Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

乗っ取り主張とリスク

 巷の情報によると、最近は頻繁にTwitterアカウントが乗っ取られるらしい。いろいろな発言を総合して考えると、Twitterは非常に危険なアプリケーションであるということを多くの芸能人が必死に訴えている状況が見えてくる。
 TwitterはFBのように原則実名の縛りがないため、偽のアカウントによる成りすましが問題となったケースもこれまで数多く見られたが、乗っ取りというシステムの脆弱性を利用した犯罪が数多く行われているのであるとすれば、はなはだ大きな社会問題であると言えよう。

PASSPO☆槙田紗子Twitterが乗っ取り 直前に悪口や枕営業ツイート(http://news.livedoor.com/article/detail/10110251/
「悪いのは私じゃない症候群」 『Twitter』乗っ取り虚言疑惑の香山リカさんの書名が話題に(http://news.biglobe.ne.jp/trend/0510/gad_150510_2024741438.html
【敗北】まんまとツイッターを乗っ取られたでござる / わずか9分間で177レイバンhttp://news.biglobe.ne.jp/trend/0511/rct_150511_1373799555.html
Tesla、ウェブとTwitterアカウントを同時に乗っ取られる(復旧済み)(http://jp.techcrunch.com/2015/04/27/20150425teslas-site-and-twitter-account-hacked/
SNSセキュリティ、対策は大丈夫?(http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1505/12/news131.html

 さて、本当に乗っ取られているのかどうかは警察などが捜査でもしない限り真実が見えてくることはない。ただアカウント乗っ取りがあることは間違いない事実であり、パスワードに関する無防備さや怪しいサイトなどの取り扱いに関する無知が原因となっていることは間違いない。
 それでも、アカウント乗っ取りは多くの場合スパムメール(あるいはコメント)発信のために利用されているのが現状で、特定の人物を狙いその情報をかく乱するために使用されるケースは非常に稀であることは容易に予想できる。本当に特定人物のアカウントを狙って乗っ取った場合には、素早くパスワードを変更して訂正や停止の措置を取れなくすることができるはずだが、それが行われた形跡はほとんど見かけない。

 特定人物のアカウントを乗っ取る理由は、愉快犯もあろうがその人物に何らかの興味を抱いていることは間違いないであろう。権威を失墜させたり、あるいは誤った情報を大量に流すなどの、信用失墜効果を狙ったケースが多いと思われる。
 香山リカ氏はさすがにまずいと思ったのか素早く誤操作の可能性があると訂正している(香山リカツイッターは乗っ取りでなく誤作動の可能性がある。あと番組出演は辞退する:http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1839433.html)が、誤操作が一体何なのかは笑いながら流すとしても、適当な嘘が当人の信用をより失墜させるのは間違いあるまい。
 彼女の場合には、内輪でのポジションを維持するための言説を外部に垂れ流してしまったが故の問題ではあるが、多くの人をこき下ろしながら自分もその一員であったことを認めたその自爆芸はある種見事であると思う。

 さて、私は以前より書いているとおりFBもTwitterもLineもSNSと呼ばれるものは一切用いず、このブログのみを用いている(ここを始める前はmixiに少し居たが、それも辞めている)。主たる理由は対応が面倒だからであるが、それでも世の中には手間をかけても繋がりたい人が少なくないことはわからなくもない。
 皆、寂しいのである。自分だけの隠れ家のような場所を欲していると言っても良い。今の時代は誰とでも繋がれるが、批判はなるべく受けたくはない。その微妙なバランスを比較的容易に満たすツールとしてSNSは地位を得ている。
 私はそれを面倒だと書いたが、リアルなつながりを十二分に得ていたとすればこそ言える話なのだろうと思う。それが不十分であったり、あるいは納得していない・満足していないがための代替手段としてSNSは活用される。そして、現実の生活における繋がりを自分で消化納得しがたい若いころの方がSNSを必要とするのだろうとも思う。あるいは、自分自身を押し殺して生きていると思う人ほどそれを必要とする。

 さて、Twitterに限らずSNSにはアカウントを乗っ取られる脆弱さがあることはわかったが、多くの場合それは利用者の不注意によることがわかる。もちろん特定の秘密を狙った乗っ取りがないわけでは無かろうが、個の場合でもTwitterそのものの責任とすることは容易ではない。
 最も責任逃れができる方法が乗っ取り犯(架空かもしれない)に問題の責任を転嫁する方法であるが、最初の例でも挙げたような形でのアピールではシステムそのものの脆弱性を主張しているようにも見える。「乗っ取られたのだから仕方がない」という開き直りは、それを主張する人からすれば当然犯人異性人転嫁しているつもりであっても、主張そのものはシステムの不備を言っているようにしか聞こえないのだ。
 よって、多くの人はまず「狂言ではないか」と疑問を持ち、次に不注意による漏えいを考え、最後にシステムの安全性に疑問を抱く。自分に責任がないことを強く主張すればするほど犯人の責任ではなく、企業の責任を追及しているように聞こえてくる。システムを提供する企業からすれば、非常に理不尽に感じられるのではないか。

 システムに一切問題なしということはなくとも、だからと言って責任を擦り付けられても困るということになろう。乗っ取り疑惑が頻発して出されると、一部のそれを知った人たちからの「おせっかいな善意」の通報が企業の困惑を助長するケースも多くなる。
 そして企業は信用失墜を防ぐために、悪意と考えられるそれに対して防衛措置を取ることもある。訴訟に至るとは必ずしも言えないが、少なくとも無過失であることを乗っ取りを主張する人に確認あるいは証明することを求めることになる。香山氏はそのことを理解したからある意味利口(だが筋の通らない形で)に前言を翻したのではないかと私は想像するが、本当のところが判る筈もない。

 Twitterは他のSNSよりも容易に書き込みができるという利点を有している。量に関する制限も多いが、多くのフォロワーを有することは影響力の代名詞ともあるため、利用する有名人は少なくない。だからその際にはトラブルの波及力も大きい。
 他方、個人レベルでは小さなつながりしかなく影響力が小さいケースことも多いが、それでもバカッターと呼ばれるように内容に応じてあっという間に社会に広がってしまうことも少なくない。リスクとメリットを比較した場合、どちらの方が大きいのかを考えるとなかなか判断は難しい。
 もちろん、多くのケースであるように自分はそんなミスをするはずないとほとんどの人は考えているのであろうが、影響力を気にするほどに不必要な多くを語ることになるという罠が待ち構えているのである。