Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

電子書籍の次の展開を読む

徐々に広がりを見せている電子書籍であるが、先日はamazon社が日本の出版社に向けて提示した電子書籍サービス(キンドル)の契約内容が衝撃的なものとして報道されていた。(asahi.comhttp://www.asahi.com/culture/update/1107/TKY201111070686.html

あくまで個人的な意見として言わせて貰えば、目に優しくなったとは言え現時点ではまだ電子化されていない紙の本の方が現時点では読みやすく感じている。もっとも、技術的な進化はこうしたギャップを僅かの時間で埋めてしまうであろうとも思っている。
仮に、文庫本などよりもかなり安い価格で電子書籍が出回るとすれば、それは徐々に展開していき、あるとき一気に広がるのではないかと思う。

さて、今後飛躍的に電子書籍の発展があるとすれば、紙の書籍とは明らかに異なったメリットが加えられる必要がある。
この点について、素人ながら少し想像を広げてみたい。

まず、現時点では小説などが中心となっている電子書籍ではあるが、それは取り扱いが容易であるという面が先行しているように感じている。しかし、今後は小説だけではなく雑誌関係もどんどんと電子書籍化されて行くだろう。現状の白黒画面のキンドルでは不可能な話だが、アメリカでは既にカラー画面のキンドル・ファイアが発売されており、雑誌や音楽・映画まで見たり聞いたりすることができる。現時点では性能や使い勝手に問題があるようだが、今後も改良が為されれば日本でもその普及は時間の問題だろう。(Amamoba:http://www.amamoba.com/pc/amazon-jabook.html

なぜこんな話をするかと言えば、実のところ雑誌の電子書籍化は新たなビジネスを展開する上で非常に都合がよいのである。それは、広告との連動が絶大な効果を生むからに他ならない。
もちろん、雑誌とはいえど様々なジャンルのそれが存在する。論壇系もあれば、小説読み物系もあり、ファッション系もあれば、ミリタリー系もある。ただ、その系統の雑誌を購入する人には少なくともその専門に関する興味が高いのは間違いない。だとすれば、こうした雑誌と連動する形での広告提供はまさにピンスポットな効果を発揮する。

各雑誌もWEBサイトを有してはいるが、こちらでは収益モデルが明確にはなっていないため、記事などを掲載しすぎてはかえって実雑誌の売れ行きを下げてしまう危険性がある。しかし、電子書籍として販売すれば書籍としての収益を確保した上で広告とのダイレクトな連動を可能とできる。同時に、システム上の対応さえできれば広告を出す企業としても雑誌記事から直接自社のサイトへのリンクによる誘導が可能となり、様々な展開が可能となる。そもそも、最初から非常に高品質なデータが取得できると言うだけでも企業にとって意味があると思う。
さらに言えば、電子書籍のプラットフォームを提供する企業(上記の例で言えばamazonなど)は、ituneやiphoneのアプリの様に各雑誌社が書籍を提供することで定期的な利益を得ることも可能となる。そして、電子出版の容易性から各種タウン誌や地域情報紙なども提供ができるようになるだろう。このあたりは、プラットフォームの作り方次第であると思う。

とりあえず、現状の小説などの単行本のダウンロードや新聞情報の頒布とはレベルの違った大きな市場が広がると思う。

また、利用者の方も電子書籍の様々な言葉についてリンクが張られることで、言葉の意味から実物の写真まで容易に得られるとすれば、知識の取得や情報源へのアクセスが容易になるというメリットもある。電子化された小説の最後には、様々なキーワードに対する索引が設けられそれはネット上の関連情報にリンクしている。
こんな風にキーワード検索などがその場でできるとすれば、現状の小説や記事などの書き方も今以上に変わっていく可能性は高い。当初から情報リンクを意識した内容となったり、あるいは小説などで挿絵として一般の人が書いたものがポップアップで表示されるなど、読者参加型の展開の可能性がある。テーマソングがネット上で作られ、ボーカロイドが歌ってしまう。。。なんて広がりも考えられるのだ。そこには、新たなバーチャルコミュニティが発生する。
もしその小説が大きな人気を博してドラマ化や映画化が為されたとき、その提供された挿絵や楽曲のうち、投票によって採用するものが決まる。。。なんてこともあるかもしれない。

現実には、海賊版・違法コピー問題といたちごっこになる可能性は否定しがたいが、海賊版には提供できないようにアクセスの制限をかけたり、または高度で便利な仕組みを新たに展開する電子書籍に組み込んでしまえば対処のしようもあるように感じる。

さて、現実の開発現場ではすでに私が想像しているレベル程度には進行しているのかもしれないが、こんなことを考えてみるのも悪くはない。少なくとも、出版業界はまだまだ大きく変わりうると思う。

「作者がストーリーを作り、読者がそこに味付けをする。読者が作り手の一人として参加するときに、どんなコラボレーションが見られるか。少々楽しみである。」