Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

肩すかしから共食いへ

ムーディーズ、韓国国債を格上げ 日本と同じAa3に(朝日新聞http://www.asahi.com/business/update/0827/TKY201208270453.html

別に韓国の国債には価値がないなどと言うつもりもないしそれをこき下ろすつもりもないが、この報道を見て最初に思ったのは「嵌め込み」という言葉であった。欧州ソブリン危機などにより格好経済は低迷している。貿易額は減少し、中国では在庫の山が積み上がっている。韓国も輸出減少のあおりを受けて経済の風向きは良くない方向に動いているし、アメリカも多少マシとは言ってもリーマンショック前と比べると株価のみは回復しているが実体経済は悪いままだ。失業率は最悪期の10%は割ったものの8%を下回る事は叶わず、標準的な数値である4〜5%にはとてもではないが届きそうにない。
にもかかわらず、世界の株式市場ではリーマンショック後の高値を取っている。それは各国の中央銀行がお金を金融機関にばらまいていることも大きく影響しているが、逆に金融機関以外のマインドは低調なままである。だから、株価は高値を取っているものの出来高は非常に低い。要するに、参加者が極端に少ないため金融機関同士がつるんで株価を上げていると言ってもあながち間違いではない状況になっている。
加えて、景気回復に対して財政政策を縛られている各国政府はむしろ出来レースとは言えども株価上昇を好ましく思っており、現状を否定するような気は毛頭無い。むしろ金融機関が収益を上げてくれる事は自国経済を安定化させるためには好ましいとさえ思っているのであろう。すなわち消極的な各国政府の対応を後押しにして、出来レースのような株価の高値維持は今もって続いているというわけだ。

もっとも経済も株価も循環する。要するに自己売買(正式には少数による売買)のような状況で株価を上げていったとしてもいつかはそれを売却して、実の利益を上げなければならない。その時期がいつ頃になるのかは専門家でもはっきりとわかるものでもなかろうが、少なくとも現在自己売買に勤しんでいる大手金融会社は何らかの想定をしているものだと思う。
そして、売り抜けるためにはそれを買ってくれる(損を押しつけられる)存在がなければならない。先ほども少し触れたが、現状株式市場において株価こそは上がっているが出来高は低迷したままだ。出来高について言えばリーマンショック前から比べれば半分近くに落ち込んでいる。それは参加者が減ってしまっている、すなわち高値で買ってくれる人が少なくなっていると言うことでもある。しかし、現実には誰かに押しつけなければならない。とすれば、最初に行われるのが株が儲かるや投資環境が改善したなどの情報の氾濫による株式市場活況策であろう。
ただ、ネットによる情報の広がりはそんな宣伝の嘘を容易に暴くし、そもそも現在の経済状況を見ていればその言葉を信じる人が多く現れるとは思わない。通常であれば現在のような金融相場の後には実際の景気が上向く実態相場が来るものではあるが、世界中の政府が財政の壁により実態の景気回復に手をこまねいている状況下では期待できるものでも無かろう。だから、おそらく今回の嵌め込みは不発に終わる。
もちろん、ギリギリまで様々な演出が為されるであろうから、目を引くように株価は極端な上昇を見せるかも知れないし、嵌め込みにはじっくりと時間をかけるが故に落ち着いた動きになるのかもしれない。格付けも今回のように予想外に上昇するものも出てくるであろう。おそらく採れる方法は総動員されるが、正直それほど効果があるとは思えない。

その結果何が起こるか。それこそ金融会社同士の仁義なき戦いである。損失を何処に押しつけるか。すなわち株価は乱高下する。そもそも現状の株高は、財政支出ができないが故に金融関係にお金をばらまいていると言ったようなものである。それはイコール株式などの世界のみインフレになっている(株式におけるお金の価値が下がって株の価値が上がっている)ということだ。現実世界では生産過剰がデフレを引き起こしているにも関わらずである。そのギャップを埋める動きがいつかは世界に広まるであろうが、可能性として高いのはデフレ側に近づく方向すなわち株式市場の低迷となるのではないかと思う。それを受けて金融会社はもの(原油や金、食糧その他のコモディティ)へとお金をシフトしようとするだろうが、それはすなわち一般庶民の生活を極端に脅かすことになり各国政府が容認を続けることはできない。加えて、実体経済におけるデフレは生産能力をじりじりと奪う現象であるため、時間が経つほどにものの価値が下がってしまう。本来ならお金が増えればインフレに向かうものではあるが、現状においてお金が金融村のみにしかばらまかれていないことで、実体経済のと極端な乖離が生じているのだから。
まさに共食いとも言えるようなこれらの動きがいつ生じるかは予測しようもないが、そう遠い話ではないように感じている。