Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ロイズと韓国

 なぜ、このような情報がここにきて流れているのかはわからないが、ここ2週間ほどの間にネット上で再保険会社のロイズ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%82%BA)が韓国の船舶保険を全て拒否しているとの情報が流れている(http://j-123.iza.ne.jp/blog/entry/3187573/)。今のところまともなメディアソースも存在せず、そもそも当のロイズにはそのようなアナウンスメントはない。今後情報が出てくればはっきりするのかもしれないが、少なくとも現時点ではそれが事実であると言う証拠はどこにもない。既に関係業界の人は知っているかもしれないが、今のところその情報らしきものもネット上では見かけない。
 ただ、このような噂が出回る下地があるため経緯を知っていれば納得できるというのが何とも悩ましい。おさらいのために書いておくがその経緯は6年前(2007年12月)に遡る。

Hebei Spirit号原油流出事故(http://ja.wikipedia.org/wiki/Hebei_Spirit%E5%8F%B7%E5%8E%9F%E6%B2%B9%E6%B5%81%E5%87%BA%E4%BA%8B%E6%95%85)

 韓国司法の常識のなさと言うか我田引水ぶりは誰よりも日本が一番よく知っているのだが、この状況は何も対日本オンリーではない。上記の自己の責任も、通常考えれば明らかに韓国船舶の一方的なルール違反が理由なのだが、これを一部であるがインドタンカーの責任に擦り付け船長はじめ数人の船員を長期拘束した(約1年半)。賠償金も当然一部がインド船舶側にされてしまい保証人である中国船主責任相互保険組合(中国P&I)とスクルドP&Iが負担するとされている。なお、中国船主責任相互保険組合はサムソン重工業に賠償請求をしていると伝え聞いているが、その後の状況はわからない(約2億ドルと言われている)。
 この問題には保険組合世界最大のロイズは当時非難声明を出していたが、保険料率のUPについては明言していない。ネット上では一時的に韓国への船舶にリスクプレミアムをかけていたと言われていたが、これも明確ではない。ただ、韓国の船舶再保険の利率は日本と比べて著しく高い。保険料率は公表されていないが、保険料取引の中で船舶の占める割合が明らかに韓国の場合日本と比べて高いので想像でなくもない。(http://www.lloyds.com/~/media/Files/The%20Market/Tools%20and%20resources/New%20Market%20Intelligence/Country%20Profiles/Asia%20Pacific/kr_mi_2013_05_31_Country%20Profile.pdf

 今回の件では、一部では韓国においてロイズが直接保険を受けていないことをもってロイズが拒否と書いているところもある(http://www.nikaidou.com/archives/40420)が、基本的にアジアではロイズの業務の大部分は再保険であって直接保険の割合はかなり低い。確かに日本では直接の保険引き受けも行っているが、現時点では再保険の1/20以下に過ぎない。
 とは言え、ロイズは元々互助組織であって実際には保険引き受けを行うシンジケートとコーディネイト等を行うブローカーにより構成される(法人であり各種の自主規制は保有するが、支払いは原則としてシンジケートを構成するエージェントにかかる)。そのため、こうしたシンジケートが韓国に関わる再保険引き受けを実質的に拒絶するということはあってもおかしくはない。
 組織の形態からしてアナウンスメントをするかどうかはよくわからないが、ロイズが引き受けてくれなければ入港拒否などの不利益を被るのも事実であろう。仮にそのような状況になった時、韓国政府がどのような措置を取れるのかについて詳しいことは専門家ではない私にはわからないが、政府が無限責任を引き受けるしかないのかもしれない。

 しかし、このような情報が今出てくる理由についても少々勘繰りたくもなる。ぐぐった感じでは、9/4に2ちゃんねるでこの情報の書き込みがあったのが最初のようだが、これもその元をたどることはできなかった。上記の事故は2007年に発生し裁判は2009年頃まで行われた。その間にインドとの間にボイコットなどの国際問題が生じ、一時的には釜山港海上封鎖が行われたなんてデマも流れていた(http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1231161034)。
 今回も、韓国では一部の例外を除き保険の直接引き受けをしていないという2009年のアナウンス(http://www.lloyds.com/the-market/communications/regulatory-communications-homepage/regulatory-communications/regulatory-news-articles/the_south_korean_market)が引き合いに出されている感じが強い。

 今後追加で情報が出てくるかもしれないが、きちんと情報の真偽を見極めていきたいものである。