Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

救急車有料化

やや旧聞になるが、昨年山形市において大学生が体調不良から119番に電話したものの、緊急性がないと判断されそのまま亡くなられたという事件があり、今年に入って様々な情報が出てくるような状況になっている。
争点は、電話における対応が適切であったかどうかとされているが、最も根が深い問題は救急車の常識外の使われ方がある。山形市が、救急車出動基準を初公開(http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/yamagata/news/20120828-OYT8T01378.htm)、消防局との電話内容(きゃんつくばっと:http://kyantsukubatto.blogspot.jp/2012/07/119.html)。

大部分の人は救急車をタクシー代わりに使うなど考えも及ばないだろうが、一部の人たちが緊急性の低い状況でも救急車を呼び出しているという事実があり、その結果重篤な患者のために手が回らないという問題があるのだ。その点に関しては以下のニュースが詳しい。
増える救急車出動/有料化は必要か(四国ニュース:http://www.shikoku-np.co.jp/feature/tuiseki/306/
要するに、一般的なマナーや常識が守られていれば、現在のまま無料の公共サービスとして成立するのだが、現実にはそれが守られないようなケースが増えたからこそ、救急車利用の有料化の議論が出ている。ただし、救急車利用の有料化については次のような理由により根強い反対意見があるのも事実である。
・貧しい人が緊急時でも尻込みしてしまうと言う意見
・他人のために救急車を呼ぶことが難しくなるという意見(誰がその費用を負担するのか)

そもそも最初に掲げた電話対応の問題は、こうした明らかにマナー違反の救急車出動要請に対して想定されているトリアージhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B8)の導入が関係している。元々は大規模災害などから生まれた緊急医療の概念の準用ではあるが、状況の発生に対して緊急性がないと判断すれば問い合わせとして処理して病院等の紹介をするなどで、不要な救急出動を避けるというメリットがある。
ただ、今回の事件に関して言えばそれが裏目に出たと言えなくはない。大量の怪我人などが発生しているという状況ではなく、不要な緊急連絡を取り除くという目的で用いられている判断が、結果的に救急車の必要な人にそれをあてがえなかったと言うことだから、なんらかのマニュアル変更などの検討が必要なのは間違いない。判断基準に遺漏があったと考えるべきなのだから。

ところで、救急車の有料化については医療従事側からは賛成の声が非常に高い。既に欧州では導入されているらしいが、欧州の例では1回数万円と言われている。仮に導入するとしても費用をどの程度にするかは、不要な通報を減少させてかつ必要な人が躊躇することがないようにする必要もあり非常に大きな問題となる。
あるいは原則有料化で、無料ケースを定義するという方法もある。事後に緊急性のなさを検証し、その結果をもって料金を徴収するという意見もあるが、緊急性の判断に様々な相違が出るだろう事(トラブルのみの増加)を考えればやはり原則有料化で事情を勘案して減額若しくは無料化という方が妥当性が高い。
あるいは別の方法としては、住民税に加えて徴収する仕組みがないだろうか。収入が少ない人は住民税の課税時にわかるのだから状況に応じて減額(あるいは減免)すればよい。
私も経験したことがあるが、道端に人が倒れている時に救急車を要請したことがありこの場合は本人の意思とは別に救急車が要請されたことになる。ただ、医療行為でも意識を失うなど倒れた人がいれば行われるわけだから、救急運搬も同じだと考えれば通報者ではなく移送者が支払うことは変なことではない。

以前よりいたずらや緊急性の低い救急車要請は、違法駐車の増加による救急車到着時間の遅延問題と共に社会問題となっていた。行政側のみの改善により対応しようとするならば、上記のようなトリアージの対応により効率化を図るしか方法はないと思うが、その結果どうしてもいくつかのパターンにおいて必要な人が救急車を利用できない事態に陥ることは起こりうるであろう。
救急車の有料化は、一部の市民などに根強い反対があるのはわかるし、そもそも有料化を決めることは地方議会などにとっても地方自治体にとっても無料が有料になるため反対論が出ることがあり、躊躇することはわからなくはない。
ただ、トリアージのみでは救いきれない緊急救命を期するとすれば、やはり有料化は避けて通ることができない問題だと私は思う。できることなら今後の議論が活発に進み、よりよい方向に流れができることを望みたい。