Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

NHK

 NHKがネット放送についても課金する方向で検討しており、それに対して高市総務大臣が釘を刺したとのニュースが流れていた(http://www.sankei.com/politics/news/170728/plt1707280050-n1.html)。以前より、NHK職員の高給問題や公共放送の在り方については多くの議論がなされているように思う。NHKはネットにおける放送に対しても受信料を徴収する方向で検討している(http://www.sankei.com/entertainments/news/170725/ent1707250004-n1.html)が、これによればスマホなどでは受信アプリをインストールした段階でその義務が発生するとしているようだ。
 なお、これに関連して現在「受信料体系のあり方について(http://www.nhk.or.jp/keieikikaku/03/shared/pdf/shimon.pdf)」に関する答申(案)に関するパブリックコメントが求められている(8/15まで:http://www.nhk.or.jp/keieikikaku/03/index2.html)。この答申を眺めてみると、インターネット等メディアの広がりを通じて受信料の関して検討しながらも、時代の変化に伴う公共放送の位置づけについては触れていない。要するに、そこを不可侵領域と置きながら以下に安定した財源を得るかについて考えていることがわかる。

 この話を、単純にNHKの傲慢さという論点で考えるのは容易だろう。だが、最も重要なのは情報伝達手法が拡大した現代社会において、公共放送とはどの程度必要なのか、あるいはその際の公共放送に求められる内容や規模は如何ほどなのかという問題であろう。いずれにしろ、現代社会でも何らかの形での公共放送は必要であり、それを維持するために財源が求められると私としては考える。だが、その根本の今の時代に合った公共放送とはどういうものかについてはNHKの検討は触れていない。
 NHKは、現在TVで総合、教育(Eテレ)、BSを2つ、AMラジオが2つ、FMラジオが1つという7つのチャンネルを有している。また関連会社を数多く所有しており、コンテンツ管理を含めて一大情報コングロマリットとも呼べる規模を誇っている。連結売上が7500億を超える規模であり純利益も300億を超えている(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%94%BE%E9%80%81%E5%8D%94%E4%BC%9A)。通信系では民間最大売り上げを誇るフジHDを超えるもので、通信系ランキングとしても6位に該当する(http://www.nikkei.com/markets/ranking/page/?bd=uriage&ba=0&Gcode=65&hm=1)。
 要するに日本最大の放送機関なのだ。公共放送が、日本最大規模である必要があるのかどうかということが、まず最初に検討されるべきではないかと思うのである。一部の人が主張するように、単純にNHKを解体すればよいとは思わないが、公共放送としての意味を考えるとNHKの規模が現状で適切であるかを考えるのは重要である。

 最初に考えるのは、現在NHKが取り扱っている情報の全てを公共放送が担うべきかどうかという問題であろう。視聴率に一喜一憂せず良質な番組を作っていくという意味では、一定の満足度を得ているかもしれない。だが、その考え方は何処までも拡大可能でもある。良質であればよいというものではなく、むしろ必要最小限の公共放送がどういうものであるべきかを考えることが求められる。
 またNHKが、放送技術の発展に寄与しているという意見もあろう。ハイビジョンにしてもその他の技術に関してもNHKがリードしてきた役割はそれなりに大きい。NHKが民営化されれば、こうした技術の発展に寄与しなくなるということは十分考えられる。だが、極論を言えばその部門はNHKになければならないという訳ではない。
 ここで問題としているのは、NHKの役割ではなく公共放送の担うべき範疇である。迂遠な話を書いて申し訳ないが、公共放送たるNHKに必須に番組はどれであり、そのために来着様な規模は何なのかを議論すべきであるということだ。それ以外の部分が必要ならば、その部分はCSやケーブルテレビなどと同じようにペイ・パー・ビュー方式(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC)にすればよい。スクランブルをかけて契約者以外が見れない様にすれば良いのである。

 現在NHK問題で最も重要なポイントは、NHKが担うべき部分とそうでない部分の議論がなされていないことである。もちろん、NHK側からすれば規模が大きいほどに有利な面は多々あろう。だが、それは視聴者側からの要望ではない。そして、極論を言えば朝の連ドラや大河ドラマは公共放送として必須のものとは言えないと私は考える。ニュースのみを報道すれば十分であると言えなくもない。
 公共放送としての必要な部位について、私はこう書いたが様々な異論もあろう。だが、全体を保持したままの受信料確保の議論ではなく、民放も拡充した現在において公共放送として求められる役割は何かという議論をすることは重要ではないか。その中でNHKが担うべき範疇の議論がなされれば、必要なものは必要でその受信料は税方式で集めても良いと思うのである。

 NHKは巨大になり過ぎた。単純にNHKの考え方が気にくわないとか、民営化すべきだというのはたやすい。だが、だからこそ今の時代に合ったNHKの規模やスタイルは何か。そのことを問うべきではないだろうか。