Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

維新分裂

橋下氏が新党結成を表明 維新分裂、野党再編は加速へ(http://www.asahi.com/articles/ASH8Y04CTH8XPTIL03J.html

 別に驚くような話ではない。橋下氏が政治家を引退するかどうかには正直興味はないが、維新の党急速拡大における過程であまりに主張の異なる政治家たちを取りこんでしまったことを悔いているということであろう。維新の党は、前身の日本維新の会(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B6%AD%E6%96%B0%E3%81%AE%E4%BC%9A)が党勢拡大を目指し民主党みんなの党の離党組を取りこみ、さらに太陽の党との合流を果たしている。この段階で第三局としての存在感を確保し、旧民主党組にそこまでの力を持たせていなかったため橋下・石原共同代表の段階では一定の勢力を得るに至った。
 ただ、その後橋下氏の政治姿勢のブレなどもあり石原氏をはじめとする旧太陽の党組が分離、さらにみんなの党を割った結いの党との合併により維新の会(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B6%AD%E6%96%B0%E3%81%AE%E4%BC%9A)として国政における規模の維持を図った、というか図らずにはいられなかったということであろう。

 政治における一つの局を目指す上では、組織規模が重要であることは間違いない。混濁併せ持つ度量が何より重要であるが、同時に多くの議員を一つの方向に引っ張っていくリーダーシップが求められる。自民党は長い歴史の中でその調整方法を身につけてはいるが、民主党やその他の政党は十分な調整能力を有していないように見える。
 果たして、維新の党も同じような道をたどっている。野党連携における考え方の違いが顕在化し、結局袂を分かつこととなったようだ。私が見るに、橋下氏は非常に強いリーダーシップを有しており政治家には向いていると思うが、同時に人を見る目があまりなく話題性を中心に選んでいるような感じがしている。
 本来政党の執行部は、自分と同じような考え方の人間を主体に配置するべきであるが、それすらも選挙責任というパフォーマンスと大阪に集中するという考えにより投げてきた。だから、政党が自らが思う方向と大きく異なっていくのはある意味で当然のことであったと思う。これまでそういう人たちも受け入れ、そう言う人たちに舵取りを任せてきたのだから。

 ただ橋下氏を巡る状況を見ていると、「平和である間の日本では独裁者は生れ得ないのだろうな」という感想を強く抱いたりもしている。一部には安倍総理が独裁者などというレッテルを張ろうと必死になっている者たちもいるが、正直言ってそう見えることを懸命に防ごうとしているように感じている。
 橋下氏は現代においてカリスマ性を有する政治家の一人だと思う。もちろん、その強烈な個性故に敵も少なくないが、東京都における石原氏と同じような立場を得ている。大阪都構想こそは実現しなかったが、関西では今後も人気を誇るであろう。ただ、この失敗を乗り越えるためには橋下氏が意見を同じくするよきメンバーを集めるだけの度量を持たなければならない。

 彼は、自分の力(ディベート能力)が誰よりも高いことを持って常に自分が先頭に立って政治戦争を戦ってきた。もちろんそれにより一時的とはいえ国政における一極を確保するに至った。要するに、中世の国取物語だと考えれば話は分かりやすい。
 勢力を拡大しようとするほどに多くのことを任せられる腹心の部下が必要になるのだが、それを外様により賄おうとし続けてきた。もちろん身内にそれだけの力がある政治家が少ないことが理由であるが、近づいてくる外様は自分の思惑を重視しているのだからそこに任せても橋下氏が思う動きにはなりはすまい。
 橋下氏の苛烈な印象は、有能な人間を必ずしも引き寄せず利を狙う者たちばかりを引き付けてきた。実際、明らかに無能だと思える人間を顧問や参与として呼んでいるのを見れば、同じような者たちが引き寄せられるのは自明の理であったのだ。

 分裂した大阪維新の党が再度勢力を増すとすれば、一度は否決された大阪都構想を形を変えて再度進め地盤を固めることと、時間をかけて身内の政治家の育成を図ること、そして能力のある人間を正しく評価して受け入れる目を持つことが重要となるだろう。
 衆目を惹き付けるために、様々なパフォーマンスを取ること自体は今となっては必要ない。堅実な政党づくりをすれば再び国政に影響を与えられる組織を作ることもできるであろう。ただし、橋下氏が政治家を完全に引退してしまえばそれも不可能となるが。

 なお、橋下氏に切られる政治家たちがどのように慌てふためくのかは正直言って興味がある。橋下氏の人気を頼みに政治ゲームを楽しんだ輩がどうするかはじっくりと見てみたい。今頃は肝を冷やしながら、非難の言葉を考えているのであろうと思う。