Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

家族の望み

私が「解雇」されたせいで大学受験を諦めた娘…会話少なく、父として何もしてやれない(http://www.sankei.com/premium/news/150110/prm1501100018-n1.html

 この質問が、ネットのいくつかの場所で取り上げられたりしている。詳細はリンク先を読んでほしいが、掻い摘んで言うと長女は学費を出して大学までやったが、その後リストラにあい次女は大学にやれず自分の力で奨学金を得て専門学校を出た。次女があまり口をきいてくれないがどうしたらよいのか、というものである。

 長引いた不況のせいもあって、このようなケースはまだマシな方ではないかと思ったりもするが、今回のケースでは、そもそも次女が大学に行っていたとしてもあまり会話はなかったのではないかと感じた。もちろん家庭ごとに様々な状況や理由があるので、あくまで私が考えた想像であって何ら根拠があるものではないのだが、父親がリストラを理由に子供二人に差をつけたことが次女の反抗(不満)の源泉だと考えたいという気持ちを質問から強く感じたのである。
 父親が感じているからと言ってそれが問題の本質とは必ずしも限らない。こうした心理的な問題は多くの場合複合的な要因が積み重なり不満が爆発する。このケースで言えばまだ爆発したわけでもなく、正直言えば本当に不満を抱いているのかすらも曖昧だ。
 ただ、母親も手の打ちようがないように話していることもあり、問題を抱えていないという話ではない。この問題の核心を母親が知っているのかどうかは判断できないが、少なくとも父親に伝えようという気持ちがないことはわかる。

 想像に想像を重ねるような内容で申し訳ないが、少なくとも次女は自分が抱えている葛藤を父親に相談したくないということは間違いないだろう。その原因について父親も薄々感づいているかどうかはわからないが、リストラに押し付けることで言下に自分のせいではないと主張しているように見える。
 当人にそれを聞けば否定するであろうが、あたかも言い訳っぽく聞こえる今回の質問を見た時最初に思ったことが、このような質問をかける時点で家族のコミュニケーションがなかった(あるいは家族の心情に想像を及ぼすことがこれまであまりなかった)のではないかというものである。
 リストラにあったことは確かに不幸なことだと思うが、だからこそ家族が協力していこうという雰囲気がそこで醸成されなかった。もし次女が家庭の事情をきちんと理解して、その時の方針を自分自身で決めていたならば、今回の質問にあるような行動を取るだろうかと思ってしまう。

 もちろん、やむを得ず専門学校に自分で奨学金を借りていくことは不本意かもしれない。しかし、国公立大学に進学すれば学費も安く、また親の収入が低ければ学費免除の制度もある(一定以上の成績は必要だが)。これは私立大学の場合であっても皆無ではない。
 でも、それが無理だと判断した故の専門学校行きであるとすれば、リストラ云々は別にして進路としておかしな話ではないだろう。ステイタスとしての大学卒業(あるいは友人との交流のみを希望して)を親がどう考えるかはいざ知らず、そこには一種の社会的呪縛から来る歪みの様なものを感じとる。
 そもそも大学に行くことがそこまで絶対的なものであるのだろうか。現在、大学進学率はほぼ50%程度で推移している(http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2013/04/17/1333454_11.pdf)。逆に言えば、半分の学生は大学に進学しない。
 生涯賃金を考えれば大学卒業の方が高いという面はあるが、これも平均値を見たものであり高収入を得ている人の大部分が大学を出ているというわけではない。むしろ、専門の道に早くから進み地位を確立する人も少なくない。

 もし、次女が与えられた環境(自分の能力や努力も含めて)からして不当な認識を抱いているとすれば、それを正しく諭すのも親の役割の一つである。長女との差が生じてしまったことへのフォローは必要かもしれないが、それも幼い子供ではないのだからどこかで妥協しなければならないことは理解できるであろう。
 しかし、最初から書いているように今回のケースでは単純に次女が旋毛を曲げたという感じには受け取れない私がいる。むしろ父親のリード力のなさというか、家庭の状況を理解していなかったのではないかという印象が強い。おそらく、問題は父親(あるいは母や姉を含めた家庭環境「依怙贔屓等」)があったのではないか。そこにダメ押しのように進学問題が浮かび上がってきたため、問題が発生したとは考えられないだろうか。

 繰り返しになるが、あくまでこれは私の想像にすぎない。具体的な背景を知っているわけでもなく、質問のみから得た個人的な感想を書いているに過ぎない。
 そもそも、子供は成長するほどに親を必要としなくなる。見方を変えれば、親離れを受け入れられない父親の狼狽ぶりとも取れなくはない。一番の問題は父親の認識不足ではないかという率直な感想を持った。