Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

TPPと日本の地方衰退

にわかに議論が盛んになりつつあるTPPと増税問題。
不思議なのは、これに賛成しているのは経団連とマスコミである。
まるでタッグを組んでいるとすら見えるこの構図は、ある種そこにどのようなメリットがあるのかを考える必要がある。
そもそも、新しい仕組みや既存の制度を改変する場合、その矛盾がどこに生じている(=変えるべき)理由と、変えた後をどのようにしたいのかという目標が明確でなければならない。ところが、この2つの問題に限らないが理由や目標を曖昧にしたり制度自体が目的化されている傾向があまりに強いので胡散臭さが抜けきらない。

TPPについて、よく似た事例があることに気づいた。それを少し書いてみたい。

まず、輸出企業が主体の経団連がこれを推すのはある意味わかりやすい。
関税をゼロにする=こうした企業にとっては輸出促進策だからである。
他方、その代償は輸出競争力のない生産物、サービスなどを提供している分野である。外国からの安い製品に駆逐されてしまうのだ。
さて、こうしてこれまで守られてきた製品(中心的に語られるのは農業だが、私はマスコミや、医療、法律などあらゆる資格・許認可事業は全て同じ穴の狢だと思う)は外国の企業に取って代わられる。日本が勝つためには何が必要か?それは単純に円安だ。

では、消費者たる国民にとっては何が有利なのだろう。
円高は生活する上では有利である。ものが安く買える。特に、今お金を持っている人にとって有利である。
今日本でお金を持っているのは誰か?実を言えば高齢者と企業である。
企業も国民だと考えれば、結局既存の権益を持っている人間に有利なのである。
しかし、他方で雇用が減少する。すなわち二極化が始まる。これは直接的にはわかりにくいが社会混乱の引き金となる。雇用の減少は何を意味するか?それは若年層の働き口が今以上に減ることを意味する。
実を言えば、国内的にはTPP推進は日本人を国外に出るように推進する施策でもある。
だって、輸出企業は基本的にそれを目指しているではないか。
弱肉強食を推進し、メリットがあるのであれば自由に行おうというもの。それは確かに自由の名にふさわしいが、その結果が住みやすい日本という国になるかは疑わしい。自己責任社会をもっと追究しようというものだ。
結局、今資本や力を持つ者たちが有利なスタートラインに立つ。しかも、外国企業も含めてである。
だとすれば、国を徐々に解体していくようなシステムでもある。
外で活躍せよ。日本人がユダヤ人や華僑のような民族に対するアイデンティティを持ち続けていられるのであればそれも選択肢の一つかもしれないが、それは直接的には国民に問いかけられていない。

外国企業が日本で自由に商売する。
それは、税金は外国で払って日本で儲けると言うことと同じ。
もちろん、日本企業もその逆ができる。
しかし、自由が徹底されると企業は税金の安い国に移るだろう。
結果、日本は簒奪されるだけの国になる。

こうした事例はこれまでも何度も見てきた。
交通が便利になれば地方が栄える。。。と信じて道路も鉄道も整備してきた。
高齢化も進んで、先が見えない地方ではそれが正解だとみんなが訴えてきた。
結果生まれたのは、若者の流出。
文化の画一化。都市からの商品の流入

これって、今の日本とTPPの関係に近くないか?
それで地方は成功したのか?
日本国内であれば、地方交付税でお金は再分配される。しかし、世界ではそれはない。

では、地方は都市と離れて不便なままがよいのか?
日本のことを経済面でガラパゴスと良く言われる。
それは否定的な文脈で語られるが、世界では通用しないものの独自の文化を花咲かせたポジティブな見方もできる。グローバル社会での成功を正しいと見ればガラパゴス化はネガティブに判断されるだろうが、そこに住む人たちにとってはどうなんだろう?
今の地方都市は、交通の便が良くなって本当にいい状態になったのだろうか?

それは、都会にものが売れる人のみが幸せになったに過ぎない。
全体としての衰退は継続している。
地方が復活するとすれば、それは都市にものを売るからではない。その場所に住みたいと思う住民を増やせることなのだ。要するに、住民=国民を増やすこと。
それは世界とのボーダーラインを無くすことでは生まれない。オリジナリティを高めることで生まれる。
世界との敷居を下げるのがTPPだ。それは一部の商人に利するものではあっても、地域全体を幸せにするものではないのだと思う。
お金以上に、地域の個性などを高める努力。オリジナリティを追求する環境整備。
それが重要だと感じる。

「不況が長引いたために、企業のエゴが強くなってきている。その原因は政府の経済施策が間違っているためであろう。」