Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

ハゲ枠考

 今回は思いっきり茶化したエントリなので表現内容に憤慨される方もいるだろうし、差別的な用語を用いていることを非難される方もいるだろうが、できれば寛容な心で許して欲しい。

 さて、テレビではバラエティ番組が多く放送されており、ひな壇芸人と呼ばれる人が数多く存在する。お笑い芸人もいればグラビアアイドルも出演するなど様々な人がこの立ち位置にいるが、番組の進行上もあり一部の属性で占めると言うよりはなるべく幅広いジャンルの人を呼んでいる実態がある。
 こうした出演者の一部は一般的に「○○枠」と言う形で表現される。よく聞くのは、適切でない表現であるのは承知した上で書くと「ハーフ枠」とか「おかま枠」あるいは「外国人枠」などがあり、多くの芸能人がその枠を得るためにしのぎを削る。
 枠としては番組内容に応じて他にも「知識人枠」や「ジャーナリスト枠」など様々な種類のものが存在しているが、その他に標準よりかなり太った体型の方を扱う「デブ枠」が明確に存在していると思う。

 ところで、もてない男性の典型として良く例示されるのが「デブ」と「ハゲ」であると考えている(最近は「キモオタ」もあるかもしれれない)のだが、どうもテレビを見ている範囲では「ハゲ枠」の方は存在していないのではないか。別にテレビに頭髪の薄い方が出ていないという訳ではないが、明確な枠としての「ハゲ」ではなくその他の枠に出演している人がたまたまそハゲていたという感じのようである。
 そこで最初に考えるのは、「デブ」と「ハゲ」の扱われ方にこのような違いがあるのかと言うことである。男性の私からすれば両者の違いにそれほどの差異を見付けられないのだが、女性目線で見れば「デブ」は「ハゲ」よりもマシということになるのかもしれない。
 ただ、ではテレビで禿げた人(自ら剃っている人は除く)を見かけないかと言えばそうではない。放送上、「ハゲ」が許容されない訳ではない。

 例えば、太っていても格好いい人もいるし愛嬌のある人もいる。しかし、これは禿げていても格好いい人もいるし愛嬌のある人もいるのだから明確な差異とは言えないだろう。こう考えると「デブ」と「ハゲ」の間には差を付ける必然性は高くない。それでも現実には歴然とした差が付けられているとすれば、両者に序列の如き差を付ける要因を考えてみようとなるではないか。
 視点を少し変えてみると、本来「デブ枠」も「ハゲ枠」も求められる枠ではないのだが、「デブ」の方にはそれを打破する力(あるいは要求)があり「ハゲ」の方にはそれがないと仮説を立てることもできるのではないかと思う。
 例えば、「コミカルさ」の面において「デブ」はその存在自体で笑いを取れるが、「ハゲ」は笑いを取ることが難しいということは考えられなくもない。太っていることをネタとして利用してもそれほどの非難は生じないが、禿げていることをネタに笑いを取れば大いなるクレームが殺到するのかもしれない。
 はたまた、太っている人よりも禿げている人の方が画面上卑屈に見えるので、受け取る側からではなく発信する側からの理屈で決められているとも考えられる。
 もちろん、大した理由はなくなんとなく今の流れが出来上がったと考えるのが一番自然なのだろうが、ネット上でも「ハゲ」AA(アスキーアート)はかなり頻繁に用いられるが「デブ」のそれは部分を抽出して作られてはいない。

 「ハゲ」も「デブ」も身体的特徴である。「デブ」の反対は「ガリ(あるいは別の表現があるかもしれない)」となるのだろうが、この場合は太り過ぎていても痩せすぎていても標準より離れることになる。中間が丁度良いという訳だ。太る方向には制限がないので、世界には体重500kgなんていう猛者もおり標準体型を挟んで「デブ」と「ガリ」は対称ではないものの、イメージの中ではバラスに合点がいきやすい。
 実際、痩せた芸人のみを集めてのバラエティ番組があったりするのも、体形については番組上で多少いじっても許容されるという社会的認識があると考えても良いだろう。
 他方、「ハゲ」の対極に髪の毛が多すぎる「フサ」があるかもしれないが、これは中間が標準と認識されるものではない。むしろ二極対立構造があり「ハゲ or フサ」の決定的な存在の違いが見て取れる。この社会対立構造があまりに決定的だからこそ、テレビを通じてそれをいじることが困難だと考えられているのかもしれない。
 また、「デブ」の場合には男性女性を問わずに用いることが可能だが、日本社会の場合(あるいは世界を見てもそうなのかもしれないが)女性の「ハゲ」を隠そうとする構造は非常にセンシティブである。すなわち、男性のみが実質的にその枠を掴みうる。
 もちろん男性でも、頭髪が薄くなったことをカツラにより隠している人は少なからず存在し、テレビ出演している人にも常に「ズラ」疑惑が囁かれる。一部に自ら謝罪してズラを取り払ったアナウンサーもいるが、メイクと同じ線上で考えればこれもまた許容範囲なのだろう。

 結局のところ、「ハゲ」は隠せるし隠したい人が多くいるが「デブ」は隠せない。そこに決定的な差があるような感じがしたが、もちろんこれは私の勝手な思い込みである。