Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

地域紛争の予兆

米で“大干ばつ”市民生活に大きな影響も(http://www.news24.jp/nnn/news89090218.html
国立干ばつ軽減センター:干ばつ情報(http://droughtmonitor.unl.edu/

 今年初頭より北米干ばつの話は一部で話題になっていたようではあるが、基本的には衝撃的な他のニュースに隠れて目立つことはなかった。今もエボラ出血熱とISISの問題が世界の話題をさらっており、大問題であるにもかかわらず主要なニュースにはなっていないようにも見える。
 干ばつ軽減センターの画像でもわかるように、カリフォルニア州では500年に一度の大干ばつ(2000年に一度との表現も見られる)と言われており、中南部(テキサス州等)でも干ばつが広がり始めている。世界の穀物生産地の一つである北米が生産能力を大きく落とすということは、世界的に見ても大問題となる。

 かつて、ロシアの小麦不作(輸出停止)による小麦価格の高騰が実質的にアラブの春(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%96%E3%81%AE%E6%98%A5)を引き起こした原因であるとの声も強い。アメリカは穀物の輸出国であり生産量も中国に続き世界第2位である(http://www.globalnote.jp/post-1279.html)。トウモロコシは世界1位で、小麦については4位であるもののロシアを若干超えるレベルを誇っている。仮に人口の多い中国とインドを除くとユーロに続く2位となる。
 要するに、世界の多くの場所(当然日本を含む)に様々な形で穀物を輸出している世界の食糧基地となっている。こうしたことから、アメリカが大規模な干ばつに襲われるということが如何に大きな問題であるかは容易に想像できるであろう。

 アメリカは穀物の輸出国であるから、仮に多少大きな干ばつが生じても時刻を賄うには不足しない可能性も高い。ただし、それは他の国々に輸出しない(あるいは大規模に輸出を絞る)ということを意味している。他の場所から入手すればよいと日本は考えることができるが、当然価格の高騰が生じる(http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_kakaku/pdf/kaka_1010.pdf)。
 実は、昨年後半より世界的な穀物価格は下落に向かっていたが、現状の干ばつによりそれがどのように変化するかはなかなか読み切れない。世界全体で安定した供給がなされるのであれば北米での干ばつが社会不安を招くには至らないと考えたいところではあるが、気になるのはエボラ出血熱の広がりである。

 現状、西アフリカへの航空便はほとんど停止しているが、それでもいくつかのルートを介すれば世界中に移動できる。その結果が、アメリカで発生しているエボラ騒ぎである。というのもアメリカにおいて蔓延国からの入国禁止措置が行われる気配は今のところないし、WHOや国連は航空便の運航をできる限り回復させたい姿勢を見せている。
 しかし、未だハンドリングできていない感染の拡大は患者が頻繁に溢れだすような事態を招き始めても全くおかしくない。その時には、経済の停滞を何より恐れる国家や経済界も安全を選択することになるだろう。

 すると、仮に世界全体では食糧事情が賄えていたとしても局部的な不均一が非常に大きくなる。これが社会の不安定を招くことにならないかを大いに危惧している。こうした社会不安は、国外ではなく国内での騒乱に向かう。これからの動向について、できる限りきちんと追っていきたいと思う。