Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

絶好のチャンスを見逃すか

ここ数日の韓国政府周辺から公式非公式に発せられるメッセージを見ていると、大統領の支持率確保という目的以上の何かがあるのではないかと勘ぐりたくなるほどの様相である。レームダック化が囁かれる李明博大統領のパフォーマンスが行われること自体は、既に想定されていたことで驚くべきものでは無い。そのことを想定していた政府や外務省自体が唖然とする行為が行われているのをいると、そこまで焦らなければならない何があるのだろうかと考えてしまうのである。
天皇陛下に土下座を強要するような言葉を吐けば、日本国中が沸騰することは容易に予測できることであり、確かにこれまでの日本政府が事態を穏便に済ますように動いていたことはあるものの、我慢の限界点があることもわかっているはずである。だから、現状はまるで日本世論をわざと怒らせようとしているとしか思えないのである。問題がエスカレートするほどに両国が経済的に冷え込むことは間違いない。当然日本経済へのダメージはあるだろうが、同時に受けるものはおそらく韓国の方が大きい。だとすれば、それの行為はまるで自爆のような感情的な暴発としてしか見ることが出来ないのだが、本当にそうなのだろうか。

政治的パフォーマンスとして軽く見ている向きも多いようだし、私もその一面がないとは思わないのだが、同時に日本憎しの感情を韓国民に広げたいという思惑があるのではないかと感じている。要するに、国内問題が容易に収束できるレベルを超えて悪化しているが故に、日本という韓国民なら誰でも納得できる明確な敵をクローズアップして国内の問題を掻き消そうとしているのではないかと言うことだ。
だとすれば、韓国政府としては国内向けに日本との明確な対立を浮かび上がらせたいのであって、日本が冷静な態度を続けられるのは却って困る。むしろ、日本側が感情的になるほどの状態に持っていきたいということになる。
さて、韓国国内のまずい状況と言えばいくつかが考えられる。一つは、もはや修復不可能なほどまでに国民の借金体質が進行していることだ。健全な借金は国家の発展や適切な消費のために必要なことではあるが、それが行きすぎてしまうことは社会の不安定化を引き起こす。現状でも、韓国政府はこの処理に相当頭を悩ましている。今後の国内的な個人破綻が続けば社会の不安定化は増すだろう。
もう一つは、企業業績の斜陽である。サムソンが世界中を席巻しているように報道されてはいるものの、現実にはサムソンの株は過半数を海外に握られている。よって企業として稼いだ利益も大部分は配当で流出する。逆に言えば、サムソンの業績が傾き始めることは韓国への投資の引き上げに繋がりかねない重大事項でもある。
しかし、欧州危機の伝播によりBRICsの経済成長にも大きくかげりが見え始めている。輸出に活路を見出そうと大きく舵を切ってきた韓国の輸出関連企業の業績は、ウォン安の追い風があっても順風満帆ではないのである。既に韓国経済が今後も低迷することは各所から予想され始めている(http://www.chosunonline.com/site/data/img_dir/2012/07/27/2012072701031_0.jpg)。大きく外需に依存した経済は、日本のような内需型の社会と比べて著しく不安定なのだ。

もちろん、李明博大統領の本心は誰にもわからない。ただ、苦し紛れのようなあるいは自虐的なほどの攻撃性の露出は、それを覆い隠したい事実あるいは潜行して進めたい何かがあるからだと考える方が合点がいく。一国の大統領が単純に感情論を振り回しているというのは今ひとつピンと来ない。
もっとも、どんな思惑が韓国側にあろうが日本は淡々と処理するのが最も良いと私は思う。韓国が非難姿勢を強めれば強めるほどに、それは国際社会に喧伝されるし日本国民を一致団結させる側に働くだろう。強いて言えば、現状の野田政権にとっての追い風を何処まで生かすのかということは気になっている。韓国の暴挙に対して少し強硬姿勢を取れば、それはおそらく内閣支持率の上昇に働くであろう。感情的になる必要はない。淡々と、交流や援助を引き締める準備をすれば良いだけだ。
今のところ、そのような強硬姿勢に出る可能性は低いと多くが見ていることは、ウォンが安定していることや韓国側からの挑発(スワップを日本側からは凍結しないであろうなどの発言)で読み取ることができる。
日本側としては、感情的にならずドライに韓国を切り捨てる準備にかかれるであろうか。今後の動向にも目が離せない。