Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

タミフル耐性

こんな報道が出ている。
中国で「タミフル」に耐性持つウイルス確認=医学専門誌(http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324182504578512501218693978.html?mod=WSJJP_World_Left_JapanLatest_News、原典:http://download.thelancet.com/flatcontentassets/pdfs/S0140673613611253.pdf

NHKも報じているようである。
H7N9 抗ウイルス薬に耐性(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130529/k10014932771000.html

 さて、当初のH7N9型鳥インフルエンザタミフルなどの抗インフルエンザ薬が効いていたと報告されていたはずであったが、早くも耐性菌が現れたということになる。H7N9型インフルエンザがレポートされたのは今年の春ごろからだと思うのだが、かなり前からその存在があったということも予想できる。
 確かにこうした薬を使い続ければいつかは耐性菌が現れるものではあるが、仮に上記レポートが事実だとすると普通に考えればペースは速すぎる。逆に言えば、既に相当の世代交代が既に中国国内で起こっていて、何度もタミフル等が使用されたことにより耐性を獲得したとも考えられる。

 現時点では中国政府発表の患者数は5/27時点で感染者が130名死亡者が37名としており、この数字による致死率は30%近くとなっている。もっとも、中国の当局の発表には全く信憑性はなく誰も信じていないというのが現状ではないだろうか。少なくとも患者数は過小に評価されていると見る向きも多い。SARSの時と同様に、隠蔽をしてばれたら白状するというのが彼らのスタンダードだと想像されるからである。
 ただ、その状況が一体どの程度切迫しているのかは現状の報道内容からはなかなか読み切れるものでもない。今回のタミフル耐性菌の報道は、H7N9型インフルエンザがかなり蔓延しているのではないかという可能性を示唆するものとして非常に興味深いし、だからこそ警戒も必要ではないだろうかと思われる。

 現状ではタミフル耐性菌がどれだけ広がっているかを明確に確認する情報はない。報道からすれば、14人中の3人が全く効かずに重症化した(うち2人は死亡)とあるが、これが耐性菌によるものなのかそれともタミフルの薬効のばらつきによるものなのかも不明である。
 ただ、耐性菌は人に感染した場合にタミフルを投薬し、その結果として菌が生き残り生じるものである。だとすれば、現時点で人−人感染が生じていると考えることもできなくはない。人−鳥−人感染もあるかもしれないが、だとすればそれが生じたのはごく最近とは言い難い。

 現状では収束に向かいつつあるように報じられている中国での鳥インフルエンザではあるが、この報道を聞く限りにおいて楽観視することはできないのではないだろうか。