Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

世界経済に関する雑談

 中国の株価下落に端を発した世界的な株式市場の混乱は、この週末で一旦落ち着きを取り戻したように見える。ただ、今後は世界経済が同じ動きをするのではなく、バラバラに動き始めるというのが私の見立てである。中国は、株式市場の動揺を一旦は押さえることができたと思うが、紆余曲折はありつつも日本のバブル崩壊後と同じように今後低迷を見せるだろう。その理由は既に書いてきたことでもあるが、市場の信頼性を大きく失ったことに加えて中国経済そのものの変調があると考えている。
 既に多くの人たちが中国の経済事情は公式発表があてにならないことに触れており、実質的には中国がかなりの苦境にあるのではないかという想像が囁かれている。程度に関しては詳細な分析を行っているわけでもないのでわかりかねるが、中国政府の日本に対する態度の変化を見ていると「余裕はないのではないか」と感じさせるものだと思う。
 世界第2位の経済大国である中国ではあるが、その資金の源は世界中から投入された資金であった。投入される資金に見合う元を刷ることで中国国内が好景気に湧き、一部人民の生活が豊かになったのは間違いないが、逆に言えば現状の中国の信頼は中国自身の通貨である元ではなく、ドルやユーロなどの外国の資金の信頼性が担保している。
 世界第1位の外貨準備高を誇る中国(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%84%E5%9B%BD%E3%81%AE%E5%A4%96%E8%B2%A8%E6%BA%96%E5%82%99%E9%AB%98%E4%B8%80%E8%A6%A7)ではあるが、現状公式に発表されている外貨準備高は減少を始めている(http://jp.reuters.com/article/2015/08/07/china-economy-reserves-idJPKCN0QC0ZF20150807)。

 それ故、自国通貨(元)の信用性を早急に高めようと躍起になっているが、利害が一致する一部の国との間では自国通貨決済を可能としているものの、世界全体ではまだ十分に認められていない。何せ為替レートが国家に管理されているわけであるから、いつ勝手な都合で変えられるかわからない通貨を持ちたいと考える人はそれほど多くない。
 SDR(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%BC%95%E5%87%BA%E6%A8%A9)に加えられることで信用を高めようとしているものの、こちらにしても現状はめどが立っているわけではない。もっとも、SDRに組み込まれたとしてもどれだけ実効性があるかはわからないが。
 さて、中国の苦境に関しては数多くの分析が書かれているので詳細に関してはそちらに譲るとして、一時話題になっていたシャドーバンキングの話が最近あまり問題にされなくなっているのは少し気になっている。株式市場の動揺などよりもよほど大きな問題がそこには隠れていると睨んでおり、そのレベルは日本のバブル崩壊などとは桁が違うと予想している。
 ベールに包まれた中国国内の金融状況ではあるが、これを抑え込むためには莫大な資金をシャドーバンキングの解決に回さなければならない。その資金を捻出することは中国政府にとってはあながち不可能ではないと考えるが、無理をするためには別の場所への大きなひずみが生じるであろう。現状想定しているのは、国内経済の疲弊を看過して日本以上のデフレに陥るのを認めるか、それを否としてより大きな資金を導入して国内的なインフレを許容するかだと思っている。

 実は、どちらの道をたどっても人民の不満が政府に向くことは間違いない。現状は、そうなることを回避するためのパッチワークの様な施策を繰り出しているに過ぎないと睨んでいる。日本の状況も楽観できるものではないが、中国は強権を発揮することで多少の不満を抑え込むことはできるものの、その限界値がそれほど遠くない場所まで来ていると感じられるのだ。
 アメリカは、貧富の格差は広がっているものの国全体としてはそれなりに立ち直り始めているが、こちらもリーマンショックの時以上にジャンク債を溜めこんでいるという弱点を有している(http://markethack.net/archives/51979254.html)。問題はジャンク債により被害をこうむるのはアメリカだけではないというか、むしろアメリカ以外の国々で被害が広まることになるということである。
 それは、中国もそうだし、東南アジアの国々もそう、世界中に影響を受ける国々は山ほどいる。リーマンショック後の過剰流動性にどっぷりとつかって債務を積み上げてきたところほど大きな巻き戻しにさらされる。アメリカの利上げが為されれば、通貨安によりドル建て借金の返済が滞るところがいくらでも出てくるということになる。

 私は9月にFRB金利を上げる可能性は高くないと考えているが、それでも今後はそれがいつであろうかと世界経済がおびえ続ける展開が生まれるのではないだろうか。以前の考えでは、もう少しバブル的な展開が続くかもしれないと予想していたが、そろそろ限界が近づいてきたのかもしれない。
 世界経済のデレバレッジに対して日本も間違いなく影響を受ける。特に株価と地価や不動産価格には影響は大きく出るだろう。それでも、リーマンショックの時がそうであったように日本企業の多くは少しずつ体力を取り戻している。世界景気が冷え込めば日本も影響を受けるのは間違いないが、株価変動ほどの影響はないのではないかと考えている。
 デレバレッジの嵐が巻き起こることを畏れているのは世界中(特に欧米)がそうなので、ソフトランディングを目指しているのは間違いないだろうが、それに抵抗するのが中国を始め新興国の国々となるであろう。具体的には積み重ねられたレバレッジの縮小を目指す動きとなろうが、それが自国経済の今回の揺るがしかねないために抵抗するのではないかと思う。それは統治体制を揺るがすということにも等しい。

 リーマンショックの時にもそうであったが、金融商品(毒)を広げている中心がアメリカでありながら、その影響をより大きく受けるのが他の国々というなんともやりきれない状況ではあるが、それこそが基軸通貨の強みであると言うしかあるまい。日本も資源に突っ込みすぎた一部の商社は苦境に陥ると感じているが、意外としたたかに復活してくるのではないだろうか。
 ここまで書いたのは秋まで個人的な感想であって、明確な根拠のあるものではない。ただ、世界の景気が復活したのは過剰流動性のおかげであるが、その毒の部分が今後牙をむくという可能性については注意しておいた方が良いのではないだろうか。