Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

スイスの無制限為替介入について

私は経済の専門家でも何でもないので、認識が間違っているかもしれない可能性も十分あると思うのだが、それでも気になったので自分なりの考え方を書いておきたい。

スイスという国家がこのように特例的な行動に出るのには理由がある。
スイスはEUに加盟してない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9
通貨もスイスフランであり、ユーロとは別通貨である。

スイスがユーロに対する無制限な介入に踏み切ったと言うことは、フラン高の阻止に本格的に踏み込んだと言うことである。それは、ユーロ経済圏の不安定化によってユーロとは独立したスイスフランが資金の逃避先として選考されているということだ。しかし、フラン高は観光や輸出により経済を成立させているスイスにとっては致命的でもある。
フラン高は、スイスが望んだことではない。そういう意味では、円高と構図はほぼ同じであろう。

スイスのGDPに輸出が占める割合は、2010年で約35%である。
http://www.jetro.go.jp/world/europe/ch/stat_01/
日本はおよそ17%程度なので日本よりは倍の影響をフラン高により受けることになる。輸出には観光事業が含まれていないが、これも含めるともっと深刻だろう。

だから、荒技とも言える無制限の介入に踏み切った。ユーロとの為替差を無くそうというのだ。これは、一種の通貨安政策である。
ドルも安い、ユーロも安い。これでは輸出で生きている国はやっていけない。だから、通貨安において歩みを共にするということである。
似たような政策は、既に中国や韓国が実施している。これらの国々はGDPに輸出が占める割合はスイスより高いのだから。

為替介入を行うためには、ユーロを買ってフランを売ると言うことを続ける。売るためのフランをどうするのか?
日本の為替介入では、国が借金をして捻出する。だから、介入をずっと続けることは通常困難である。

では、中国はなぜ固定相場を実現できているのか?
それは、元という中国の通貨を刷って(借金で国内から集めるのではない)それをドルと交換しているのだ。
本来は、元が増えれば元安になる(通貨安)。ところが、それ以上に中国の成長が高いと考えられているから、元高の圧力が今のところ止んでいない。

スイスの場合も、借金で無制限にユーロを買うと言うことは出来ないだろう。いつの時点かはわからないが、フランを刷ってそれで支払うことになる。そうすれば、結果的にフランの量が増えて通貨は安くなる。別に無制限に介入するなどと言わなくても目的は達すると言うことだ。

ただ、それは通貨量が増える=インフレを招き寄せると言うことにも等しい。日本のようにデフレギャップの大きな国ならいざ知らず、既にインフレ傾向のある国がそれを行うのは諸刃の刃なのである。
だから、単純に通貨を刷るのではなく、介入という表現にしてインフレの過度な上昇を防ごうと考えているのではないだろうか。

今のところ、日本政府がどうするかはわからない。

しかし、世界は通貨安競争に踏み込まざる得ないフェーズに突入した。そんな気配を感じさせる今回の発表ではないかと感じている。
それが進むならば、勝ち組はいち早くそれにチャレンジした国か、若しくは内需を振興して競争に加わらなかった国になるのではないだろうか。

「今の時代、ものは溢れているので先進国ではハイパーインフレなどは生じようがない。それがあるのは、戦争が発生するか貿易がストップするかが前提条件である。」