Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

欧州はフーバーの轍を踏むか

ギリシャ問題はまるで山を越えたかのような雰囲気があり、FRBに引き続きECBによる大量ばらまきもあって世界の株価はかなり上昇した。日本のみは円高に加えて東日本大震災の影響もあって低迷しているが、それでもここ最近はかなり上昇している。
どうやら、ばらまき資金の提供をうけた金融機関達は今のうちに一儲けを企み、大きく動いているようである。日本は様々なトラウマから積極的な動きを出来ないことが出遅れに現れているのだろう。アニマルスピリットが不足していると言えるが、同時に今この時期に積極的に打って出た方がよいのかどうかは悩ましい問題でもある。

さて、欧州は財政規律の強化について大きく一歩を踏み出した。主には、ドイツがそれを主導しているが、欧州の金主であるドイツのご機嫌を損ね無くないために、ユーロを導入していないイギリスとチェコを除いて各国がこの協定にサインをした。あとは各国国内の議会承認を得るのみである。
とは言え、欧州は北欧とドイツなどの一部の国家を除いては凄まじい不景気に遭遇している。スペインの失業率は23%におよび、ギリシャ格付け機関からデフォルトと認定された。これらの国々の民間企業活動が大きく停滞している。こんな時に、政府の支出を絞れば国はさらに荒廃していく。早速耐えきれずにスペインは協定合意内容の財政赤字の許容範囲を、自国の都合で勝手に緩和する動きを見せている。
こうした事例は歴史においても明らかな話であって、アメリカの大恐慌を引き起こしたと言われるフーバー大統領は、不景気時にあっても政府の介入は最小限であるべきと言う古典は経済学の理論を実践したため、アメリカを大変なデフレ(恐慌状態)に追い込むこととなった(wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC)。

現実の経済は民間経済が如何に効率よく回っていくかが重要であり、暴走すればバブル、停滞すれば不景気と暴れがちのそれを政府が出来る限りコントロールしていく必要がある。すなわち、民間需要がないときには政府がそれを補完していくことは非常に重要なことでる。
フーバーは、それを時間が来れば自律的な景気回復があると信じてむしろ政府財政の健全化が景気には好影響を与えると信じて行動した。これにより恐慌状態を悪化させた結果は、その後の大統領となったルーズベルト(最近は、ローズベルトと呼んでいるらしいが)ニューディール政策などの巨大な財政支出を経なければ回復できなかった。ちなみに、ニューディールでも完全な回復は出来ずに第2次世界大戦という巨大な需要により景気が回復したのだと最近では言われている。

さて、現状の欧州はスーパーマリオブラザーズと呼ばれる一人であるECBのマリオ・ドラギ総裁は積極的な紙幣のばらまきを、FRBバーナンキの後を追うようにはじめている(もう一人のマリオはイタリアの首相に着任したマリオ・モンティ)。
だから、金融政策としては大恐慌時とは異なって政府系の資金が流し込まれているので、見かけ上は悪く見えないかもしれない。ただ政府支出は抑制されたままなので、財政政策は実質的にほとんど打てずにいる。すなわち、金融機関などにはお金が潤沢に供給されるが、一般の経済活動を行う企業や国民にはあまりお金が回らないと言うことである。
ドイツのメルケル首相などが主導するこの財政規律強化は、実際にはギリシャやスペインなどにドイツからの資金援助を少しでも減らそうとした意図によるものであるが、その状態を維持できなければ却って経済の大きな落ち込みを導き、欧州全体の景気を悪化させる。

それでもドイツが強気なのは、ドイツの独特のポジションがある。それは、ユーロが安くなれば欧州外への輸出により外貨を稼ぎ、ユーロが高くなればユーロ圏内への輸出でカーバー出来るというものである。ギリシャあたりが苦々しくドイツのことを悪し様に言うのはこのことがあるからだろう。ドイツとしては、ユーロが安くても高くてもやっていける。
しかし、それがドイツ一国の問題ではなくユーロ全体としての問題ととらえれば、そう簡単ではない。一時的にはドイツの逃げ道はあれど、不況が深まれば結局逃げ切れるものではない。
ましてやそれが世界に広がるようなことになるならば、欧州発の世界恐慌を引き起こしかねない。
ちょっと陰謀論めいた話にはなるが、最近日本発の世界恐慌なんて話がぼつぼつと見られるようになってきた。日本国債が暴落して、世界を恐慌に巻き込むというのだ。おそらく日本は、欧州やアメリカよりも(ましてや中国よりも)経済的には強い。日本発の恐慌など通常考えればあり得ない話ではないが、いざというときにそう言いくるめるために動いている人がいるのではないかと勘ぐりたくなりさえする。

どちらにしても、現状の欧州はフーバーの轍を踏みつつあるように見受けられる。さて、今後上手く舵を切れるのであろうか。

「中国も実質的には相当苦境に立たされているのだろう。軍事的な強硬路線はその流れの下に存在する。」