Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

足元を見る時代

 社会は期待と現実の狭間で揺れ動くもの。まさに株価において典型的に現れるように、人々は期待により現実よりも少し上の夢を許容すると共に、さらにより大きな夢を追いかける。しかし、夢追いはいつまでも続く訳でもなく、個人としてもいつかは目の前の現実と向き合う時代が来る。こうした状況は個人の集合体である社会でも、大枠において同じではないかと思う。
 現実は全く追いついていないが夢が突き進む胎動期を経て、夢に少しずつ現実が近づいていく成長期。現実と夢の距離が縮まらなくなる停滞期を過ぎ、夢のレベルを切り下げ現実に近づける衰退期。現代の日本社会を考える時に、個人的なイメージとしてはその衰退期ではないかと感じている。最も衰退期が悪い暗黒の時代であると言うつもりはない。

 こうしたサイクルは基本的に循環する。衰退期の次には再び胎動期が現れる。衰退期から胎動期に移るには何らかのカギが必要になると思ってはいるが、どちらにしても衰退期を経て新たな胎動が感じられ始める時、人々は新しい夢を見始めるのである。だからその流れ、社会的なバイオリズムと言っても良い。それにあった方法論や思想がその時期に受け入れられやすくなる。
 もちろん経済が壊滅的になったり、あるいは戦争の発生等によるサイクルの破壊があれば、その流れは大きく変わるかもしれないのだが、少なくとも好況不況の流れと同じように社会にも人々の考え方にも大きな揺らぎが存在している。
 こうした社会変動のスパンは人間の一生からすれば少し長いものであるため、私達は経験ではそれを適切に理解することは難しい。もし仮に私が思うように今が衰退期だとすれば、それを抜け出すための鍵あるいはきっかけを生み出すための何をすべきかを真剣に考えなければならない時代なのだと思う。

 逆説的な話にはなるが、夢を現実に近づけざるを得ない時代だからこそ、そんな時代であっても掲げたくなるような素晴らしい夢と、あたかもそのためにする努力は惜しくないと思わせるようなロードマップが求められるのではないかと感じている。
 実はその時、既存の概念は役に立たない。現在までの停滞の継続を乗り越える新たな概念が求められる。例えば、保守やリベラルとか、民主主義か社会民主主義なのかと言う既存の概念の延長伝上では、このループを新たなサイクルに引き寄せられないのではないかと思うのだ。おそらく突然変異のように、連続性を持たない何かが生まれる必要がある。

 そうは言いながらも、人類の確立してきた統治体制などたかが知れている。神権政治、合議制、独任制、部族制、貴族制、封建制君主制、共和制、民主制、他にも分類方法はあると思うし、細かなケーススタディはいるいろとできる。社会としての生産性が低い時代には強権的な政治体制が生まれやすいと思うし、逆に言えば食うに困らない社会は争いが生じにくく、合議的な体制になりやすい。
 同じ民主制の中でも、権力を集中した方が効率的で丁度良い時期もあり、逆に権力を分散させてお互いに牽制し合わせた方が良い時期もある。全ては社会や世界の状況により変化するものであり、確定的に最適なものは存在しない。
 次の政治体制や統治体制がどのような形になるのかまでは、私の能力では全く看過できないが、少なくとも何らかのパラダイムシフトが必要になっていくのではないかと思っている。しかし、そうした大きな変化は狙って起こせるものでは無い。狙ったそれは、あくまで既存の概念から離れ得ない。突然変異は、環境の変化に突如として合致する形で発生する。
 とすれば、私達が今見るべきは本当に意味で私達を取り巻く環境がどうなっているのか、同時に私達自身がどんな状況にあるのか。この両者を常識を振り払って考えてみることではないかと思う。

 私達は、こんな時代だからこそ大きく掲げられる夢を生み出すために、今までのしがらみや凝り固まった考え方、主義主張を離れて、一度自分自身をそして自分が生きている社会を、それらの足元を忌憚なき目で見なければならないのではないだろうか。