Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

鋭敏化

韓国の貿易依存度が97%に達したそうである。貿易依存度とはGDP国内総生産)に占める貿易額の割合を示す。この場合の貿易額は輸出入の両者を加えるので数字の上では100%を越えることもあり得る訳だが、これだけ高い貿易依存度の国は多くない。
例えば欧州で貿易依存度の高いドイツでも60%程度、世界の工場と呼ばれた中国でも40%程度、日本やアメリカは20%程度である。ちなみに世界一貿易依存度の小さな国はブラジルであるが、日本は世界でも3番目に貿易依存度は低い(ごく小さな国などは除く)。

貿易依存度を高めると言うことは、海外と密接に取引を行っているという意味において世界的な影響力が高まったと言うことも可能である。すなわち、世界的な地位も向上したと考えられなくはない。だが、同時に世界的なリスクを直接受けるという負の面も見逃せない。実際、韓国はアメリカやEUと次々にFTAを成立させてきた。FTAの取り組む理由は貿易の促進である。すなわち、自ら進んで貿易依存度を高める方向に舵を切ってきた結果なのだ。
貿易依存度を高めることは、輸出競争力がある国にとっては有利に働く。輸出競争力を維持し続けるための大きな条件は三つ。安い為替と低い関税、そして一定以上の品質である。そのいずれもを韓国は手に入れてきた。特に世界が成長期にある時にはその恩恵は計り知れない。
ところが、その道は茨の道でもある。世界に打って出ると言うことは世界に依存すると言うことと表裏一体であり、その依存の結果自国の内需は大きく力を失っていく。要するに世界と一体化することで生き延びようとしており、自国の経済的独立性を手放しているのだ。

これは、経済の鋭敏化を指向していると私には見える。勝っている時には最高の利益を得られるが、負け始めた時にそれを止める手段が非常に限られるのだ。あくまで私の穿った考え方かも知れないが、韓国はいざと言う時の負債を日本に頼ろうとしているように見えるのだ。考えてみれば数かスワップ枠の拡大などはまさしくそれに該当するではないか。
最も日本も偉そうなことは言える訳ではない。日米安保条約という片務条約が存在し、いざと言う時はお願いしますという依存を続けているのも事実である。
ただ、リスクを日本に押しつけて一時的な収益確保に走る韓国を日本が何の代償も無しに支える必然性はほとんどない。ましてや、政権維持のために反日を叫ぶ様な状況を放置しておくとは、まるで出来の悪い子供が一時的な成功にはしゃいでいるのを見つめる母親のようなものではないか。

もし日本政府が自国の利益のために韓国の成長を利用するつもりがあるのなら、きちんと言うべきことを言わなければならないし、逆に韓国の暴走を許すならその方針による韓国の破綻を助けるつもりが無いことを明確に伝えておく必要がある。
どちらにしても、韓国の経済的な鋭敏化は社会の歪みを広げながらも一時的には派手な成功を導いているように見える。それは勝つ時には大きく、そして負ける時にも大きくと言うデリバティブのスタイルに非常に近いような気がするのであるがどうであろうか。
私は、日本が韓国のスタイルを真似る必要はないと思うし、その一時的な反映を羨ましがる必要もないと思っている。もちろん日本の悪いところを直すのはよい。ただ、一時期ヘッジファンドが隆盛を極めたようなそのスタイルを日本が真似る必要はないはずだ。

「サスティナブル(持続可能)な国家を作り上げるためには、鋭敏化は感性や覚悟にこそ求めるべきであって経済に求めてはいけないのだと思う。」