Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

小沢切れども鳩山切れず

鳩山元総理が、官邸の意向に反してイランへの外交に向かうらしい。正直、彼に外交センスがあると考えている国民は、人語を解する鳩を探すよりも難しいだろうと思うのだが、民主党はそこまで進行に考えていないような振る舞いを見せている。鳩山元総理は特に外交センスの欠如により総理辞任に追い込まれた訳だが、それにも関わらず民主党の外交顧問としての地位に就いているのだから。おそらく本人は元総理としてカーター張りの活躍でも思い描いているのかも知れないが、政府の意向と対立している時点でその線はあり得ない。
確かに議員個人としての外交がない訳ではない。ただ、それは将来的な可能性を含んでの個人的友誼を深めるものであって、そのものが国家を左右する外交として機能するものでないのは明かであろう。だとすれば、既に総理を務めた人間(その上で総理に返り咲くことはほぼあり得ない)に将来を踏まえた個人的な友誼を深める意味などあろうはずもない。要するに、国内からも国外からも誰が見ても二元外交なのだ。アメリカなどはそのルーピーさから苦々しくも同時に生暖かく見守っているだけで良いかも知れないが、当事者たる日本政府としてはなんとしても止めるべき問題であろう。というのも、元総理の言葉を外向的にどれだけ利用されるかがわからないのだから。下手すれば、日本は余計な枷を嵌められる。いや、おそらく下手を打つであろうことが誰の目にも明らかなのである。

そんな状態にもかかわらず、この無謀な行為を政府首脳がまるで他人事のように誰も止めようとしないのは一体どうしたことであろうか。仮に彼がもはや世界からは嘲笑の的としてしか認識されていないとしても、日本に条件を突きつける方策において元総理の肩書きは十分利用価値がある。あるいは、対イラン政策において日本とアメリカの分断を促す爆弾としても使えるかもしれない。
もちろん彼が有能であれば、そんな罠に嵌められることなく上手い外交を仕切れる可能性があるかも知れない。ただ、彼は民主党の議員すらが認める無能である。個人としての活動を制限できないかも知れないが、二元外交を行うのであれば党を除名するなどの強いメッセージを出すことも可能であるはずだ。

一方で、除名までは言わないものの小沢元代表に対する現在の党執行部の姿勢は鳩山元総理に対するものと比較して逆に相当露骨である。私は小沢元代表を擁護するつもりなどさらさら無いが、政治的に弱体化したこともあって容赦なく攻められている感じである。私からすれば鳩山も小沢も同じ穴の狢ではないかと思うのだが。
今や民主党の現執行部にとっては小沢切りは既定路線となっているように見える。小沢派重鎮からチルドレンまでの懐柔を行う必要があるため、現時点で直接的に離党を進めるような方策を採ってはいないもののこの流れは確実にそちらに向いている。
小沢擁護は民主党にとって支持率的に不利であって鳩山採用が有利であるというのであれば話は別かも知れないが、切るのであれば同列に見えるだけに二人に対する扱い方の差が逆に際立ち始めている感じもする。

両者を比べた時、小沢を切る不思議ではなく鳩山を泳がせる不思議がそこには浮かび上がる。鳩山は確かに民主党の金づるではあるが、それでも今から大きく民主党が鳩山資金を受けられる訳でもあるまいに。その上で、民主党に対する功績のみを考えてもおそらく鳩山よりも小沢の方が大きい。少なくとも政権交代の一番の立役者は小沢なのだから。
あるいは公明党とのパイプを持つ人脈の要としても、そしてひょっとしたら将来的な維新の会との連携を見定めても、小沢というパイプを切るのは民主党としては絶対的な得策とは言い切れない。
今や、民主党への迷惑度からすれば動けない小沢よりも動き回る鳩山の方が大きい感じもするのだが、政治の世界は魑魅魍魎が跋扈する場所でもある。内紛を演じているだけという可能性も否定しきれるものではないのだが、その演出により見えてくるものが今ひとつ掴めない。

私には窺い知れないような動きが水面下であるのかも知れないが、この鳩山元総理の自由奔放な動きを許さざるを得ない民主党および政府首脳を見るに付け、民主党という政党は信義という部分に鈍感なのだなと感じずにはいられない。少し前や今鳩山元総理が行っている行為は、これまで脈々と積み上げてきた信頼をぶち壊すことなのだから。

「ハトは平和の象徴かもしれないが、同時に平和ボケの偶像なのかも知れない。」