Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

道州制は、地域を滅ぼす?

一時期は地方分権の特効薬的なイメージで語られていた道州制であるが、橋下大阪市長の考えが国民に大きく受け入れられそうになってきたこともあって、道州制になればその州都以外の地方都市が衰退するなどと言う話が出てきている。
確かに道州制によりバラ色の未来が見えるというのは正しくないが、では道州制が地方を滅ぼすかと言えば私はそれも極論だと思う。

道州制とは一種の連合国家を目指すものだ。アメリカの州がイメージされているようだが、イギリスのパターンであってもかまわない。国家には届かないものの実質的に国家的な機能を有する高度な自治を目指すものである。
道州制により日本をいくつに分割するかはなかなか難しい議論だと思うが、現在は10ほどが想定されていると聞く。場合によっては7つくらいでも良いのではないかと思わなくもないが、それぞれの州がある程度均衡するレベルにしておかなければ不公平が生じるであろう。
そもそも日本のGDPは国土面積から考えれば巨大である。州に分割してもそれぞれの州のGDPは中堅国家並みである。すなわち、分割すること自体に根本的な弊害があるわけではない。世界的に運営が出来ないレベルではない。

さて、道州制の導入により道や州が運営されるようになれば、その州都以外は疲弊してしまうのだろうか?私はそうは思わない。その理論で行けば日本において東京のみが栄えて他の地方都市が衰退するのは当然という話になりかねない。その状態を許容するくらいならば、日本に州都分だけの栄えた都市が生まれる方がまず良いと言うことになる。加えて、各州が実質的に国家機能に等しい役割を担うと考えれば、各州都が現在の東京が保有する機能を受け継ぎ、その他の都市は現在の地方主要都市と同様のポジションに着くことになる。要するに、州都以外の都市は現在の大阪や名古屋、札幌などが抱えている問題に新たに取り組まなければならないということではないだろうか。
もちろん、国の規模が異なるため全く同じというわけではないだろうが、国の統治システムが変わったからと言ってバラ色になるわけではなく、その統治システムに適合したスタイルを作り出すために知恵も絞り努力もしなければならないのである。

そもそも道州制の議論が為されているのは、現在の東京一極集中型の体制が時代に合わなくなっているという認識があるからであろう。だとすれば、そのスタイルを維持したままの緩やかな地方分権でいったい問題点のどれだけが解消するかという疑念に至る。
それは、単に自分たちに有利なスタイルにシステムを変えてくれと言う要望に過ぎず、日本が再び立ち上がるための大きな視点に欠ける。それは内向きのみ考えるやり方だ。ところが今の日本が抱える問題は内側だけではなく外側にも存在する。現状のシステムを維持したまま少しずつ変えるというやり方は、その外向きの問題にどのように対処しようとするのであろうか。

私自身は、道州制と言うよりは連合国家というイメージにまで独立性を高めても良いのではないかと思っている。できるならば、北海道東北、関東、東京、中部、近畿、中国四国、九州沖縄くらいのバランスが考えられると思う。
当然、その弊害もあるであろう。ただ、その弊害を解消するための努力が出来ないわけではない。未来へ向けて日本のあり方を論じる上で、地方都市がデメリットをうけるという問題のみで否定して良いものではないのではないかと思うのだ。

「滅びなどしない。新たな課題が現れるのみである。」