Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

選挙と年齢制限

【都構想】 20代、30代、40代、50代、60代が賛成多数 70歳以上が反対多数 → 結果「反対」(http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1840548.html

 世代間闘争という言葉に代表されるように、現代社会では世代によって支持する政策が異なるというのはある意味当然のことであるとされる。ただし、本来は高齢者の投票率の高さを嘆く前に若者や壮年者の投票率が低いことを悔やむのが基本的な筋だと私は考える。
 もちろん、「忙しくて投票に行けない」という声があるのも知っているが、正直言えば行く気さえあれば投票は一瞬で終わる。期日前投票を利用すれば投票が不可能だという人はおそらく少ないと言ってよいだろう。「投票に行く暇がない」という言葉は、結局のところ「投票に行くのが面倒臭い」という言葉を置き換えているに過ぎない。
 投票は、個々の有権者が社会全体を良くするという目的に従い行うのが理想ではあるが、現実には自己の利得に従い行動する人が多く否定的な人が反対行動を起こす。都構想に関する住民投票でも、残り少ない人生を変革の不安(利得の減少可能性)により過ごすことを嫌うのは、ある種わかりやすい結果であった。
 高齢者全てが将来の若者のことを考えて行動すれば結果は変わったかもしれないが、そう思えるような後押しをできなかったことが反対票が僅かながらであっても上回った理由であろう。

 ところが、一部ネット上には投票に年齢制限を加えてはどうかという議論が散見される。例えば、60歳以上の投票を1票ではなく0.5票とカウントする、あるいは一定以上の年齢の高齢者の投票権を剥奪するなどの意見である。高齢者の意見が強く反映されている現代の政治において、制度の中身を変えることで状況の変革を目指すという方法論はかなりわかりやすいものではある。
 仮にそのような状況であれば、今回の都構想住民投票は結果を見る限り逆転していた可能性は少なくないであろう。しかし、本当に年齢制限を設けることが正しいのかはしっかりと考えて見なければならない。
【辛坊持論】次世代の意思高齢者が押しつぶした(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150524-00000078-sph-soci

 現在、確かに未成年の投票権は認められていない。投票以外でも若年層では様々な権利が制限を受けている。飲酒・喫煙・自動車免許など普通に考えれば未成年に対する制限は当たり前ではないかと認識するものではあるが、これは基本的人権に対する制限なので原則から言えば例外事項である。
 近年、高齢者の運転免許更新が難しくなっているが、これも社会安全を考えた時に一定の制限を加えている制度と言えなくはない。高齢化に伴い反応速度や瞬時の判断力が低下するため、ある程度はやむを得ないと大きな社会的合意があると考えても良いだろう。

 しかし、運動能力が若い時より大きく落ちたからと言って思考能力が必ずしも同様に低下しているわけでは無い。すなわち、単純な判断をする力は高齢者であっても十分有している可能性は高い。もちろん認知症など病気により思考力や判断力が低下している人もいる。その上で、こうした判断力の低下した高齢者を動員して投票させている高齢者施設に関する話も聞いたことはある(真偽は確かめていない)。
 判断力の低下した高齢者が自ら考えてどれだけ投票に行くのかはわからないが、現在の日本社会の高齢化率は25%程度(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2014/gaiyou/s1_1.html)であり、地方都市でも30%を超えるかどうかという現実を見れば、有権者に置いて高齢者が占める割合が50%を超えていないことは容易に判断できる。
 これも概数で申し訳ないが、高齢者(ここでは65歳以上とする)の投票率はおおむね60〜70%ではないかと考えている(http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/rxr_detail/?id=20130307-00028573-r25)ので、冒頭で書いたように日本の場合には若者の投票率が低すぎる(約30%)ことが最大の要因であると考えた方が良い。

 だとすれば、高齢者の選挙に関する権利を抑制することを考えるよりも前に、若者の投票率を高めるための方法論を検討した方がよいのではないだろうか。一つの方法として提案されているのがネット投票(http://tensei.nanaki.biz/gssenkyo.html)である。もちろん不正防止のために本人認証を確実にしなければならないという大きな問題はあるが、現在進められているマイナンバー(http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/)と組み合わせることに加えて、不正に対する罰則を高めることで担保出来ないものだろうかと思う。
 もっとも、これまで投票しなかった若者が多く投票するようになると、最初の内は無責任な投票行動が高まるという面が問題となるだろう。これまで投票しなかったということはある意味において選挙に興味がなかったことの裏返しであって、選挙に対する意識が高いのに忙しいから投票できないという人の数は限られていると思う。
 ただ、それは逆に言えば選挙の「義務(三大義務ではない)」を放棄させ続けたこれまでのシステムに原因がある。選挙に多く接するようになれば、最初の頃こそ適当にウケ狙いに走ることもあるかもしれないが、徐々にではあるがきちんと考えるようになっていくだろう。
 逆に、若者が真剣に政治や経済などを考えないような状態に放置してきたことが、国家として何よりも問題なのだと考えるべきであろう。大切なのは、選挙投票は「権利」である以上に「義務」であるという意識を社会に広めることである。

 さて話がかなり脱線してしまったが、私の意見としては高齢者の選挙権を抑制することについては積極的な賛成には与しない。ただ、認知症などの判断力の極端な低下が認められる人に対する選挙権の停止はあっても良いと思う。もちろん、それ以上にネット投票の導入(あるいは住基カード等によるコンビニでの投票を可能にする)などなんらかの選挙方法に対する改善を進めることが必要ではないかと思う。
 というのも、高齢者が既得権益として利益誘導しているという話ではあるが、若者が社会全体を考えて投票するという保証もまた無いではないか。利益誘導の分捕り合戦を経て、最終的な落ち着きどころを探すという経過が必要だと思うのだ。しかし、その前提条件すら現在は満たしていない。結局のところ、選挙の意味を各国民一人一人が考えて投票するしかないのである。
 また、政治が発する言葉も高齢者に将来を考えて賢い行動をしてほしいという高齢者に対する尊敬が見えてくることはない。むしろ、選挙票としては期待しながら制度的にお金だけ渡せばよいというあたかも存在を蔑にしている気配さえ漂ってくる。
 大阪都構想においても30%近い高齢者が賛成を示した。私としてはそのこと重視しても良いのではないだろうかと考えている。