Alternative Issue

個人的な思考実験の、更に下書き的な場所です。 自分自身で消化し切れていないことも書いています。 組織や職業上の立場を反映したものでは一切ありません。

幻想戦争末期

文章「祖国がなくなれば、全てを失ってしまう」 ネット上で拡散(http://j.people.com.cn/94475/8474490.html

 非常に興味深い内容なので、全文引用したい。

 「祖国がなくなれば、全てを失ってしまう」という文章が、近頃ネット上で広まっている。その内容の一部は次の通り。人民日報が伝えた。

 いかなる時も、社会情勢が動揺し最も被害を受けるのは国民だ。国家主権と領土保全を自発的に守ることが、国民一人ひとりの共通認識であるべきだ。

 人はいつも、失って初めて今までの生活がどんなに素晴らしかったかに気づく。我々が頼れるのは祖国のみであり、祖国が強大で、安定していることが、国民の幸福と自由の前提である。

 多くの苦難を味わった過去の中国の歴史は、我々に多くのことを教えてくれる。道義とは?真情などどこにあるのか。我々は弱く、貧しくなり、団結が失われたではないか。古来よりこの世界は弱肉強食。国がなければ家を持つなどありえない。

 我々は習近平主席を擁護する。なぜなら我々の多くは自然災害を経験し、十年間の文化大革命を経験し、上山下郷運動を経験し、改革開放を経験してきたからだ。我々の世代は、経済的に貧しく文化的に立ち遅れた状態から、発展し、繁栄したこの数十年の改革をこの目で見て体験してきた。我々は、これほど大きな国を統一し、リードしていけるのは共産党だけだということを良く知っている。

 中国がひとたび共産党の指導を失えば、天下は乱れるだろう。中国が乱れることは、13億の国民の災難である。

 我々は習近平主席を信じる。なぜなら、習主席は中国の国情を良く知り、政治家としての経験も豊富だからだ。末端から一歩ずつ階段を上ってきた習主席は、中国の民情、国情、地方、中央の事情に詳しい。知恵と気迫を持ち、機知と智謀に長け、強靱さと安定さを持ち、柔と剛を兼ね備える習主席は、大局の安定に対して自信を持っている。

 我々は習近平主席を支持する。なぜなら習主席は「人を正す前に、まず己を正す」という意欲を持ち、「大きなトラにも対峙する」という勇気と戦略を持つからだ。今の中国の現状を変えるには、まず党内から、上層部から始めなければならない。また、大きな利益団体の改革にも強硬な態度で臨む覚悟があってこそ、人の心をつかみ、国民の信頼を勝ち取り、国の安泰を実現することができる。

 西洋諸国は今、中国のことを「大きいだけで強くはない国」と見ている。我々は強くなる前に足並みを乱してはならない。頭を上げ、我々の国を愛そうではないか。国と民族が良くなることで初めて、国民全体が良くなることができる。これを忘れてはならない。(編集SN)

 「人民網日本語版」2013年12月4日

 正直言えば、まだ日本と中国は多少の睨み合いこそすれども実際の深刻なトラブルを引き起こしている訳ではない。加えて、戦争に突入したいとは本音の部分でお互い考えもしていない。なぜにこのような文章が中国国内で広まっていると人民日報が伝えるのかは、国内の不満を抑えきれなくなりつつあると中国の政権が感じているからに他ならない。
 別に戦争により国が崩壊する訳ではないし、そもそも日本もアメリカも武力で中国の領土を奪うなどと言う前近代的な思想は抱いていない(中国は異なるかも知れないが)。そんなことよりも何より中国共産党政府が畏れているのは国内の不満が爆発することで、共産党が権力を失うことである。
 ところが、仮に共産党が権力を失ったからと言って中国という国は消える訳ではない。もちろん、これまで抑圧していた地域が独立を勝ち取ろう動くであろうが、第三者的な目から見れば当然のことだ。

 すなわち、文章を読んでもわかるとおり世界中のみならず中国人民の誰もがこれを読めば、中国共産党政府が弱体化し、何かを強く畏れていることは明白だと感じるであろう。相変わらず現執行部は悪手を打ち続けるものだと思う。識別防空圏の場合もそうだが、行動がもたらすであろう結果を適切に分析できていない。
 韓国がそうであるように、都合の良い情報を鵜呑みにして失態を繰り返している。仮に中国内部で暴動やテロが激化したとすれば、それによる悲惨な状況を考えると動乱を推奨するつもりは必ずしもないが、原因は現政権の執行部の稚拙さによるものだと思う。情報のコントロールが適切にできていない。

 文章を読んでまず最初に感じたのは、戦争末期に政府が国民の意思の統一を図るような構図である。現実に戦争など発生していないし、むしろそれを挑発しているのが中国自身なのだから笑い話にもなりはしない。プロパガンダに長けた中国ではあるが、世界中のインターネットを操作できるはずもない。
 口先の威勢の良さとは明らかに異なる苦悩が表れている文章と言えるだろう。