Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

スパイのいまさら感

中国スパイに副大臣が機密資料を渡していたというニュースがそこそこ報道されているが、現状では生活保護関係や原発再稼働問題の方がニュースバリューとしては高いみたいである。
さて、このスパイ問題について詳細な情報を掴みかねているところではあるが、最初の素直な感想は「何をいまさら」であった。日本はスパイ天国とも言われるように、スパイを取り締まる法律はない。そして、世界中の情報を集める専門家(いわゆるスパイ)が活動してる。当該国家では集められない情報も日本を通せば集まるという算段でもある。
ただ、スパイとは映画のような華麗なものではない。非合法な工作員であればともかく、基本的には公開情報を地道に集めるのが主体であろうし、機密情報を入手する時にもわざわざ目立つ行動など取りはしない。

今回のスパイとされる李春光は、2007年から在京中国大使館経済部の一等書記官を務めていた。この件についてはこの記事がわかりやすい(JBPress:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35343)。
記事にもあるように、これはスパイ活動と言うよりはサイドビジネスで一儲けという流れではないかと感じる。もちろん、サイドビジネスとは言え自らの立場を利用して有利な情報などを得ようとしていることも含めて、情報漏洩の問題は存在するだろう。ただ、それにしてもあまりにショボいのである。
もちろん、こんなつまらない事件に引っかかってしまう内閣の一員は政府の一員としての資格を問われることは間違いない。手渡した情報が日本という国家の大きな秘密に該当するかどうかという問題ではない。自分の立場を認識して、行為の結果を想像することすらできていないことが問題なのだ。

もっとも、政治家による情報漏洩など他にも少なくないと思う。それは様々な駆け引きの材料として国家間の調整しろとして用いられることもあるだろう。ただ今回の件が稚拙なのは、それがおそらく私的な権益確保等に基づくものであり、高度な人脈作りなどにはあまり効果のないものだったこともあるだろう。
逆に言えば、このスパイとされる人物に踊らされてしまったとも言える。あるいは、農水書ぐるみでの中国権益確保の動きに巻き込まれたのかも知れない。
ただ、どちらにしても日本という国にとって大きなダメージを与えるものではなかったと思う。むしろ、こういう状況が常態化していると言うことを国民に知らせる役割を果たしただろうし、今後の下手な活動に対する注意喚起としての役割も果たしただろう。
現実に日本として重要な秘密情報とは防衛・安全保障と、日本が収集している他国の秘密情報、外交における交渉内容、そして未決定の政策事項などが中心となる。それ以外については大部分が公開されるのであまり秘密と言えるものは多くない。

最も問題となるのは、中国政府が面子を潰されたと感じて今後取る行動かも知れないことであろう。スパイ活動とも言えないようなつまらない個人の活動を持って、中国政府がスパイ活動をしていると非難されたに等しい(もちろん、公式にスパイ活動を認めることなどあるはずもない)。
実質的な被害よりは、面子を潰されたという心理的なダメージを重視して過度の攻撃的なスタンスを取るかも知れない。わかりやすいパターンでは、中国で活動する日本人をスパイ容疑で逮捕拘束すること等だろう。日本も同じだ(あるいは日本の方が酷い)という印象操作ができればいいわけで、その犠牲となる人にはご愁傷様と言うしかない。
あるいは、別の反応になるかも知れない。尖閣沖の時にもいくつかの手を打ってきた。全く別の嫌がらせをすることも考えられる。ただ、それでもあくまで嫌がらせレベル以上の強攻策に打って出ると言うほどの切迫感があるとも思えない。

日本が本当に注意しなければならないのは、それ以上に産業分野における情報漏洩だと思う。ポスコの件でも明らかになったが、中国も韓国も日本の最新技術はのどから手が出るほど欲しいのだ。
こちらの防衛を国ももっと本腰を入れて考えるべきだと私は思う。

「政治家の情報漏洩問題より、政治家や省の認識の甘さが核心だろう。」