからないアルバイト難民を生み出すことにもなりかねない。
 現実にはアルバイトとは言えども雇用の需給関係に基づくので、労働者の不足があればアルバイト先は見つかりそうなものだろうが、私は企業がリスクを冒すよりは無人化を進める方向に進む可能性も少なくないと思う。ビジネスホテルでも、完全なる無人は少ないものの人員を大きく減らすことにより人件費の節約を果たしている。

 アルバイトのラストリゾートがコンビニなのかどうかはわからないが、そのうち無人コンビニが登場するような時代が来るとすれば、アルバイト難民は溢れることになるだろう。