Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

インフレしかないがインフレは嫌だ

欧州危機に歯止めがかかる気配はない。
イタリアの10年債の金利は再び危機水位の7%超えに達し、スペインも6.7%である。
ハンガリーが通貨の下落を受けてIMFへの(予防的)金融支援を打診する状況に至っている。
南欧諸国を救うべき、フランスでさえ国債金利は3.5%を超え始め危機の伝播が目に見えてきた。

ドイツにおいても、国債入札の札割れが生じたとニュースになっている。
1.98%の金利で発行しようとしたところ60億ユーロの予定が60%の36億ユーロしか民間金融機関の応札がなかった。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-24307720111123
ちなみに、この金利はこれまで唯一ユーロ圏でアメリカ国債金利より安かったドイツ国債金利が上回ったとしている。
札割れの残りはドイツの連邦銀行(日本で言えば日銀)が引き受けている。
日本で言うところの直接引き受けに当たる。日本ではさんざん批判されている行為であったはずだが。

連銀による買い取りを許容して札割れを放置したのは、逆に言えば金利を上げたくなかったと言うことの裏返しでもあろう。ドイツは第二次世界大戦後の極端なインフレに対するトラウマがおそらく日本以上に強い。インフレは何より避けなければならないことなのだ。

しかし、実際にはユーロ諸国の危機を救うためにはお金をばらまくしかない。
それ以外の場当たり的な方法はあっても、あくまで状況を先延ばしできるだけであって根本解決など図れはしない。
ユーロ共通債の発行などは、直接お金をばらまくのが嫌だから共通債という形式を取っているものの、実質的に将来はインフレで吸収するしかないのは誰にも明らかだ。
そして、だからこそドイツは頑強に反対を言い続けているとも言える。
サルコジ大統領が中国などになりふり構わず資金援助を相談に行くのは、それだけ背に腹は替えられない状況にあることの裏返しと言えるであろう。

仮にドイツが抜ければ、ユーロは資金的な後ろ盾を失う。行き着く先は巨大な混沌だ。
しかし、ドイツのみではユーロを救えない。
ドイツを含めて、インフレを許容する覚悟がなければである。
ただ、ドイツ国民からすれば現状の原因はドイツにあるわけではないと考えており、自分たちのせいではない危機で同じようにドイツ国民をインフレという悪魔に向かわせるわけにはいかないと考えるのであろう。

ギリシャが本当に立ち直る気があれば、デフォルトを宣言しユーロを離脱した上で苦難の時期を経て、安い通貨により復活を図る道がないわけではない。しかし、フランスやドイツの都合による延命支援があるが故に、ユーロのぬるま湯を少しでも長い間味わおうとしている。
そして、ドイツという国家がエゴイスティックに振る舞うとすれば、ドイツがユーロを離脱して知らんふりをするという手も存在する。それは、ユーロ諸国の恨みを買うことになるが、一時的な安寧は得られるだろう。

インフレは、ドイツにとっては非常に大きなトラウマである。
そのトラウマを克服できるかどうかが、現在の危機を解決できるかどうかの分水嶺だと私は思う。
ただ、現時点ではそのラインを超えられる気はしていない。

「日本はユーロ動乱と以降を思案する時期にある。」