Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

IMFのイタリア支援

IMFがイタリア支援として4000〜6000億ユーロ(約40〜60兆円)を検討しているなどの出所不明の報道(http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011112801000985.html)もあって世界の金融界が一息吐いた感じになっているが、実際のIMFに6000億ドルもの支援ができる能力はない。現在の出資能力は約4000億ドル(約30兆円)と言われており、出資余力はもっと低いかもしれない。

このような情報が飛び出してきた理由は、イタリアの10年債が7%を大きく超え始め、スペイン債も7%弱まで金利上昇してきたため、なんとか歯止めをかけようという一種の情報操作だと思う。
まだ、ドイツがユーロ債発行に同意しないため、その交渉期間を得るため少しでも先延ばしをしようという魂胆によるブラフだろう。
そもそもIMFの最大の出資者はアメリカであり(http://lowcostinv.blog109.fc2.com/blog-entry-112.html)、拒否権を有する15%を有しているためEUの一存では出資を決められない。極論を言えば、日本と中国とロシアが手を組んで拒否しても数の上では出資を阻止できる。

ただ、伝統的に(というかパワーゲームの結果)欧州出身者が専務理事を務めるという形態(一時的な代行としてはアメリカ人が着くこともある)のため、欧州よりの判断を出す傾向があるだろう。
今回も、謀略とも取れる事件の末にフランス人のストロスカーンが失脚し、その後同国のラガルドが専務理事の地位に就いている(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%8C%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%89)。
一方で、世界銀行wikihttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E9%8A%80%E8%A1%8C)の総裁は代々アメリカ人で占められている。

本来EU内の国家の危機については、一義的にはIMFではなくEU(その機関としてのECB)が対応すべきであるのだが、IMFがやや前がかりになっている感じがする一番の理由は事務的には欧州がIMFを利用しようとしているためと言っても、あながち言い過ぎではない気がしている。ちなみに、アジア通貨危機の時にIMFの支援を受けた韓国などはIMFを目の敵のように感じているようだ。
実際、その取り立てや財政支出削減などに関する関与は非常に厳しい。
ある人に言わせると、「取りっぱぐれのない債権取り立て屋」なんだそうである。
ただ、身内であるイタリアなどには韓国ほどには厳しいことはできないのだろうが。

話を元に戻すが、4000〜6000億ユーロなどと言う途方もない金額は、当然ながら専務理事の独断などで決定できるものではない。世界が、ユーロ危機を救う道がそれしかないと判断すればともかく、まだECBやドイツなどが十分な支援を行っていないと思われる段階で、IMFが突出して巨額の支援するという報道自体の胡散臭さはかなり強い。

要するに、イタリア危機の動揺が連鎖的に広がるのを避けようとする苦肉の策と言える。ただ、ドイツがユーロ債に否定的な間は決定的な解決策がないというのも現実である。
当面は、短期的なパッチワークとして何でも利用して市場の動揺を抑え、最後はドイツを抱き込みたいというイタリアやフランスの思惑が見えて透ける。ちょうど、ECB(欧州中央銀行)の総裁がイタリア人のマリオ・ドラギ(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%AE)であるというのも、IMFを巻き込む大きな後押しとなっているようにも感じられる。

ちなみにあくまで私の個人的感想ではあるが、私はもはやユーロはユーロ危機を独自では乗り切れないと思っている。それはドイツが逃げなくても、あるいはIMFを利用しようと画策しても同じだと思う。