Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

秋田書店の不正

 このニュースに接した時、多くの人たちは「やはり」と思ったのではないだろうか。「当選は商品の発送をもって」という耳なじみの言葉には欺瞞が満ち溢れていた。しかし、一部では投稿生活などというこうした商品により生活を送るなんて企画が行われていたこともあるように、単純に様々な懸賞の全てが秋田書店のケースと同じだという訳でもない。
 解雇された社員と秋田書店の言い分に関しては、現状では十分な情報がないのでどちらが確からしいかを確認する術はないが、裁判に持ち込まれる気配もあるのでそこで詳らかにされるのであろう。不十分な情報下での感想のみを言わせていただければ、消費者庁が是正命令を出している(http://www.caa.go.jp/representation/pdf/130820premiums.pdf)ように毎回3名程度の当選者を掲示しているプレゼントがほぼ一貫して1名の当選者となっていることから、社の方針としてこれを決めていた可能性は非常に高い。秋田書店側は公式ホームページにて

解雇した社員については「あたかも社内の不正を指摘し、改善を訴えたために解雇されたなどと主張しているが、解雇の理由は元社員が賞品をほしいままに不法に窃取したことによるもの」として、「法廷の場で事実関係を明らかにし、解雇の正当性を証明する」

としている(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1308/21/news122.html)が、これも解雇された社員に対する圧力と取れなくもない。と言うのも、仮に何年もこの社員が単独で当選品を全て横流ししてきたとすれば、通常話は単純な解雇のみで終わるとは思えないからである。

 その上で、この件で秋田書店が被ったイメージの悪化は決して少なくない。少なくとも、判明している事実と両者の言い分のみを見る限り秋田書店の分は悪い。それはもし仮に解雇した元社員との裁判に勝つことがあったとしてもである。おそらく業績の急激な悪化を招くことになると思う。今、解雇した社員との泥沼の論争を行うよりも社のイメージを立ち直らせる方が重要であるはずなのに、つまらないことに拘泥しているなと感じる。
 同じ流れになるのかもしれないが、気になるのはこうした状況が恒常化した理由である。素直に考えれば、なぜ不正をここに至るまで止められなかったのかという点だ。消費者庁への説明として

同社の関係者によると、内部告発を受けた社内調査で同社が事実関係を把握し、不当表示を中止した模様だ。水増しの理由について同社は「近年、メーカーから景品の無償提供を受けられなくなり、経費削減のためやった」と消費者庁に説明している。

という情報も流れている(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130820-00000069-mai-soci)が、『また、「他社でもやっている」とも話した』という話も出ている(http://news.tbs.co.jp/20130820/newseye/tbs_newseye2006349.html)ように横並び意識に安住していた面も大きいであろう。
 この言葉が事実(本当に関係者のもの)かどうかはわからないが、仮にそうだとすれば解雇された社員の単独説は間違いなく消える(元々、社員が休職中にも水増しは行われていたとされる)。その上で、秋田書店の言い分の一部に正しいところがあるとすれば、社としても商品の水増しを行っており(嘘の当選者を生み出しており)、それに目を付けた関係する社員たちが自らも欲しい商品を横流ししていたというドロドロとした状況なのだ。あるいは裏給与として認識されていたのかも知れない。

 そこにはバレる筈もないという、会社と社員による共同謀議の臭いが色濃く立ち込め、しかもそれは業界全体に蔓延しているということになる。同じような話は、コンビニなどのキャンペーン時のくじやお祭りの際の露店のくじ(http://blog.livedoor.jp/news2ch_now/archives/30060052.html)などでも可能性があるように、本来当たりはあるはずなのにその大部分が既に抜き取られている状況にも近い(きちんとしているところが大部分だと思うが)。
 見つかるはずもないという状況は、今回のように内部告発の形を取らなければ露呈しないからこそのことで、そこにはお互い様だろうという共犯を理由に秘密を保持するという暗黙の了解があったことになる。

 この話は、おそらく業界全体に飛び火する。早く謝罪した雑誌社の方が救われるのかと言うと、このあたりは非常に怪しい。過去の様々な例を見る限り、続出した時に一緒に謝った方が被害が少ないというケースを散々見てきた(議員の年金未納の時など)。早期にみつか所はマスコミのバッシングを受けて大きく記憶にも残る。そのことを知っているあらゆる雑誌社は、調査を約束はするかもしれないが歯切れは悪く、その上で徹底的に否定に走るであろうと思う。何にしろ、内部告発がなければおそらく見つかるはずはないのだから。