Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

日本恐し

 ここ数年中国や韓国の日本評がかなり先鋭化してきている。軍国化がどうこうとか日本は世界から孤立するとか結構見ていて勇ましい言葉が躍っている。でも多くの人が既に感じているであるだろうが、これらの言葉の威勢の良さは日本の不誠実さを糾弾するというよりはむしろ日本に対する恐怖が根底にある。もちろん、日本が意図をもって恫喝しているわけではない。
 恐怖の一つには、近づきつつあった日本との距離が再び開くのではないかという経済的・技術的な恐れがあり、こうしたヒステリックな言動を引き起こしている。そのためにはどんなことをしても日本の成長や発展に歯止めをかける必要がある。しかし日本を停滞させる効果的な方法がそうそうあるわけでもないので、日本を国際的に孤立させようという動きの一環としてある。もっとも、その戦略が上手くいっているとは言い難い。
 そして、もう一つは歴史的な恐怖感がそこに輪をかけている。中国政府は決して認めることがないが、戦争において日本に真の意味で勝ったとは全く思っていない。別にそれをもって日本人が強いとか日本が偉いなどということは全くないしそれが言いたいわけではないが、彼らは心の奥底でそれを恐れているのではないかと思う。だからこそ、日本に勝つということを何よりも重視し、あるいは日本が再び勢いを取り戻そうとすることを何よりも畏れている。そして、日本が再び力を取り戻したときに日本が彼らにするだろうと思うことを想像(この想像はえてして自らの願望の裏返しでもある)して、理性的ではない言動に走ることになるのだと思う。日本が軍事的な野望を持っているという認識は、力をつけた日本が再び自分たちに襲いかかるのではないかという恐れから発生しているのだろう。

 つい先日も日本のイプシロンロケットの打ち上げ成功に対して、中国メディアはこぞって軍事利用(ICBM:大陸間弾道弾)が隠された目的だと主張した(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0916&f=national_0916_006.shtml)。事実のみを言えば、確かに中国の報道が間違っているわけではない。原発は原爆の基礎技術を生み出すし、ロケットはミサイルの根幹技術を作り上げる。それのみでは機能しないかもしれないが、複数の技術を組み合せば不可能ではない。
 ただ、それはあらゆる技術について同じようなことが言える。農薬散布用の無人リモコンヘリは無人攻撃機に容易に改造可能だし、工業用加工レーザーは出力を上げれば兵器となる。極論を言えば、小さな刃物や針さえも武器として使えば危険な存在に変身する。
 結局、難癖はどんなことに対しても付けることは可能であり、最も需要なのはそれを間違った方向に利用しないという普段からの信用が全てなのだ。日本人は、戦後こうした技術を間違った方向に使わないための努力を続けて来たし、現時点においても世界の中でも有数の不戦論の国である。日本の技術に難癖をつける国家の方が、何倍も好戦的で恫喝的であるというのはおそらく本人たちには意識できていないのであろう。
 もっとも、同じようなことは別に中韓に限らず発生している。アメリカの一部メディアもその通りだし、ヨーロッパのメディアでもそのように捉えるところがある。この場合の恐れは日本そのものが怖いというものではないだろうが、自らの作り上げてきた歴史を守りたいという意味ではあるようにも思う。

 どちらにしても、中国や韓国などの国々の言説が真の意味で公平でかつ普遍的なものであるとすれば、日本に顧みなければならない面は多々あるだろう。もちろん、それがなくても日本という国はかなり自国のことを振り返りチェックしている方だと思う。テレビ番組で数多く日本人の海外からみれば奇妙に見える行動を取り上げたりしているが、その時に海外からみて感心される行動がバランスよく取り上げられるわけではない。むしろ、自虐的とも思えるほどに日本人であることの可笑しさを強調する。
 まあ、単なる娯楽番組であるのだから目くじらを立てるほどのものではないが、いわゆる自虐史観と呼ばれるものは何も歴史認識そのものではなく、現実の自分たちを少し低く見做すことで世界をうまく立ち回ろうとする方法論とも言える。
 民主主義国家において自虐的(得てして左翼的)思想が社会において広く受け入れられるのは、国家経済が成長を実感して国民全体が豊かさを感じ始める時の方が多い。それが停滞しあるいは衰退する時には自虐的な姿勢は、むしろ現実を想起させることで受け入れがたくなる。日本の場合にも、日本の成長が突出することで欧米からのバッシングが強まった時期ともリンクしているのではないかと思う。

 問題は、こうした自らを低く見せる戦略は世界的に日本が突出しているときには対欧米という意味で一定の効用を発揮するだろうが、そうではなくなった今は欧米に対するメリットはなくなり、逆に中韓に誤った認識を持たせるというデメリットが目立ち始めたことであろう。
 ただ、彼らの尊大に見える態度も自信によるものでないことは明らかである。むしろ、自信がなく日本を恐れているからこそ余計に大きな態度を取ろうとする。自分が上位であることを形や言動で誇示しようとし続ける。
 日本としては、中国や韓国が本心では日本を非常にそれていることをきちんと理解した上で、接することが必要であろう。