Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

犯人拘束への疑念

 天安門広場前のテロとされる事件の容疑者が拘束されたと伝えられている(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131031/k10015696351000.html)。報道によれば、当日の10時間以内に拘束されていたというが、これが明らかにされたのは昨日で2日が経過した後のことであった。好意的な見方をすれば慎重に事実確認を行い既に死亡したメンバーとの関連性を調査していたと取れなくもないが、穿った考え方に立てば犯人の目星がつかないのでダミーを拘束したとも言えなくはない。報道にあるような、イスラム教の「聖戦」が記されたものを保持していたというあまりに出来過ぎたストーリーからは、正直胡散臭さをぬぐいきれずにいる。
 ただ、仮に逃亡しているメンバーがいたとしても自らに手が及ぶ危険性を高める犯行声明を中国国内で発することは難しくおそらく反論はないだろうし、仮にあれば犯人を燻りだすための方法だったと当局側は強弁できる。犯行声明が全国から溢れ出てきでもしない限り政府当局側はスムーズな対処をアピールすることにデメリットはない。何にしても政府の威信を重視するとすれば、偽物でもなんでも早期に対処したことをアピールするということは考えられる。断定は避けているものの、イスラム過激派であると公表していることからも事件の結末を既に決めている感じが読み取れる。
 もちろん、そのことを理由にウイグル族の締め付けが公然と行われるであろうことについては、NHKも記事の内容では触れないものの懸念を抱いたようであり、深読みすればNHKですらこの拘束が正しい捜査に基づくものなのかを疑っているニュアンスさえ読み取れる。

 もっとも、私はでっち上げ説も十分考えられると思ってはいるものの、決定的な情報は何もないので現状においてはあくまで想像の範囲を出ない。既に報道では、原因が以前よりのウイグル族弾圧に端を発していることは知られている。特にここ1か月ほどで15名が射殺されていると報道されていることからも、尋常な状況ではないことが窺い知れる(http://sankei.jp.msn.com/world/news/131025/chn13102513240005-n1.htm)。ちなみに当然のことながらウイグル側からは中国政府の発表を鵜呑みにはできないとの声明が出ている(http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM3101W_R31C13A0EB1000/)。
 さて、でっち上げであろうがなかろうが、今後の事件の進展がなければやはり政府当局は苦しい立場に追い込まれる。それを認めずにうそぶけるのも中国らしいと言えばそうではあるが、テロである明確な証拠なしには不当な弾圧なのではないかという国際的な非難が巻き起こる可能性もある。
 そもそも、中国政府(地方政府?)による強権的な行動が原因であるのは間違いなく、明確な証拠が出ずに時間が経過するほどにウイグル擁護の声が大きくなってもおかしくない。だから、今回の発表で当面の時間稼ぎができたと考えることは可能だが、それが現状を何か改善しているわけではないのだ。

 今回のこと受けて弾圧を強めても、結果としてより高い不満を凝縮させることにつながり、だからと言って明確な証拠を提示できなければ当局の信用は失墜する。これもまた、現在の統制が弱まりつつあることを暗示させ、反体制派の活動が勢いづくことになる。
 私は以前より、中国が複数の国に分裂してくれることが日本並びにアジア諸国にとっては望ましい状況だと考えているので、謀略を用いろと言うつもりはないが現状は静観することになろう。また、中国人民の不満が高まれば高まるほどに中国への投資は今以上に逃げ出すだろうし、それに対して最も恩が売れる状況で助け舟を出せばいいと思う。
 縁を切るのではなく、日本にとって有利なように動くことが重要だと思う。