Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

嘘つきの定義

嘘つきとは言ってもいろいろ存在する。
常に嘘ばかり言い続けている人は、狼少年ではないがもう誰も信じてくれなくなる。これは、嘘つきとしては非常にレベルが低い。嘘を本当と信じ込ませるのが嘘つきの目的だと仮定すれば、嘘を嘘だと見破られる訳だから目的を全く果たしていない。ついでに言えば、本当のことを言っても嘘とみなされてしまう。直近のわかりやすい事例で言えば、意図的ではないのだろうが結果的には鳩山元総理がこれに近い。だから、誰も彼の言葉には耳を傾けない。中には傾聴に値する話があるとしてもだ。

ところが、嘘つきでもレベルが高くなってくると真実を多く語る。真実により誤魔化しておいて、最も肝心なところに嘘をつく訳だ。その肝心な部分を嘘だとは思わせないように様々な手を嵩じて真実味を深めていく。最初から疑っていなければ、その真実味に多くの人は騙されてしまう。
詐欺師などは、基本的にこの手法を用いる。最初のうちに小さな真実を多く振りまく。できればその真実は当たり前のものではなく、あまり人の知らないものの方が良い。さらに言えば、真実か嘘かを即座にあるいは容易に判定できないような事象をそこに加えることが多い。
真実+曖昧によって、大きな枠となる印象を形作るのである。その曖昧さには人の興味を引くものを用いる。人は自分が興味のあるものには疑念を抱きにくい。宗教などの勧誘もこうした点を突くものが多い。ヨガであったり、気功であったり、それそのものには真実があり、そこに更なる神秘性を曖昧な存在として加える。すると興味があるものにとっては非常に好条件の素地が形作られる。
あとは、その真実の殻の中に壮大な嘘を注ぎ込んでいくのである。そして、嘘こそはまさに興味の対象をそのものを当てる。真実の殻にほころびが生じなければ、その嘘はよほど無茶なものであっても受け入れられてしまう。

この場合、そこに用いられる真実はあくまで飾りである。その真実性などどうでも良い。きっかけを与える道具なのだ。あなたは、この分野に凄く興味がありますよね。。。と。
人が自分の興味にどっぷりと嵌り込めば、嘘を見抜く能力が著しく低下する。嘘つきとは、人が欲しいものを欲しい形で与えるのだ。ただ、その欲しいものは飾られた偽物であると言うだけである。

だとすれば、自分のためにつく嘘は嘘と言うよりは他人に対する誤魔化しなのだと思う。もちろん自分のために嘘をつく人が世の中の大部分を占める。それは自己正当化であったり、安心のためであったり、結局は自己を包む現実から目を逸らそうとするものに過ぎない。それも嘘であることには違いないが、他者をターゲットにして嘘をつくものとは意を別にする。
本当の嘘つきは、相手が欲するものを与えそうで与えず操作する。そして、どうしても我慢できなくなったときに最後の嘘をついて逃げるのである。

さてなぜ長々とこんなことを書いてきたのかと言えば、マスコミや政治家を今まで考えてきた内容に当てはめてみようと思ったからである。
多くのマスコミは、見事なまでに嘘つきの定義に当てはまりそうである。ただ、どちらかと言えば煽動すべき報道内容は多くの人は望まなくても一部の人が望めばそれでよいようだ。だとすると、情報が寡占化されていた時代においては嘘つきそのものであったが、現状では自分のために嘘をつく側に回り始めたと言うことか。だから、今ではマスコミが信じられなくなりつつあるのだなと思うと意外なほどに得心できる。
そう考えると、マスコミはまだ自分では気づいていないが既に狼少年なのだ。

この状況は、政治家においても似ている。一部の政治家達は、国民を誘導するという嘘つきを見事に演じていたのだが、今の時代ではそれが見透かされ始めてマスコミと同じように狼少年化が進行している。その認識は政党レベルに広がっているため政党離れが生じているし、橋下新党などがその受け皿になっている。

一度狼少年に認定されてしまえば、現実的にはそのままの姿では国民の認識を変えることは決してできない。だとすれば、姿を変えるしかない。国民から新たに信用を得るのは、マスコミにしても政治にしても姿を変えなければもう無理かもしれない。あるいは、それを知るものが大きく減るまで息を潜めておくかである。そう言う意味で、民主党毎日新聞も信用を取り戻すことはおそらくもうできまい。

「嘘つきが全て悪い訳ではない。嘘になるのは夢が叶わなくても同じ。ただし、夢を実現しようとしてついてしまう嘘はしっかりと見極めた上で寛容でありたい。」

(追記)
本物の嘘つきは、実は嘘をつかないのかもしれない。嘘をつくことなく相手に信じ込ませる。おそらくそれが真の意味でのプロ。